万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

ソマリア沖の海賊対策は海洋治安維持活動

2008年12月26日 16時02分24秒 | 国際政治
海賊対策で自衛隊の武器使用限定容認=政府、海自派遣の一般法提出-外国船も対象(時事通信) - goo ニュース
 第二次世界大戦後、多くの人々は、自国民の保護を理由として、海外に自国の軍隊を派遣することは、戦争の一歩手前の行為と考えてきました。実際に、今年8月に起きたグルジア紛争でも、ロシアが、自国民の保護を理由として軍隊を進駐させたことは、国際世論の激しい非難を浴びたものです。

 それでは、ソマリア沖への軍隊の派遣も、同様に国際社会の秩序を乱す行為なのでしょうか。どうやら、ソマリア沖のケースは、前者とは違っているようなのです。その理由は、・・・

1)ソマリア沖への軍隊の派遣は、”航路”を守ることが目的であること。”航路”とは、すべての国々が便益を享受できる国際社会の共通インフラであり、共通インフラの安全確保には、当然に、国際協力が必要となります。

2)軍隊が派遣されても、特定の国の領域を侵犯するわけではないこと。第一義的な治安責任は、もちろん、沿岸国にありますが、外国の軍隊が派遣されても、治安維持に目的が限定されている限り、それが、特定の国の領土を占領したり、主権を侵害する行為とはなりません。

3)戦争に発展する可能性が低いこと。ソマリア沖に出没する海賊は、民間の犯罪組織と見なされており、海賊退治は、海賊の国籍国の政府が、正当に戦争に訴える理由とはなりません。

 このように考えますと、日本国政府が、ソマリア沖に海上自衛隊を派遣することは、海洋の治安維持活動のために負うべき、当然の責務と言えるかもしれません。自衛隊の海外派遣が検討される度に、憲法論争が繰り返されてきましたが、政府は、ソマリア沖の現状を直視した上で、装備を含め、現実的な対応を行うべきと思うのです。

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コメント (10)
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