夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『マンチェスター・バイ・ザ・シー』

2017年05月27日 | 映画(ま行)
『マンチェスター・バイ・ザ・シー』(原題:Manchester by the Sea)
監督:ケネス・ロナーガン
出演:ケイシー・アフレック,ミシェル・ウィリアムズ,カイル・チャンドラー,
   グレッチェン・モル,ルーカス・ヘッジズ,ベン・オブライエン他

なんばパークスシネマで3本ハシゴの3本目。
『スプリット』『夜に生きる』と来て、〆に本作を。
この順で観て良かったと満足感いっぱいのハシゴでした。

前述の『夜に生きる』の監督・脚本・主演はベン・アフレック
その弟のケイシー・アフレックが主演。
兄ちゃんよりもカワイイ顔でモテそうなのに、活躍ぶりははるか下。
というイメージがありましたが、これはイイ。
第89回アカデミー賞では主演男優賞を受賞。大納得です。

アメリカ、ボストンの郊外。
アパートの便利屋リーは、その腕は認められているものの、
愛想がなさすぎて居住者としばしばトラブルを起こす。

そんなある日、兄ジョーが危篤との報せを受け、
故郷の港町マンチェスター・バイ・ザ・シーへとリーは車を走らせる。
すでにジョーは息を引き取ったあと。
ジョーの友人ジョージらの助けを借り、葬儀の段取りをすることに。

問題はジョーの一人息子で16歳のパトリック。
ジョーの遺言を聞きに弁護士を訪ねると、
パトリックの後見人としてジョーはリーを指名していると言う。
ジョーから事前に相談はなかったから、突然の話に戸惑うリー。
とりあえず葬儀を終えるまで町にとどまり、今後のことを考えるのだが……。

もともとは、ケネス・ロナーガン監督とマット・デイモンが共同で企画に乗りだし、
マット・デイモンが主演するという案があったようです。
しかし結局マットはプロデュースに回り、主演はケイシーに。
マットのほうが客を呼べる俳優かもしれませんが、いかにもすぎる。
これはケイシー主演にしたことが大正解。

冒頭は幼き日のパトリックと父親のジョー、
それにパトリックの叔父に当たるリーが船ではしゃぐ姿。
そのリーに暗い表情などかけらもなく、
いったいいつからリーはこんな無愛想な奴になったのか、
どんな事情があるのだろうと観客は考えます。

これをもしマットが演じていたならば、観客はもっと感情移入しやすいはず。
ケイシーは徹底して無表情で、その時点では感情移入できません。
それゆえ、過去のできごとがあきらかになり、
ケイシーの心の内が察せられるようになるとジワ~ン。

人生には、乗り越えようと思っても決して乗り越えられないこともある。
時がいくらかは癒やしてくれたとしても、忘れるなんて絶対にできないこと。
これもまた、「気持ちの整理をつける」までの過程。

「救われた」という台詞に涙が溢れました。
『追憶』の面々に言いたい。あからさまに嗚咽なんてしなくたって、
役者は哀しみも切なさも表現できるのですよと。

今月はまだ残っているけれど、たぶん今月観た映画の中でピカイチ。
すごく良かった&好きでした。

ところで余談。このタイトルの“マンチェスター・バイ・ザ・シー”って、
これごとごと町の名前だということ、ご存じでした?
私は「海のそばのマンチェスター」っちゅうタイトルなのだと思っていました。
無知な自分が恥ずかしい。すみません。(--;

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