伊勢崎市議会議員 多田稔(ただ みのる)の明日へのブログ

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「災害特区」の非常時対応  マニュフェストは出発点ではない

2012-05-12 23:17:34 | 政治・政策・経済
第4回日本自治創造学会研究大会で
印象的だったことをご報告します。

 日 時 : 平成24年5月 10~11日
 場 所 : 東京 日本都市センターホテル

■第1日目
大会挨拶 穂坂 邦夫(日本自治創造学会理事長)

今の日本は国が力を持ちすぎている。権力の中枢にいるものは改革できない。
改革の主役は地方のリーダーである地方議員。

(多田感想:幕末の維新の志士は、下級武士だったとお話がありました。
 地方議員を地方のリーダーと捉える視点は、国の改革を進める手がかりに
 なるように感じました。)



会長講演「危機管理と議会」 中邨 章(会長・明治大学名誉教授)

自治体の防災計画は国の省庁にあわせて分野別の縦割り。
これでは機能しにくいので、情報分析、広報、避難所などの
業務グループ別に編成したほうが良い。
災害が長期化する場合に備えて受援力を高めるため業務の継続性を考慮せよ。
災害時の議会の活動が防災計画に規定されていないことが多い。
災対本部に議会の代表を入れよ。

(多田意見:本部に議員を入れることには反対。首長以外に意見を出す人物が出現すると、
 非常時対応に大切な指揮命令系統が混乱する。)



講演Ⅱ「復興に果たす自治体の役割と責務」 鎌田司(共同通信論説委員)

被災地の首長が死亡し、職務代理者の特別職が退職したため、
一般職の総務課長が首長代理をしたケースがある。
しかし選挙を経て選ばれていないので、思い切った決断ができなかった。
このようなケースでは、一般職員が首長代理になるよりも、
選挙を経ている議会から職務代理者を出したほうが良いのではないか。

(多田意見:選挙を経た立場と言う意味で、なるほどと感じました。)

大震災後に霞ヶ関の省庁から、それぞれ膨大な通知が出た。
しかし、役所まで崩壊した被災自治体にとって、
どれほど役に立ったのだろうか。


多田意見:災害が起こってから、規制緩和や特例措置の通知を
 省庁がバラバラに大量に出しても被災自治体は使いにくい。
 むしろ、「災害特区」として、規制緩和の措置をあらかじめ定めておき、
 激甚災害の指定と同時に被災地が活用できるほうが良い。

 緊急対応期は首長の即断即決だが、比較的落ち着いた復興期に
 「災害特区」を利用して通常の法規制を超える特に重い判断を要する場合には、
 首長1人に責任を負わせず、住民代表として議会が審議・議決して
 同意を与える手続きを執るのが良いのではないか。
 災害時に議会が果たすべき有効な役割とは、選挙を経た住民代表として、
 行政の重要な決定にお墨付きを与えることであろうと考えます。
 災害時に各議員が対策本部や避難所等にバラバラに入りこみ、
 各自それぞれが口を出せば現場は一層混乱します。)



講演Ⅲ「自治体の政策展開と財政」 土居 丈朗(慶應義塾大学教授)

高齢化により社会保障費が増大する。世代間格差が大きく、給付と負担のバランスが肝。
専門家が別なので医療と介護の連携が足りない。
今後の課題は、本人負担の増、デフレスライド、年金の一元化、
被生活保護者の医療費、最低保障年金など。
財政赤字を国庫負担で補うことは市町村民=国民なので、全く解決ならない。

(多田感想:税と福祉制度の一体改革が必要と一層感じました。)



《パネルディスカッション》「分権時代の自治体経営と政策の創造」 

金井 利之(東京大学公共政策大学院教授)

議員は首長になる意識持て。
好き勝手要求するのでなく、あした首長になっても同じことが言えるように。


(多田意見:責任ある判断・要求をするために有効だと思います)

アメリカの議会は事業ごとの予算査定をするので権限があり、役人が擦り寄ってくる。

平成の大合併は大失敗。責任を持つ人間(首長)を減らしてしまった。
今の議会は先輩後輩や派閥の論理、言葉尻を捉えるなど
まっとうな議論ができるとは思えない。

人口は最も強い都市経営指標。
国の人口が減り始めたのは最近だが、1070~80年代には
特殊合計出生率は下がり始めていた。
その後も人口が増えていたのは出生数ではなく寿命が延びていただけ。
他の自治体でうまくいっている施策を本質を理解せず形だけ取り入れてもだめ。

(多田注:懇親会で、首長の中にも財政収支を考えない人もいるのではないか
 と質問したところ、そうであるが議員よりもマシとの回答でした。)



鈴木 直道(財政破綻した夕張市長 もと東京都からの応援職員)

行政のサービスは住民にとって空気みたいな存在。
薄くなってこないと気づかない。行政や議会は、時代に応じて柔軟に変化すべし。

東京都から財政破綻した夕張市へ支援に派遣されていた。
石原都知事は、都職員は「首都公務員」であると教育している。
東京は人材の供給を始め、地方のおかげで成り立っている。
都のために100%働くのは当たり前。
その上で地方のために20%働けと言われている。

(多田感想:石原都知事を見直しました)

夕張市へ派遣された初日に驚いた。今思うと考えが実に甘かった。
都から応援に行ったので、おそらく初日は仕事は早めに終わって、
歓迎の宴会くらいあるだろうと思っていた。

しかし、夜6時なっても夕張市の職員はだれも帰らない。
そのうちみんなベンチコートを着て、薄手の手袋をしてパソコンを打ち始めた。
外は零下17度くらいだが、夕方5時には役所の暖房が切ってあるからだ。

東京から来た私たちは、スーツだったので寒さに震えた。
夕張市の職員は誰も帰らない中で、寒さに耐えられず夜10時に
「早退させていただきます」と先に帰らせてもらった。


夕張市は50億円の財政規模だが360億円の借金がある。
毎年26億円づつ18年間返済予定。
人件費カットにより予定より早めに償還できている。

夕張市は人口が減少し高齢化も進んでいる。しかし他の自治体もいずれそうなる。
再建計画の変更には、鉛筆一本にまで国の同意が必要。自分たちでは決められない。
しかしマイナスにとらえるのではなく、市と都道府県と国が一体となって、
時代を先取りしたハイブリッド自治体をつくる唯一の先進ケースなのだと考えている。

(多田感想:本などでは伝わらなかった夕張市の厳しさの一端を感じました。
 全ての行政職員及び議員は、夕張を人ごとと思わず気を引き締めなければなりません)




中田 宏(前横浜市長・大阪市特別顧問)

自治法により、自治の仕組みを自分たちで決められないことが問題。
自分たちにあった形に変えられれば良くなる。
地方主権や自治体改革は精神論でなく仕組みをかえるべき。

地方の首長は議院内閣制でよい。
議会は決定権持っているので国が許認可権持っているのと同じくらい強い。
首長は与党を持つと楽だが、議院は財政収支には無責任に要求するので、
全ての要求を呑んでいたら破綻する。

議会は各論だけでなく、財政も考慮した全体計画を設定すべき。
市長就任時に、市営鉄道の借金を30年で返済する試算をさせたところ、
初乗り料金が1200円になった。隣の駅へ行くのにタクシーよりも高い。

一般会計以外の全ての市の借金を洗い出したところ、6兆3千億円もあった。
しかし、市役所職員にはまったく危機感がなく、能動的に動けない。

(多田感想:市議会議員は選挙にあたり政党型選挙をしていないので
 議院内閣制はむり。つまり、立候補時には所属する会派名を前面に出さず、
 会派のマニュフェストを示していないから。
 しかし逆に考えれば、この2つの要件を満たせば、
 市でも議院内閣制は可能かもしれません。)



コーディネーター   佐々木 信夫(中央大学教授

議会はかつてチェック機関だったが、立法・意思決定の役割が求められる。

(多田意見:議員や事務局の現状を考えると、議員が政策立案し
 条例案まで作るのは難しいだろう。議員としては質問等を通じて
 執行部に対し政策立案を促したり、修正することで良いのではないだろうか。)



■第2日目
第2分科会
“市民参加の予算づくりと市民参加の復興”〔コーディネーター:星野 泉(明治大学教授)

○液状化被災からの再生と創生を~市民力の結集と協働で~  松崎 秀樹(浦安市長)

浦安市は埋立地にあり、東日本大震災では、全国で一番液状化の家屋被害があった。
全国の件数は約2万7千件。そのうち千葉県は1万8千件(70%)以上で、
浦安市は8700件(32%)。全国の液状化家屋被害の1/3が浦安市だった。
86%の市域でライフラインが麻痺。

激甚災害・災害救助法は液状化を想定していなかった。
津波を防ぐために緑の防潮堤を作る。松などの単相林よりも強い
地域に適した多層群落の森。

市民のレベルを高めるには行政の情報公開を進める。
議員のレベルをどうたかめるかが課題。
議会で市長側の反問権が実現すればいくらでも議論を活性化できる。


(多田意見:当市でも取り入れたいと思います)



○各国の市民参加予算とわが国のこれから 兼村 高文(明治大学教授)

自主参加の市民参加の場では、少数の自己主張の強い人
(ノイジー・マイノリティー)に偏りがち。
サイレント・メジャーの意見を反映するには無作為抽出で討論するのがよい。

市川市や一宮市では、1%支援制度がある。
税金の使途を指定できる仕組み。
(浦安市の松浦市長はこの制度には大反対。税金の執行として
 特定の団体へまわすのは良くないという)

ブラジルのポルトアレグレ市では、市予算の20~30%を市民が決める。
市民の直接参加は議会を侵食するものではなく、補完・協働するもの。
これまでの事業仕分け(事後評価)に代えて、市民参加の予算仕分けを導入すべき。

(多田感想:義務的な業務が多い中で、自治体が自由に使える予算はどれくらいなのか
 会場から質問があった。これは決算カードにおける経常収支比率で
 100%との差額として確認できるものである。近年は90%以上の自治体も多いので、
 この実情を考慮すると、例え1%の市民査定であっても、100分の1ではなく、
 1/10以上の重みがある。)


講演Ⅳ
「国政の再編と地方政治の展開」 飯尾潤(政策研究大学院大学教授)

官僚は昨日の政策を元に次の政策を考えている。今は議論の前提が変わる時代。
政治家の役割は国民の意見を集約すること。
今の政治家は交渉が下手。対党内、国会内、外国など。

マニュフェストは出発点ではない。問題の終着点を示すもの。
選挙にあたり、未解決の問題を取り上げて、
どのように決着させるかマニュフェストに示し、勝利したなら実行の根拠となる。
野党や住民が反対しそうな問題こそマニュフェストに取り上げるべきなのに、
耳当たりの良い項目ばかりかかげてまるで昔の選挙公約のような状態。


(多田感想::マニュフェストの意義についてとても勉強になりました)



《パネルディスカッション》 「自治体の自立・自存と議会の対応」
  コーディネーター   永久 寿夫(政策シンクタンクPHP総研研究主幹)

穂坂 邦夫(前志木市長・地方自立政策研究所理事長)

議会は住民協議会方式に反対するのならば、先取りしてほしい。
住民、議会、執行部がそれぞれ予算案を作り議論したらよい。

25人程度学級を提案した時、県、国は大反対。
しかし、議会が全員一致で応援してくれたので心強くなった。
最後は県と国が折れた。



宮台 真司(首都大学東京教授)

議員は政策立案の専従なのだから、住民よりもはるかに勉強して
提案できなければならない。そこに住民は価値を認める。


(多田意見:私もそう考えています)

自治の本質は参加と自治。住民から見て議員は遠い存在なので期待されていない。
若者が政治に無関心なのは、若者が社会から排除、冷遇されているから。

(多田感想:若者の政治離れを批判する声が多いですが、
 若年層の就職難など社会の若者に対する仕打ちへの反応として、
 無関心になっているのかもしれません)

安心・安全・快適のキャッチフレーズは、国も自治体も共通。
世界で見れば日本の達成度は高い。
しかし国民の幸福度は世界で80位以下
このキャッチフレーズは本当のニーズに合っていない。

(多田感想:ドキッとする指摘です)

町を一つの生き物として見る視点により、住民参加が進む。
行政の財政赤字は、税収不足や福祉の増大ではない。
補助金制度が元凶。多く使うほど多くの補助金がもらえるので、
無駄遣いするインセンティブが働く。


(多田感想:東電の電気料金も同じ原理です。かかった経費×3%が
 会社の儲けとなるので、できるだけ多くの経費がかかるように
 インセンティブが働いてしまうのです)

地方改革は形(制度)を変えても、中身(意識)が変わらなければだめ。
逆に意識を変えれば形は同じでも相当変わる。国に期待していてはだめ。



山中 光茂(松阪市長 36歳)

市が物事を決定する前に、説明会ではなく意見聴取会等を開き、
市民の声を聴いて、市民同士でも議論し、市民にしっかり意識を持って
街づくりに参画してもらう「シンポジウム・システム」を持っている。

住民討論会の前に、テーマについて10回以上勉強会を開き、
準備会も10回以上開いている。
各種団体への補助金をカットして財源に充てた地域への交付金制度については
議論に千日かかった

行政が地域に入って汗を流す。
100人以上の市職員がボランティアとしてさまざまな地域活動に参加している。

名古屋市では地域委員会をつくりお金を出しているが、
丸投げしてお金を出渡すだけであり、行政はちっとも地域に入っていない。
具の骨頂。

(多田意見:行政が地域に入っていく。
 言葉では簡単ですが、時間と手間がかかります。
 いくら行政が市民との協働をお願いしても、
 公務員自身が市民活動に無関心では口先だけになってしまいます。
 私は県職員時代から、個人的な考えとして、
 公務員が地域活動やボランティアに参加することは当然であり、
 すでに給料に含まれているという意識です。)


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