万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

中国の仲裁裁定拒絶理由は「九段線」の違法性にあり

2016年07月12日 16時39分01秒 | 国際政治
【緊迫・南シナ海】注目される仲裁裁 軍事拠点構築する中国へ初の国際判断示す
 本日、オランダのハーグに設置されている常設仲裁裁判所において、遂に南シナ海問題について仲裁の裁定が示される日を迎えました。中国が既に裁定の受け入れ拒否を表明しているところを見ますと、おそらく、中国に不利な内容となるものと推測されます。

 中国は、裁定拒否の主たる理由として、(1)自らが同意しない仲裁手続きによる裁定であること、そして、(2)仲裁官の人選に偏りがあることを挙げております。しかしながら、これらの拒絶事由の何れもが、中国の過去の行動に原因しております。仮に、中国が、フィリピンが提訴した際に、誠実に仲裁手続きに同意していたならば、これらの問題は存在しないのですから。否、当事国の双方の合意を要する他の司法解決に中国が応じることを期待できないからこそ、フィリピンは、一方の当事国のみによる提訴であっても受理可能な仲裁裁判を選択したのです。ですから、中国の仲裁批判は、自らの過去の行動に対する自己批判に他ならないのです。自らの行為の法的正当性に自信があるならば、中国は、仲裁裁判所に出向き、これをチャンスとばかりに自らの立場を堂々と主張してもよいはずなのです。

 そして、この点が期せずして明らかしているのは、中国が仲裁を拒絶する真の理由です。真の理由とは、言わずもがな、中国には、南シナ海全域に対して主権的な権利を主張するだけの法的根拠が存在しない、という厳粛な事実です。つまり、中国が主張する「九段線」は、国連海洋法条約とは相いれず、違法なのです。今般、仲裁裁定で「九段線」についての判断が示されるか否かは不明のようですが、「九段線」の違法性は、中国以外の誰が判断しても、動かし得ないと思うのです。

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