暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

潮香る町の名残りの茶事 (2)

2011年10月02日 | 思い出の茶事
後座の床には、白花の藤袴、吾亦紅、小花ホトトギスが入れられ、
亀甲竹の尺八が詫びた風情です。

細く小さな炭でしたが、ご名炭で湯相が整えられています。
襖が静かに開き、ご亭主の濃茶点前が始まりました。
Kさんも私も緊張気味でしたが、ご亭主のY先生はいつものように
お点前をご自分のリズムでなさっています。
仕覆(紺地二重蔓牡丹金襴)が脱がされ、黒い茶入が現れました。

帛紗をさばき、茶入を清めるとき、幽かな音がしました。
それは茶入と帛紗の出会いが偶然生み出したもので、
早く清めると高らかに、ゆっくりになると囁くように聞こえます。
このような清めの音を味わうのは初めてで、素敵な経験でした。
茶入は立杭焼・小仏丹山作、帛紗は橙色系で徳斎作です。

濃茶が煉られ、香り好くたっぷり美味しく頂戴しました。
茶碗は大樋焼飴釉、濃茶は小山園の式部の昔です。
「炭を改めさせていただきます」
と後炭が始まりました。

茶事で初めて五行棚の後炭手前を拝見し、続いて風炉中拝見です。
月形に埋められた藤灰の風情も好ましく、狭い火床にもかかわらず
しっかりと火が熾っていて、ご亭主の精進が偲ばれました。

               

煙草盆、干菓子盆が運ばれ、くつろいで薄茶を二服頂戴しました。
五行棚に荘られていた朱色の平棗は詫びた席を引締め、
華やかな存在感がありました。
手に取ると、手に余るほど大振りで時代を感じさせます。
蒔絵はススキ、表蓋に銀の月が浮かんでいました。
しっかりした作りの茶杓は大亀和尚銘「おくのほそみち」。
「茶の道を奥深く学んでいきましょう」という意だそうです(ステキですね・・)。

最後に気になっていたあの帛紗を拝見させて頂きました。
京都での茶の修行が修了となった時、
亡き師匠から一揃いの帛紗(徳斎作)が贈られたそうで、
全部を見せてくださいました。

想いでの宝物を拝見しながら、先ほどの清めの音を思い出していました。
今思うと、「鳴き砂」に似た音色だったようにも思えます。

また、茶友と共に潮香る町の茶事にご縁がありますように。
我が家の拙い茶事へもお出ましくださると嬉しいです。

                            
     ( 潮香る町の名残りの茶事(1)へ)



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