クニの部屋 -北武蔵の風土記-

郷土作家の歴史ハックツ部屋。

「超歴史ミステリー」。江戸時代の武士は“斬り捨て御免”できたか?

2007年12月20日 | レビュー部屋
――大奥
2007年12月19日に放送された「超歴史ミステリー」(テレビ東京)。
大奥の舞台裏を取り上げていました。
すなわち、徳川家光は春日局と家康の子であったとか、
家康は銃で撃たれ、その傷がもとで没したとか、
いずれも通説とは離れた仮説を打ち立てます。

「~かもしれない」
「~とも考えられる」
歴史の謎はなかなか解けないところに面白さがあるのかもしれません。
人の空想力をかき立てるのでしょう。
奇術のトリックのごとく、
真実がわかってしまうと逆に面白さが失われる要素は否めないと思います。
歴史は正しく伝えられなければなりませんが、
謎が吸引力を持っているのは確かです。

ところで、番組の中で江戸時代の日常を簡単に紹介したコーナーがありました。
その中に取り上げられていたのが「斬り捨て御免」。
武士は正当な理由があれば、
人を斬っても罪に問われないという法です。
しかし、江戸時代の生きた武士たちは、
1度も刀を抜くことなく生涯を終えることがほとんどだったようです。

斬り捨て御免という法は確かに存在していたものの、
簡単に人が斬れるほど何でもありというわけではありません。
実際に人を斬った者がいれば、
藩に事情を詳しく説明しなければなりませんでした。
そしてそこから町奉行で吟味され、
正当と認められれば斬り捨て御免は成立。
しかし、認められなければ有罪となってしまいます。

有罪となれば、刀を取り上げられたりお家お取り潰しになったりと、
その罰は決して軽くはありません。
中には切腹を申しつけられることもあったようです。
町人らの怒りを買えば、口裏合わせで有罪に陥れられることもあります。
武士と言えど、江戸時代ではなかなか刀を抜くことはなかったのです。

合戦のリアリティが失われ、代わりに“剣術”が盛んになっていきます。
刀はいつしか侍の心のようなものになっていきますが、
実践ではほとんど使いものになりません。
一本の刀で人が斬れるのは3~5人と言われます。
テレビでひとりの人間が何人も切り倒しているのはフィクションであればこそ。
江戸時代の武士にとって刀はアクセサリーも同様で、
人斬りより文治的な能力が求められたのでした。

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2 コメント

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Unknown (spur)
2007-12-20 12:32:04
>一本の刀で人が斬れるのは3~5人と言われます。

そういえば池波正太郎の小説の中にも
同様の一文がありました。
沢山の刺客と対峙した時は
戦意喪失させるだけの傷を負わせて次々立ち向かうべきであると・・

現代に生きる警察官も
拳銃を文治的に使ってほしいよね。

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 (クニ)
2007-12-21 00:24:35
spurさん

おお、池波正太郎ですか。
時代劇のように刀一本で敵をバサバサ斬るのは、
とても無理がありますよね。
戦意喪失させるだけの傷を負わせ、即立ち去る。
三十六計逃げるに如かずに通じますね。
文治的に使う拳銃は共感です。
緊急時はなかなか難しいのでしょうが……
返信する

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