クニの部屋 -北武蔵の風土記-

郷土作家の歴史ハックツ部屋。

「天地人」、合戦で負ったケガはどう対処する?

2009年02月09日 | 戦国時代の部屋
大河ドラマ「天地人」では、合戦のシーンが登場する。
「見逃してくれ」と命乞いをする敵兵に、
動揺する直江兼続。
上杉軍の場合、鉄砲隊の姿は目立たず、
槍や刀を持った兵たちが敵陣へ攻めている。

戦国期の合戦は遠戦志向が強い。
戦死者の多くは矢に射られて命を落としている。
次に多いのは槍傷で、時代劇のように刀で敵を倒していくということはほとんどない。

刀を使うのは、敵の首を取るときくらいである。
どんな“剣豪”も、実際の戦場では刀は使えず、
刀にこだわればすぐに戦死するだろう。

ところで、矢傷を受けたときどうすればいいのか?
現代日本において、矢傷を負うことはまずないが、
戦国時代にはその対処法を教える者もいたであろう。
まだ合戦慣れしていない者に、
実践の心得を解いていたに違いない。

『雑兵物語』はそんな合戦マニュアル本とも言うべき書物である。
矢傷を負ったときどうすればいいのか、ちゃんと書いてある。すなわち、

 矢を抜くときは静かに抜け、いきなり抜いたら目の玉が回るぞ。
 おれの頭を、その木に押っつけて矢を抜け。
 矢尻の傷は手で抜くもんじゃねえ。
 毛立て箸か釘抜きがあれば、それで抜くのが一番いいぞ
 (『雑兵物語』吉田豊訳/教育社)

ふむふむ。
矢傷を負ったら、このように対処することにしよう。
同書によると、傷を負って痛みに苦しんでいるからといって、
水や湯をガバガバ飲んではいけないらしい。

では、傷を早く治すために何を飲んだかというと、
葦毛馬の糞を溶かした水である。
これを飲むと出血もなくなって傷も早く治るという。
葦毛馬の血を飲んでもいいが、
大切な馬に傷を負わせられないから、
「糞を喰ったほうがマシ」だったようである。

ちなみに、一昨年の大河ドラマ「風林火山」でも、
鉄砲傷で倒れた山本勘助に飲ませたのは馬の糞尿だった。
戦場に正規の医師などいない。
ブラックジャックのごとく、
いまで言う無免許医が治療にあたっていた。

ブラックジャックと違うのは、
迷信も言うべき知識で患者を診ていたことだろう。
その治療法で命を落とした者や、
体を不自由にさせた者もいたに違いない。
(逆に命を救われた者もいただろうが)

合戦はスマートではない。
人を斬れば血は流れるし、簡単に絶命するわけでもない。
血も流れず、あっという間に絶命する時代劇とは違う。
戦場となった村では、すさまじい乱取りが横行していた。
華々しく活躍する武将たちに目を奪われがちだが、
傷を負って苦しむ兵や、
それを治そうとする者たちの血なまぐさい戦場の一面を忘れてはならない。

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