万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

南北併存と統一コリアではどちらの反日リスクが高いのか?

2018年02月24日 16時58分16秒 | 日本政治
北朝鮮に対するアメリカの軍事制裁の可能性について、否定的な見解の一つに、北朝鮮の体制が崩壊して南北両国が統一国家となった場合、反日リスクが高まるとする説があります。この論者は、日本国の安全保障に鑑みれば、現状維持をよしとする立場にありますが、果たして、反日リスクの上昇は、日本国が北朝鮮の現体制維持を支持する根拠となるのでしょうか。

 この説が説得力を有するためには、朝鮮半島が南北に分断している現状の方が統一コリアよりも反日リスクが低いことを示す必要があるのですが、現状を見ますと、必ずしもそうとばかりは言えないように思えます。確かに、韓国は、日本国の同盟国であるアメリカと米韓同盟を結んでおり、冷戦期にあっても西側陣営の一員でした。しかしながら、今日に至るまでの対日政策を概観しますと、初代大統領を李承晩とする1948年の建国以来、一貫して反日政策を国是として遂行してきました。この基本方針は大統領が交代しようとも変わらず、竹島の不法占領、日韓基本関係条約締結時の紛糾、慰安婦問題、徴用工問題等々、日韓間の紛争や摩擦は年を追うごとに増加する傾向にさえあるのです。現文在寅政権に至っては、2016年末に成立した日韓慰安婦合意に違反する行動を繰り返しており、日本国には、韓国の過激な反日政策に悩まされ、苦しめられてきた歴史があるのです。

 こうした韓国の歴代政権の反日政策は、共にアメリカの同盟網にありながら、味方であるはずの日本国を後ろから叩き続けるようなものです。しかしながら、安全保障上の脅威としてのロシア(ソ連邦)、中国、そして北朝鮮の存在は、日本国政府が無碍に韓国に対して厳しい政策を採ることができない理由ともなりました。“日米韓の結束”は、枕詞のように対韓政策の頭に付けられてきましたし、実際に、日本国政府は、常に韓国を腫物に触るように扱い、同国に配慮した譲歩的な政策を選択してきたのです。言い換えますと、南北分断の現状とは、日本国が、北朝鮮は言うに及ばず、韓国からも背信的な攻撃を受けるという忌々しき状況に置かれることを意味したのです。

 南北分断状況における反日リスクは決して低いものではなく、特に味方陣営の一員からの執拗な敵視や巧妙な侵害行為は、ストレートな対処が困難です。こうした点に鑑みれば、統一コリアがどのような形態で出現するにせよ、反日リスクが急激に上昇するとは思えません。統一コリアの反日政策を理由とした金一族独裁体制温存論はやはり説得力に乏しく、自由主義国家である日本国は、今日の危機の源にある非道な独裁体制を問題視すべきであり、北朝鮮の体制崩壊こそ後押しすべきではないかと思うのです。

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