prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

ビューティ・パーラー(7)

2004年10月05日 | ビューティ・パーラー(シナリオ)
○ 裏口・物陰
見張っている犬山。
細目にドアが開く。
はっと物陰に身を隠す犬山、ボタン一つで携帯で合図を送る。

○ 表
鮫島「(携帯に出る)出てきたか?」
   ×     ×
以下、カットバック。
犬山「ああ…いや、待て」
卯川に変装した秋月がドアの隙間に姿を見せる。
犬山「あれ、か?」
と、カメラをすでに向けている。
鮫島「予備のカメラは、あるな」
犬山「素人扱いするな。
そっちはどうだ」
鮫島「動きはない…」
間。
鮫島「一人占めするなよ」
犬山「そっちこそ」
鮫島「卯川、か?」
犬山「そうだ…いや、どうだろう」
間。
どっちが特ダネ、なのか。
卯川、しなを作って見せる。
犬山「(乗せられて興奮気味に、誇らしげに)いただき、みたいだな」
鮫島「…(焦る)」

○ 裏
女(?)…秋月が中に向かって合図する。
合図に応じて現われたのは、笈出。
犬山、カメラのフレームにツーショットを収めて、シャッターを切る。
ほとんど音はしない。
   ×     ×
鮫島「(耳を澄ます)来たか?」
犬山「来たが…誰だかはっきりしない」

○ 表・物陰
鮫島、浮き足立って、裏に回ろうと腰を上げかける。
しかし、まだ未練がましく見張るのはやめない。

○ 店の中
和田、カーテン越しに表の鮫島の様子を窺っている。
和田「早く行けっ」
傍らでは、卯川がスタンバイしている。

○ 更衣室・裏口
秋月「(いらだち、一人ごちる)まだどかない?」
ほとんど卯川と見分けつかないくらい変装しているが、声で秋月とわかる。
それを聞いた小牧、店に顔を出す。

○ 店
小牧「(勝手に伝言を中継する)まだどかない?」
和田「まだだ」

○ 裏口
秋月のいらだちが募る。
秋月「えーい。
こうなったら」
いきなり、笈出に抱きついてキスする。
秋月に抱きつかれて、目を白黒させる笈出。
   ×     ×
犬山「(それを見て、思わず)おっ」
と、立て続けにシャッターを切る。
遠目には、ラブシーンに見える。

○ 表・物陰
鮫島「(携帯に耳を押しつける)一人占めするなっ」
と、やっと腰を浮かせ、裏に回りそうになる。

○ 店・中
和田「(それを確認して)行った!」
間髪を入れずに、外に出て行く卯川。

○ 裏口
我慢する笈出。
やっと秋月を引き離し、平静を装って、 笈出「成功か?」
と、そっと小牧に聞く。

○ 店
小牧「(また顔を出して中継)成功?」
和田「成功…」
と、言いかけた時、卯川が戻ってくる。
和田「どうしたんだっ」
卯川、外を示す。

○ 表の道路
別のマスコミの車が乗り付けられる。

○ 更衣室
和田「(入ってきて)駄目だ、別口が来た」
笈出「ちっ」
小牧「せっかく我慢したのにね」
笈出、あきらめて引っ込む。
しかし、秋月はまだ引っ込もうとしない。
笈出「どうした」
秋月「まだあたしを卯川つばさと思っているかもしれない。
そのつもりで、今の写真が雑誌に載ったらどうする?」
笈出「間違えりゃあ、しないよ」
   ×     ×
犬山「(意気揚々と)やった!」
と、カメラを目から外す。
しかし、まだ戸口の秋月からは目を離さないでいる。
   ×     ×
すると、秋月はおもむろに服を脱ぎ出す。
人に見られているのを十分承知の上で、わざとらしくスター然と振る舞う。
びっくりする犬山。
秋月、わざとらしく、暑そうに半裸になってばたばた扇ぐ。
もちろん、見えているのは男の身体だ。
犬山、びっくりしてカメラを覗いて確認する。
秋月の、これ以上なく人の目を意識した動き…それが、突然ふっと白けたように醒めて気が抜けかける。
が、また気を取り直してストリップ(?)を続ける。
出番を終えて、わざとらしく悠々と引っ込んでドアを閉める秋月。
犬山「くそっ、ふざけやがって!」

○ 表・物陰
鮫島「(携帯に向かって楽しそうに大笑いする)…そうか、そりゃいいもの撮ったな! 御苦労さま」
と、言いながら見張り続けている。
他に、同業者の馬場、鮎川が後ろに詰めている。

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