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中国における歴史教育

2011-01-11 | 日記
櫻井よしこ 『異形の大国 中国』 ( p.46 )

 中国大連市で、日本人学校で使用する小中学校用の教材10種128点が税関当局に差し押さえられ、日本人学校側が始末書と罰金1000元(約1万3000円)を支払っていたことが、05年6月27日までに判明した。情報を総合すると、地図を含む教材の一部は罰金を支払った後も、日本側に返却されておらず、28日『産経新聞』朝刊は、これを「没収」と報じ、NHKは28日正午のニュースで「内容の更なる検討のため」と報じた。
 中国側が検閲でとがめたのは主に、中国大陸と台湾が異なる色で塗り分けられていたこと、尖閣諸島を日本領としていたことだそうだ。中国には大連、北京、上海、広州、天津、蘇州、青島、香港(中学部)の8地域に日本人学校があり、現地の法律遵守を条件に設立が認められているため、中国当局による検閲は拒否出来ない事情があることも報じられた。
 しかし、これは奇妙なことではないか。日本の領土である尖閣諸島を日本の領土であると日本の子供たちに教えるのは当然だ。台湾についても、中国政府は台湾は中国の一部だというが、現状では台湾は立派な独立国だ。将来、台湾がこのまま中華民国として存続するのか、国名を正式に台湾に変えて改めて独立を謳うのか、中国と統合するのか、予断を許さないのは確かである。台湾人の想いは複雑で意見も分かれているが、どの道を選ぶかは、もっぱら台湾人自らが考え、決めるべきことだ。
 日本の子供たちには、流動的な要素を含んだ台湾の現状をそのまま教えることが重要だ。そうしてはじめて、子供たちは現実の国際社会を理解することが出来る。日本人学校が中国に位置しているからといって、中国政府の意向に沿って、世の中の事情を曲げて教えてはならない。そんなことをすれば、中国の法律遵守の名目で、中国政府の都合に従って事実の歪曲と捏造に加担し、子供たちを中国政府の望む先入観や思い込みに染めることになる。

(中略)

 改訂版はあるものの、基本的に一種類しかない中国の教科書にはどんなことが書かれているのか。歴史教科書について日本政策研究センターが『ここがおかしい中国・韓国歴史教科書』に、読み易く整理している。それを見ると、元々独立国だったチベットが、中華人民共和国が樹立された直後の1950年10月に軍事侵略され、凄まじい弾圧の末に中国に併合されて今日に至っていることを、中国の国定教科書では「平和解放」と教えている。
「平和解放」と言われてチベット人が納得するべくもない。彼らは中国軍に激しく抵抗し、弾圧に屈せず戦い続けているからだ。1950年から今日までに、総人口600万人のチベットで120万人が虐殺されたと、チベットの人々は訴える。繰り返すが、中国の教科書は、国民の5分の1を虐殺したといわれる軍事侵略を「平和解放」と教えるのだ。
 朝鮮戦争の記述も噴飯物だ。この件についてはかつてブッシュ大統領も抗議したが、中国の教科書は、「1950年、朝鮮戦争が勃発した。アメリカ帝国主義は、横暴にもいわゆる『国連軍』を指揮して、朝鮮を侵略した。彼らは『38度線』を越えて、まっすぐに中国辺境まで攻め上り、わが国の安全をひどく脅かした」と教えている。

★正しい歴史を知る意味

 全てが正反対に捏造されているのだ。朝鮮戦争は北朝鮮が突然軍事侵攻したことにより勃発した。それが真実である。米国は当時北朝鮮が軍事侵攻するとは考えず、韓国には軍事顧問団500人程を残していただけだ。韓国軍もまた、北朝鮮の侵攻を全く予想しておらず、備えもなかった。韓国側は軍事的には極めて手薄の状態だったのだ。そのため、北朝鮮軍は破竹の勢いで38度線を破り、韓国の南部深くにまで迫った。
 肝心の中国軍は、北朝鮮を助けて韓国を侵略したのである。そのときに派遣されたのは、延べ人数290万人にのぼる中国人民解放軍であり、その主力は第四野戦軍だった。第四野戦軍は林彪(りんぴょう)元帥が司令官を務めていた中国最強の軍隊である。中国の第四野戦軍はたちまちの内に、韓国側領土の90%を占領した(『対北朝鮮・中国機密ファイル』欧陽善(おうようぜん)著、富坂聰編、文藝春秋)。そのことには一言も触れず、「米帝国主義」非難のために史実を捏造しているのだ。
 日本に関する記述にも捏造が溢れている。昭和3(1928)年の済南事件を中国の教科書はこう書いている。「日本帝国主義は(蔣介石の)国民政府の北伐を阻止するため、公然と出兵して済南を占領し、中国の兵士や民間人6000人余りを殺し、『済南虐殺事件』をひき起こした」
 これもまた事実は逆だ。日本軍は蔣介石の北伐軍から邦人を保護するために出兵したが、虐殺されたのは日本人の方だった。特に、中国軍は日本人女性に蛮行、凌辱を加えた。
 そのうえ、衣服をはぎとられ中国軍に虐殺された日本人女性の遺体を日本側が検死している写真が、中国の教科書には、七三一部隊が中国人女性を生きたまま細菌で生体実験し、殺した写真として掲載され、子供たちに教えられているのだ。
 中国の国定教科書では、中国を正当化する余り、日本、米国、台湾、チベットなど、中国政府と立場を異にする多くの国々や民族の足跡をねじ曲げている。今回の検閲と没収は、ねじ曲げた歴史を全面的に受け容れることを強要するもので、日本としては受け容れるわけにはいかない。


 中国の歴史教科書は、事実をねじ曲げて捏造し、中国に有利になるように書かれている。中国人の子供たちは、捏造された嘘を学校で習っているのである。中国にある日本人学校においても、教材が「中国大陸と台湾が異なる色で塗り分けられていたこと、尖閣諸島を日本領としていたこと」を検閲で問題視され、始末書を提出して罰金を支払っていたことが判明した、と書かれています。



 中国政府が事実を捏造している、という話はしばしば聞きますが、ここまで捏造されているとすると、これは凄いですね。とくに、
衣服をはぎとられ中国軍に虐殺された日本人女性の遺体を日本側が検死している写真が、中国の教科書には、七三一部隊が中国人女性を生きたまま細菌で生体実験し、殺した写真として掲載され、子供たちに教えられている
という部分は強烈です。



 しかし、著者の次の主張には、やや疑問があります。
 日本の領土である尖閣諸島を日本の領土であると日本の子供たちに教えるのは当然だ。台湾についても、中国政府は台湾は中国の一部だというが、現状では台湾は立派な独立国だ。将来、台湾がこのまま中華民国として存続するのか、国名を正式に台湾に変えて改めて独立を謳うのか、中国と統合するのか、予断を許さないのは確かである。台湾人の想いは複雑で意見も分かれているが、どの道を選ぶかは、もっぱら台湾人自らが考え、決めるべきことだ。
 日本の子供たちには、流動的な要素を含んだ台湾の現状をそのまま教えることが重要だ。そうしてはじめて、子供たちは現実の国際社会を理解することが出来る。日本人学校が中国に位置しているからといって、中国政府の意向に沿って、世の中の事情を曲げて教えてはならない。そんなことをすれば、中国の法律遵守の名目で、中国政府の都合に従って事実の歪曲と捏造に加担し、子供たちを中国政府の望む先入観や思い込みに染めることになる。
 日本の立場に立って意見を述べれば、たしかに著者の主張する通りである、と考えることになると思いますが、中国の立場に立って考えれば、
 中国の領土である釣魚台列島(=尖閣諸島)を中国の領土であると中国(および日本)の子供たちに教えるのは当然だ。台湾についても、現状は完全に統一されていないが、もともと中国の一部である以上、中国大陸と台湾を異なる色で塗りわけられた地図を教材に用いるなどの方法によって、子供たちに誤解を生じさせてはならない
ということにもなるでしょう。

 もちろん、
  • 日本・台湾の主張と、中国の主張とを、それぞれ併記したうえで、両方の主張を教えればよい
とも考えられるのですが、
  • 低学年用の教材である以上は、あまり複雑なことを教えるのは適切ではなく、「公式見解」のみを教えれば十分であり、また、それこそが適切である
という考えかたも成り立つでしょう。

 したがって、この部分については、著者の主張するように、「中国政府の都合に従って事実の歪曲と捏造」をすることにほかならず、「子供たちを中国政府の望む先入観や思い込みに染めることになる」とまで言い切ってよいのか、やや疑問があります。

 「低学年」用の教材であれば、中国と日本・台湾とで、「異なった」地図を用いて「異なった」歴史・現状が教えられることがあっても、やむを得ないのではないかと思います (もちろん私は、高校・大学と学年が上がるにつれて、中国と日本・台湾とで意見が異なっていることを中国の子供たちに教えることを前提として意見を述べています) 。



 このように、著者の主張には若干、疑問があるものの、冒頭で述べた部分、すなわち
 衣服をはぎとられ中国軍に虐殺された日本人女性の遺体を日本側が検死している写真が、中国の教科書には、七三一部隊が中国人女性を生きたまま細菌で生体実験し、殺した写真として掲載され、子供たちに教えられている
という部分は、「あきらかな捏造」であって、これは論外ではないかと思います。

 これはたんに、「立場が異なる」といったレベルではなく、「嘘をついている」といったレベルだからです。



 しかし、これも中国側にしてみれば、本当に「七三一部隊が中国人女性を生きたまま細菌で生体実験し、殺した写真」である。日本側こそ事実をねじ曲げ、捏造しているのではないか、ということになるのでしょう。

 このあたり、「中国は「異形の大国」か?」に引用した毒餃子事件での中国政府の態度、あるいは「中国にとっては、靖国問題は「手段」にすぎない」に述べた弁護士の態度と、類似の状況が存在している、といえるでしょう。

 この種の状況、すなわち「どちらが正しいのか、第三者にはなかなかわからない」という状況は、さきの尖閣諸島沖漁船衝突事件においてもみられました。日本側は「中国側からぶつかった」と主張し、中国側は「日本側からぶつかった」と主張したわけですが、

 このような場合、「どちらかが嘘をついてとぼけている」ことはわかっても、第三者が「どちらが嘘をついてとぼけているのか」「どちらが本当のことを言っているのか」を判別することは、きわめて困難です。



 それでは、日本はどうすべきなのか。

 以下では、中国側が嘘をついている、という前提で述べますが、



 本来であれば、このような国(相手)とは、「かかわらないのが一番」だと思います。

 しかし、「中国は日本の隣国」であって、「事実上、かかわらないという選択はあり得ない」と思います。

 かかわらざるを得ないのであれば、日本側としては、日本の正当性を主張せざるを得ないのではないかと思います。(低次元の争いで) 手間ばかりかかりますが、(日本が黙ったままでは) 国際社会において、中国側の主張が一方的に「正しい」と認められることになりかねない以上、「やっかいな国を隣国にもった」宿命だと思ってあきらめるしかないでしょう。

 なお、言うまでもありませんが、「あきらめる」=「黙って反論しない」ではなく、「あきらめる」=「手間をかけて反論する」です。



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