杉山城は埼玉県嵐山町にある。
よく知られているように、山城の模範と言われる。
これだけ完全な形で残っているのは珍しい。
後北条氏による築城と考えられてきたが、
現在は山内上杉氏の手によるものとの可能性が高い。
国指定の史跡。
杉山城に辿り着いたのは夕方だった。
日は暮れかけ、城跡にはぼく以外に誰もいない。
かねてよりこの城とはじっくり語り合いたいと思っていた。
最後に足を運んだのはすでに数年前になる。
記憶もややぼやけている。
夕方とはいえ、誰もいないのは好都合。
人目を気にせず城と向き合える。
持ってきた見取り図を片手に城を攻める。
大手口をそのまま突き進むのではなく、南に折れて馬出廓から入城する。
“南三の廓”から食い違い虎口を通って“南二の廓”に行き、“井戸廓”に進む。
虎口に設けられているのは横矢掛かり。
突き出た土塁が廓の出入り口の防御を固めているわけだ。
すなわち、横から矢を放って敵を倒すという仕組み。
井戸廓からは本郭には進めない。
本郭の南虎口にあたる。
かつてここには木橋が架かっていた。
本郭では、ちょうどここに礫が発掘されている。
井戸廓に侵入した敵を撃退させるための武器だろう。
石という原始的な武器だが、
これがかなり効いたらしい。
いまでも石に当たれば痛い。
石の方が「痛い」と言うのは、よほど融通の利かない堅物くらいだ。
再び“南二の廓”に戻って、東側を通って“本廓”に入る。
本廓の東虎口では、ハの字形に広がる石積が発掘調査で見つかったという。
本郭から“北二の廓”に行く虎口は、
強力な横矢掛かりが設けられている。
そのまま“北三の廓”に足を運ぶ。
ここは木が生い茂っていて、かなり薄暗い。
日はどんどん翳り、逢魔の刻と言われる宵時となる。
再び本郭に戻り、“東二の郭”と“東三の郭”へ足を運ぶ。
ここはだだっ広く、杉山城の雄姿を望むことができる。
東の空には月が浮かんでいた。
南二の廓には戻らず、横堀に沿うように歩き、折れを見る。
再び馬出廓と南三の郭に戻り、
南二の郭には戻らず“井戸跡”に足を運んだ。
ここも樹木が多い。
木の陰から何かが覗いていたとしてもおかしくはない雰囲気である。
それはホラーではファンタジーだと思う。
不気味と言えば不気味。
でも、そこを気にしても城とは語り合えない。
竪堀を眺めながら井戸跡に辿り着く。
そこには深い穴があるわけではない。
井戸跡には大きな石でふさがれている。
杉山城で唯一見つかっている井戸だという。
そして、大手口から退城。
以上が今回進んだルートになるが、
再び引き戻って城に入る。
復習。
そう、ひとり散歩だと復習ができるのだ。
誰かと一緒だと、よほどの城好きでなければ遠慮してしまう。
妻でさえ遠慮が生じる。
しかも、自分のペースで好きなコースを辿れる。
多少端折って杉山城に再び入城した。
今度は駆け足で廓を巡った。
36歳の男が薄暗い城跡を走っている姿は、
ファンタジーではなくホラーかもしれない。
城の麓から犬の鳴き声が聞こえたのは、
ぼくに警戒してのことだったか。
大手口に戻ったときは、月光もだいぶ明るくなっていた。
城を眺めると、廓の輪郭が見えないほど闇の中に溶け込んでいる。
それでも3度目の復習に行く人はいるだろうか。
さすがに疲れた。
10代か20代だったら逆回りで攻めに行ったかもしれないが……。
ペットボトルの水を飲み干して杉山城をあとにした。
ちなみに、夏の杉山城はやぶ蚊が多い。
城跡見学の基本だが、
暑くても長そで・ズボンで行くことを薦める。
よく知られているように、山城の模範と言われる。
これだけ完全な形で残っているのは珍しい。
後北条氏による築城と考えられてきたが、
現在は山内上杉氏の手によるものとの可能性が高い。
国指定の史跡。
杉山城に辿り着いたのは夕方だった。
日は暮れかけ、城跡にはぼく以外に誰もいない。
かねてよりこの城とはじっくり語り合いたいと思っていた。
最後に足を運んだのはすでに数年前になる。
記憶もややぼやけている。
夕方とはいえ、誰もいないのは好都合。
人目を気にせず城と向き合える。
持ってきた見取り図を片手に城を攻める。
大手口をそのまま突き進むのではなく、南に折れて馬出廓から入城する。
“南三の廓”から食い違い虎口を通って“南二の廓”に行き、“井戸廓”に進む。
虎口に設けられているのは横矢掛かり。
突き出た土塁が廓の出入り口の防御を固めているわけだ。
すなわち、横から矢を放って敵を倒すという仕組み。
井戸廓からは本郭には進めない。
本郭の南虎口にあたる。
かつてここには木橋が架かっていた。
本郭では、ちょうどここに礫が発掘されている。
井戸廓に侵入した敵を撃退させるための武器だろう。
石という原始的な武器だが、
これがかなり効いたらしい。
いまでも石に当たれば痛い。
石の方が「痛い」と言うのは、よほど融通の利かない堅物くらいだ。
再び“南二の廓”に戻って、東側を通って“本廓”に入る。
本廓の東虎口では、ハの字形に広がる石積が発掘調査で見つかったという。
本郭から“北二の廓”に行く虎口は、
強力な横矢掛かりが設けられている。
そのまま“北三の廓”に足を運ぶ。
ここは木が生い茂っていて、かなり薄暗い。
日はどんどん翳り、逢魔の刻と言われる宵時となる。
再び本郭に戻り、“東二の郭”と“東三の郭”へ足を運ぶ。
ここはだだっ広く、杉山城の雄姿を望むことができる。
東の空には月が浮かんでいた。
南二の廓には戻らず、横堀に沿うように歩き、折れを見る。
再び馬出廓と南三の郭に戻り、
南二の郭には戻らず“井戸跡”に足を運んだ。
ここも樹木が多い。
木の陰から何かが覗いていたとしてもおかしくはない雰囲気である。
それはホラーではファンタジーだと思う。
不気味と言えば不気味。
でも、そこを気にしても城とは語り合えない。
竪堀を眺めながら井戸跡に辿り着く。
そこには深い穴があるわけではない。
井戸跡には大きな石でふさがれている。
杉山城で唯一見つかっている井戸だという。
そして、大手口から退城。
以上が今回進んだルートになるが、
再び引き戻って城に入る。
復習。
そう、ひとり散歩だと復習ができるのだ。
誰かと一緒だと、よほどの城好きでなければ遠慮してしまう。
妻でさえ遠慮が生じる。
しかも、自分のペースで好きなコースを辿れる。
多少端折って杉山城に再び入城した。
今度は駆け足で廓を巡った。
36歳の男が薄暗い城跡を走っている姿は、
ファンタジーではなくホラーかもしれない。
城の麓から犬の鳴き声が聞こえたのは、
ぼくに警戒してのことだったか。
大手口に戻ったときは、月光もだいぶ明るくなっていた。
城を眺めると、廓の輪郭が見えないほど闇の中に溶け込んでいる。
それでも3度目の復習に行く人はいるだろうか。
さすがに疲れた。
10代か20代だったら逆回りで攻めに行ったかもしれないが……。
ペットボトルの水を飲み干して杉山城をあとにした。
ちなみに、夏の杉山城はやぶ蚊が多い。
城跡見学の基本だが、
暑くても長そで・ズボンで行くことを薦める。