ミーハーのクラシック音楽鑑賞

ライブ感を交えながら独断と偏見で綴るブログ

オペラ『ローエングリン』@新国立劇場(4日目)

2016-06-05 00:46:18 | オペラ
先日(1日)新国立劇場・オペラ劇場で公演された『ローエングリン』(4日目)を観に行ってきた。音楽はリヒャルト・ワーグナー。演出はマティアス・フォン・シュテークマン。指揮は飯守泰次郎。管弦楽は東京フィルハーモニー交響楽団。主な出演者は下記の通り。

ハインリヒ国王:アンドレアス・バウアー
ローエングリン:クラウス・フロリアン・フォークト
エルザ・フォン・ブラバント:マヌエラ・ウール
フリードリヒ・フォン・テルラムント:ユルゲン・リン
オルトルート:ペトラ・ラング
王の伝令:萩原 潤
ブラバントの貴族Ⅰ:望月哲也
ブラバントの貴族Ⅱ:秋谷直之
ブラバントの貴族Ⅲ:小森輝彦
ブラバントの貴族Ⅳ:妻屋秀和
合唱:新国立劇場合唱団
《17時00分開演、22時10分終演》休憩2回

ワーグナー・オペラの長いことは十二分に認識していたが、それにしても長い。第1幕は約1時間10分、第2幕は約1時間30分、そして第3幕は約1時間10分もある。いくら休憩時間が40分あるとはいえ長すぎる。確かに昔は芝居は1日かけて楽しむものであったが現代はそういう時代ではない。このオペラにしても、第3幕の結論部分を考えると、第1幕と第2幕は半分のダイジェストにして欲しいと思ってしまう。それでなくとも、新国立劇場の椅子が固く辛かった。このことについては別の機会にでも書きたいと思う。

あらすじは何処からやってきた勇猛果敢な騎士がその正体を明らかにすることもなく、ブラバント王国の姫・エルザと結婚する。しかし、エルザは彼の名を執拗に聞きたがることで、騎士は自分は聖杯の地から来たローエングリンだと名を明かし、エルザの弟を王国の後継者にするとして、エルザの元を去る。内容としては悲劇なのか喜劇なのか判断のつかない、表裏一体の悲喜劇という感じである。

舞台美術は光沢のある黒塗りの緩やかな斜舞台。奥には格子状のパネルがあり、これが場面ごとにいろいろな光模様を映しだしていく。割とシンプルな舞台で出演者は演じやすい舞台装置である。しかし、第1幕はまるで演奏会形式ではないかと思うぐらいほとんど動きのない。この演出には驚き。長丁場の舞台ゆえの配慮なのかもしれないが、観ている方は退屈極まりない。何度ウトウトしてしまったことか。第2幕は脇役陣が主役のために、それぞれが自分の登場シーンを思いやりたっぷり演じるために間延びしていく。第3幕にして、やっとオペラらしい展開というか演出を見せてくれる。

出演者ではやはりタイトルロールを演じたクラウス・フロリアン・フォークトがやはり抜きんでていた。今ではワーグナー・テノールの第一人者と言われるだけあり、艶やかにしてハリのある美声は素晴らしい。相手役でエルザを演じたマヌエラ・ウールも第1幕はセーブしていたのが第3幕とのフォークトとの掛け合いでの歌声は清美で聴きごたえがあった。他の出演者もそれなり良かったが、ハインリヒ国王やフリードリヒは日本人歌手を起用しても良かったのではないかと思えた。

飯守泰次郎は前奏曲や間奏曲では丁寧な指揮ぶりで魅惑的な音色をオケから引き出すが、出演者が舞台がいるときはとても良いと言えない。ただ、指揮をしているだけという感じで、出演者たちが気分良く歌い上げるような音色を作り上げていない。また、しっかりとした指示も出しているとも思えない。それゆえか、出演者たちの多くはプロンプターに乗せられているようで、終演後何人かはプロプターと握手をしたり、顔を見合わせて、彼の健闘を称えていた。

このように、決して褒められていいとは思えない舞台だったが、終演後の観客は熱狂的なカーテンコールを送っていた。日本人のワーグナー好きにはちょっと首を傾げたくなる。それとも、フォークトのために拍手をしていたのだろうか。


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