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『ダブリンの時計職人』

2014年05月01日 | 映画(た行)
『ダブリンの時計職人』(原題:Parked)
監督:ダラ・バーン
出演:コルム・ミーニイ,コリン・モーガン,ミルカ・アフロス,
   スチュアート・グレアム,マイケル・マケルハットン他

2010年のアイルランド/フィンランド作品。
現在シネ・リーブル梅田にて公開中。

監督はアイルランドのTV局で長年ドキュメンタリー制作に携わってきた人で、
これが映画監督デビュー作なのだそうです。
主演はやはりアイルランド、ダブリン出身のコルム・ミーニイ。
広いおでことチリチリ頭が印象的で、本国では主役を張ることが多く、
ハリウッド映画ではブルース・ウィリスやスティーヴン・セガールと共演して見事な悪役。
記憶に新しいところでは『ワン チャンス』の父親役でしょうか。

ロンドンで失業し、故郷アイルランドのダブリンへ戻ってきたフレッド。
役所へかようも失業手当の申請はことごとく却下され、
風吹きすさぶ海辺の寂れた駐車場に車を駐め、そこで寝泊まりすることを余儀なくされる。

ある日、駐車場へもう1台の車がやってくる。
自分のことをホームレスだとまだ認めたくないフレッドは、
近づいてきた車の持ち主である青年カハルを遠ざけようとするが、
カハルは自分もホームレスだからと、人なつこく話しかけてくる。

それまで公衆トイレで身繕いをしていたフレッドを、カハルは市営プールに連れていく。
格安で使える広々としたプールで気持ちよく泳ぐフレッド。
そして、ヘルシンキ出身のピアノ教師で未亡人のジュールスに恋をする。
ジュールスとの距離を徐々に縮めるが、住所不定だとは打ち明けられないまま。

一方、カハルとは良い“隣人”関係を築くが、カハルは始終ドラッグを吸引している。
ほとんどがマリファナ、吸うだけで注射器は使っていないと言うカハルの言葉に、
大酒をくらうよりは健康的かもしれないと思うものの、
息子と呼んでいいほど年の離れたカハルのことが心配でならない。
ドラッグを買うために怪しい筋から借金しているらしく、
時折取り立てにやってくる連中のことも気になって……。

原題の駐車を示す“Parked”も邦題も、それぞれ良いと思いました。
元時計職人で、修理道具を車に積み込んでいるフレッドは、
カハルやジュールスが大事にしている壊れた時計をなんとか直したい。
時計が動き出せば、それぞれの人生がまた進むのではないかと思っているかのよう。

「邪険にされたぐらいで人生は終わりじゃないよ」とフレッドはカハルに言いますが、
親から見放されたカハルはドラッグなしで生きることができません。
そんなカハルからフレッドがもらう、前へ踏み出す勇気。

ハッピーエンドとは言えないけれど、絶望的ではないラスト。
いつまでも「駐車中」ではないのだから。

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