言語空間+備忘録

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交易条件の悪化がもたらす所得の低下

2011-09-08 | 日記
水野和夫・萱野稔人 『超マクロ展望 世界経済の真実』 ( p.22 )

水野 こうした交易条件の変化を押さえると、一見不可思議に思われる経済現象に説明がつくのです。

萱野 どんなことでしょう?

水野 リーマン・ショックの前、日本では〇二年から〇七年の六年間にわたっていざなぎ景気を超える長期の景気拡大が実現しましたが、にもかかわらず国民の所得は増えませんでした。それは、交易条件が悪化したことで原材料費が高くついてしまうようになったため、売り上げが伸びても人件費にまわせなくなったからです。

(中略)

萱野 九〇年代半ば以降というと、日本では派遣社員や契約社員などの非正規労働者が急増した時期ですね。一般的には、この時期における企業の人件費カットは、日本が「失われた一〇年」といわれる特殊な不況に落ち込んだせいだと説明されます。しかしそうではなく、もっと構造的な要因があるということですね。つまり、資源価格の高騰によって景気と所得が分離されてしまったと。

水野 そうですね。まず、所得が上がらない理由が不況にあるというのは、事実としておかしい。たしかに九〇年代に日本経済は不況に見舞われましたが、それだけでは景気回復期においても賃金が上がらなかったことの説明がつきません。
 図2は一人あたりの賃金水準をあらわしたものですが、白い部分は景気回復期、網かけの部分は不況期です。
 不況で賃金が下がるというのは、ある程度やむをえない。やむをえないといっても、実際には日本では、九三年までは不況下でも賃金が下落することはありませんでした。賃金が初めて下落したのは九七年から九九年までの不況だったのです。それ以前は、第一次オイル・ショックの終息後、九三年まで不況期は四回あったのですが、賃金は平均して年率四・一%上がっています。景気がいい時期だと、年五・二%上がっていたのです。要するに、賃金は不況も好況も関係なくほぼ同じ率で上昇していたのです。
 しかし、九七年から賃金は、景気が良くても悪くても趨勢(すうせい)的に下がるようになりました。そして、九九~〇一年にはインターネットブームで景気が拡大するのですが、賃金はさほど上がりませんでした。ネットバブル後の不況になると、九七年の不況と同じように賃金は下落します。ついには、〇二~〇七年に戦後最長の景気拡大が実現しても、賃金水準は上がるどころか下落したのです。景気回復期で賃金が下落したのは戦後で初めてのことでした。
 これは、景気が回復することと所得が回復することが別々の問題になっているということを意味しています。これまでだったら生産と所得と支出はちゃんと連結されていました。しかしいまや、それらが切り離されてしまった。

萱野 この図を見ると、その傾向は〇二年以降の構造改革期にとりわけ顕著ですね。

水野 ええ。さらにこれは日本だけの現象ではありません。図3は、日本とアメリカで、売上高が一%増えたときに、人件費がどのくらい変化するのかを示したものです。一・〇の水準に近づくほど、生産が一%増えれば人件費も同じように増えるということです。

萱野 一・〇の水準に近くなるほど、生産と所得が連動しているということですね。

水野 そうです。これを見ると、アメリカでは九〇年代半ば以降、数値が一倍から下がりつづけています。日本では九九年あたりから急速に一倍以下になり、二〇〇四年にマイナスに突入する。これは売上高が増えると、逆に人件費が下がっていくということをあらわしています。これは、利益を増やすために、人件費を削ったことを意味しています。日本は極端ですが、アメリカでも同じように生産と所得が切り離されているのです。

萱野 所得の低下については、小泉政権による構造改革のせいだとか、日銀がデフレに対して何もしないからだとか、さまざまな議論がありますよね。しかし実際には、先進国の交易条件が悪化したことが最大の原因だということですね。


 国民の所得(労働者の賃金)が下がった最大の原因は、交易条件の悪化である。小泉政権による構造改革や、日銀がデフレに対して何もしないことではない、と書かれています。



 私は原則としてグラフは引用しないことにしているので、引用文中の図は省略します。必要であれば、直接、本を買ってください。



 さて、著者らの主張についてですが、

 私は「資源価格の上昇がもたらす交易条件の悪化」で述べたように、すべてを「資源価格の上昇」のみで説明することには無理があるのではないかと思います。

 したがって、国民の所得(労働者の賃金)が下がった最大の原因は交易条件の悪化である、とまでいえるのか、疑問です。

 もっとも、疑問であるとはいえ、それが原因だとは考えられないということではありません。「最大の原因」であるとは言い切れないということです。交易条件の悪化が所得低下の重要な原因であることは間違いないと思います。



 なお、「他の原因」として挙げられている「小泉政権による構造改革や、日銀がデフレに対して何もしないこと」についてですが、

 構造改革はどのみち行わなければならない(ならなかった)と思いますし、日銀によるデフレ対策には「効果が疑わしい」という問題があります。もちろんこれらについては、構造改革を行うにしても時期(経済状況)を考えろ、であるとか、効果が疑わしくとも(完全に効果がないとは言い切れないので)日銀はデフレ対策を本格的に行うべきである、といった考えかたも成り立ちます。これらは(何が起きているのかといった問題ではなく)判断の問題だと思います。つまり、構造改革を行う、デフレに行して何もしない、という判断も「あり」だということです。
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