万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

米ラスベガス銃乱射事件と北朝鮮は関連するのか?

2017年10月03日 14時26分36秒 | アメリカ
米乱射は単独犯と断定…銃器類42丁と弾薬押収
 米ネバダ州のラスベガスで今月1日に起きた銃乱射事件は、犠牲者が59人を数える大惨事となりました。スティーブン・パドック容疑者が自殺したため、事件の背景はつまびらかではありませんが、報道によりますと、アジア系の女性と同居していたそうです。

 “アジア系の女性”との情報に、おそらく、多くの人々の脳裏に真っ先に浮かんだのは、同事件と北朝鮮との関係ではなかったと思います。実際にネット上では、この情報に反応し、既にこうした推測が飛び交っています。その一方で、同女性が事件当時東京に滞在しているために直接的な関係はないとの見方を示す米メディアがある一方で、捜査当局も、帰国を待って事情を聴取する予定なそうです。これまでのところ、北朝鮮の犯行を示す情報はないのですが、その可能性は、以下の諸点からゼロではないように思えます。

 第1の点は、北朝鮮の過去のテロ活動にあります。北朝鮮は、現在、解除されているとはいえ、米政府からテロ支援国家の指定を受けた“犯歴”を有する国です。ラングーン事件や大韓航空機爆破事件のみならず、金正恩のトップ就任後も、マレーシアにて兄の金正男を暗殺しています。テロを敵国に対する有効な攻撃手段と見なしており、たとえ、今般の銃乱射が北朝鮮とは無関係であったとしても、北朝鮮には、“敵国”であるアメリカにおいてテロを起こす動機が十分すぎるほどあるのです。

 第2の点は、何と言いましても、“アジア系の女性”の存在です。アメリカの捜査当局もメディアも、何故か、“アジア系の女性”と表現し、正確な国籍を公表していません。否、国籍に関する情報がありながら、敢えて隠しているのです。意図的に国籍が隠蔽されるケースとは、大抵、政治問題化する可能性が認められる場合です。何らかの政治的配慮が強く働いたとすれば、IS関連が疑われるイスラム教徒が比較的に多いインドネシアやフィリピンといった東南アジア諸国よりも、一触即発状態にある北朝鮮、あるいは、常にセンシティヴな関係にある中国の可能性の方が高いように思えます。

 加えて、東京在住という情報も、北朝鮮犯行説の信憑性を高めます。日本国籍を取得した女性であるかもしれませんが、日本国内には、在日中国、韓国、朝鮮の人々が200万人以上も居住しており(特別永住資格者も多数…)、帰化した人や二重国籍者を合せますと、相当数の朝鮮半島系、並びに、中国系の住民がおります。仮に、北朝鮮が、入管当局に疑われることなく工作員をアメリカに送り込もうとすれば、チェックが甘い日本経由を試みることでしょう。また、“アジア系女性”との表現は、国籍国と出身国とに違いがあるからかもしれません。

 第3の点は、北朝鮮は、海外においてテロや事件を起こすに際して、しばしば女性を利用することです。大韓航空機爆破事件でも、実行の一人犯は“蜂谷真由美”なる日本名を名乗る女性工作員(金賢姫)であり、マレーシアで起きた金正男暗殺事件でも、実行犯は、騙されて加担したとされる二人の東南アジアの女性達でした。比較的警戒されない女性を利用する北朝鮮の手法は、“アジア系女性”の存在をクローズアップさせる要因なのです。

 第4点を挙げるとすれば、容疑者の行動が用意周到であることです。自宅からは、42丁の銃器と爆発物が押収されたそうですが、こうした手法は、阪神淡路大震災時に露呈した朝鮮総連による大量の武器貯蔵を思い起こさせます。単独犯とはされていますが、組織的蜂起や破壊活動をも計画していたとする推測も成り立つ量です。

 第5点としては、犠牲になられた方々の多くは、カントリー・ミュージックのコンサートへの参加者であったことです。カントリー・ミュージックと言えば、“古き良きアメリカ”の象徴のようなジャンルであり、その参加者達も、アメリカをこよなく愛する純朴なアメリカ人であったのでしょう。スティーブン・パドック容疑者は白人と報じられていますが、いわゆる“白人至上主義”ではなく、むしろ、伝統的な“アメリカらしさ”を持った白人層を攻撃しているのです。また、自らもカジノの常連であったそうですので、IS等による所謂“腐敗した西洋文明に対する破壊行為”でもないようです。

 そして最後に第6点として指摘し得ることは、トランプ大統領が、非難声明において犯人を“ガンマン”と呼んだことです。この表現、ミサイル発射実験を繰り返す金正恩委員長に対して付けた“ロケットマン”と類似しています。仮に、大統領が北朝鮮関連の情報を得ていたとすれば、自ずと似通った表現が頭に浮かんだ可能性もないわけではないのです。

 以上に北朝鮮犯行説についてその可能性を探ってみましたが、限られた情報では推理の域を出ず、真相の究明は今後の捜査が待たれるところとなりましょう。しかしながら、何れにせよ、この悲惨な事件は、米軍による対北軍事制裁があり得る今日、北朝鮮、あるいは、そのシンパ勢力によるテロの可能性をアメリカ、並びに、同盟諸国に警告しているように思えるのです。

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コメント (2)
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