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『寝ずの番』

2006年05月23日 | 映画(な行)
『寝ずの番』
監督:マキノ雅彦
出演:中井貴一,木村佳乃,富司純子,岸部一徳,木下ほうか他

続いて2本目。

芸人が下ネタで笑いをとるのは禁じ手だと言われています。
下ネタというのは話術がなくとも笑いをとれるものだから。
かくいう私も下ネタ大好きですが、
禁じ手だという思いが頭にあるので、
下ネタ頼みの若手芸人さんに遭遇すると先が案じられます。

そして、下ネタに走りつつ品を保つのは難しい。
本作はそのギリギリのところに留まっているのかも。
中島らもの同名小説を津川雅彦が別名で撮った初監督作品。

上方落語界の重鎮、笑満亭橋鶴はいまわのきわ。
弟子たちは師匠の最期に立ち会おうと病室に集う。
思い残すことはないかと一番弟子の橋次が尋ねると、
橋鶴は声を振り絞り、「そ、そそが見たい」。

京都ではそそ、大阪では3文字に当たるその言葉。
死にかけでもエロい妄想を抱く師匠に弟子たちは感心、いや、唖然。
師匠の妻はべっぴんだが、如何せんもうババァ。
若い女性でなければと、橋太の妻、茂子に頼むことにする。

あんまりな頼みごとに怒り狂う茂子だが、
師匠の最後の頼みとあっては断れない。
意を決して病室に乗り込むと、師匠に向かってスカートをまくりあげる。
すると今度は師匠が唖然。
「アホ、そとが見たい、言うたんや」。

3分後、師匠は絶命。始まるお通夜。
思い出話に花を咲かせ、弟子たちは師匠の亡骸の寝ずの番。

橋鶴師匠のモデルはおそらく笑福亭松鶴。
松鶴に倣ってか、橋鶴の十八番は『らくだ』。
噺の中に出てくる「死人のカンカン踊り」を実際にやってみようと、
弟子たちが師匠の死体と肩を組んで踊ります。
死体を演じた長門裕之の力の脱き加減はお見事。

昔、生で聴いた米朝の『地獄八景亡者戯』が懐かしく、
お寺で開催される橋次の独演会、『愛宕山』の場面は、
よく通った寄席を思い出させてくれました。
私が通った寄席は、落語好きの住職が若手噺家に場を提供すべく、
寺の2階を開放していたもの。
1階でお通夜、2階で寄席なんて日もあって、
「ホンマにええのか?それで?」と不謹慎にも笑いました。

そのお寺の寄席で当時よく拝聴した桂吉朝さんが
本作の落語指導と出囃子を担当されていた偶然。
昨年、映画の公開を待たずして、
50歳の若さでお亡くなりになりました。
あの世で笑ってはったらええなと思います。合掌。

ボビー・マクファーリンがなぜか似合う。

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