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「因果」を考える (32)
初等物理の気まぐれ考究,物理教育放談
/
2012-09-11 00:00:00
本稿は以下の続きである。
・
07-12-05「因果」を考える
・
07-12-31「因果」を考える (2)
・
08-01-19「因果」を考える (3)
・
08-03-11「因果」を考える (4)
・
08-04-10「因果」を考える (5)
・
08-04-30「因果」を考える (6)
・
08-05-09「因果」を考える (7)
・
08-05-27「因果」を考える (8)
・
08-06-29「因果」を考える (9)
・
08-08-28「因果」を考える (10)
・
08-09-07「因果」を考える (11)
・
08-09-30「因果」を考える (12)
・
08-10-06「因果」を考える (12-b)
・
08-10-19「因果」を考える (13)
・
08-11-10「因果」を考える (14)
・
08-11-30「因果」を考える (15)
・
08-12-24「因果」を考える (16)
・
09-01-24「因果」を考える (17)
・
09-02-12「因果」を考える (18)
・
09-04-05「因果」を考える (18-b)
・
09-04-20「因果」を考える (19)
・
09-05-12「因果」を考える (19-b)
・
09-06-20「因果」を考える (20)
・
09-07-31「因果」を考える (21)
・
09-09-25「因果」を考える (22-a)
・
09-11-06「因果」を考える (22-b)
・
09-12-29「因果」を考える (23)
・
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・
10-06-07「因果」を考える (25)
・
10-08-10「因果」を考える (26)
・
10-10-04「因果」を考える (27)
・
10-11-10「因果」を考える (28)
・
11-01-17「因果」を考える (29)
・
12-01-03「因果」を考える (30)
・
12-03-03「因果」を考える (31)
-----
因果に関わる事の推移を考える際には、次の(1),(2)の相異なる2種類の自己発
展する変数が介在しているらしい、、というところに話が進んでいた。
(1) 現象の非可逆性によって規定される物理時間
(2) 科学的世界の知見の発展を順序づける進行する変数(名前は未定)
ここで気をつけてほしいのだが、決して、物理時間とそれ以外の例えば'擬時間'
のようなものがあって、その両者が、変化認識の底流として別々に流れる、、と
いうようなことではない。ある一人の人間の思考の流れを考える限りにおいて
は、脳の活動も物理時間の発展の中で起きる自然現象の一つに違いないのだか
ら、知見の発展も、物理時間を適当に写像して得られる変数で記述できると考え
るのが妥当だ。大いなる問題は、人間の自然に対する「知の発展」なるものは、
このような一個の生物内で起きる現象としては説明できないのであり、時間・空
間をまたいで広がっていくことが本質であるために、単に時間発展の上には記述
できないということなのだ。
ならば、その発展がどのようなものであるかと問われるなら、「認識主体の拡大」であるというのが目下の私なりの答えとなる。
禅問答のようにしてぼやかすことは本意でないので、できるだけ具体的なイメー
ジに戻していこう。
---
そこで砂利を投入するモデルを思い出して、再度丁寧に、目下考察中の(通常とは逆の)因果関係の表現をつくってみよう。
まず、純粋に論理的表現とするならば、以下のように記述になるだろう。
・「水槽の水位がΔhだけ上昇する」という事象の発生が確かなことであれば、
「水槽に総体積 S×Δh の砂利が投入される」という事象の発生も確かなこととなる。
これを、因果関係と見るということは、次のような認識を行うことだろう。
・水槽の水位がΔhだけ上昇する現象が(客観的な観測結果として)確認されたことが原因となって、水槽に総体積 S×Δh の砂利が投入された事も(客観的事実として)確認されるという結果を招く。
つまり、不明であった(物理時間としては過去の)出来事が、それと確実に結びついている別の場所の出来事の判明を通して明らかになるのである。ただし、「明らかになる」とは、「ある人にとって知識が追加される」こととは違うというのが(私の主張の)重要なポイントだ。ある人の中で知識が追加されるプロセスを因果的にとっても悪くはないが、それは個人の思いの変遷を馬鹿馬鹿しく大仰に表現するだけのことで、考えに入れる価値はほとんどない。しかし人間の叡智として知見を増やしていくプロセスは、科学研究的な行いの本質をなすものである。測定・実験によって見えない所を知ることの例は、センサーや顕微鏡による観察から宇宙探査まで、枚挙に暇ない。そしてその際に得られる知見が過去に関することというのもよくあることである。地層や化石の研究とか宇宙論にまつわる観測実験の考察は大抵そうであるし、もっと実社会的な例もいくらでも見つけることができるだろう。このように、「知の発展」は、時間を遡る方向に進むことも普通であり(そうでない場合もあるが)、かつ、その発展プロセスを因果的にとらえることは決して不自然ではないのである。
ところが一方、先に記載した因果認識を、次のような文章表現に変更すると、全くありえないことになってしまう。
---
・水槽の水位がΔhだけ上昇してそれを検出する装置に何らかの変化を与えたこと
が原因となって、水槽に総体積 S×Δh の砂利を投入するように外部機械が作動する。
これが「全くありえないこと」と判断される根拠は、もちろん、時間的な順序関
係の矛盾なのであるが、そのことを今一度整理してみよう。
==
ある現象が他の現象を引き起こすというタイプの波及が起こる場合、前者に結び
つく時刻という変数の値よりも、後者に結びつく時刻変数の値の方が必ず大きく
なっている!、、この当たり前にも思える命題は、よく考えれば大いに不思議な
ことである。むしろ、この命題に立脚して正直に論理を尽くす限り、そのような
必要は無いと考えるのが正統である。過去-現在-未来とはいったい何なのだろう、、という素朴かつ根本的な疑問に立ち戻らざるを得ない。
<inging>
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