ミーハーのクラシック音楽鑑賞

ライブ感を交えながら独断と偏見で綴るブログ

ソヒエフ&N響の『新世界から』

2016-10-27 14:32:51 | N響
昨日(26日)サントリーホールで開かれたNHK交響楽団第1846回定期公演Bプログラムを聴いてきた。指揮はトゥガン・ソヒエフ。ピアノはエリーザベト・レオンスカヤ。

【演目】(※はアンコール曲)
ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第3番ハ短調
※ショパ/ノクターン第8番変ニ長調
  〜 休 憩 〜
ドヴォルザーク/交響曲第9番ホ短調『新世界から』
《19時00分開演、20時55分終演》

先日、ヨーロッパで活躍する音楽家と話す機会があったのだが、その時にちょっと話題に上がったのがソヒエフに対するヨーロッパのオケでの評判。ソヒエフはすでにベルリンフィル、ウィーンフィル、コンセルトヘボウ管などヨーロッパの主要オケを指揮をしているが、その評価は非常に高いとのこと。彼は現在トゥールーズ・キャピトル管、ベルリン・ドイツ響の首席指揮者とボリショイ劇場の音楽監督を務めているが、その人がいうにはいずれ間違いなくもうワンランク上のオケの首席指揮者になるだろうということだった。

1曲目。序奏部で木管がいきなりハーモニーを乱すには少し驚いた。そのせいもあってか第1楽章のレオンスカヤの演奏も少々乱丁気味。しかし、第2楽章に入ると彼女が持つ繊細な響きがホール内を漂うになっていき、とても心地良い気分になっていく。第3楽章も気負うところなく第2楽章同様に繊細にして透明感のある音色を吟遊詩人のように彷徨させてくれた。そして、なんといっても素晴らしかったのがアンコールのノクターン。この演奏には場内の観客がみんな息を潜め、いや息を殺して聴き入ってしまった。ラブリー!

2曲目。一言で言えば、これまで聴いたことがない洗練されたスタイリッシュな『新世界から』だった。ソヒエフの指揮は師匠であるテミルカーノフのような威厳ある力でグイグイと引っ張っていくのではなく、細部にわたるまでの緻密さと表現力豊かさで音を紡ぎだしていくといった感じである。それゆえに、今年聴いた彼の『白鳥の湖』や『幻想交響曲』はアンビリーバブルな素晴らしさだった。この『新世界から』にしてもその手法を遺憾なく発揮して、緊張感溢れるなかドラマチックかつロマンチックな曲に仕立てあげた。ソヒエフ、恐るべしである。ブラボー!

この日のプログラムは有名曲の組み合わせだったこともあり、最近のB定期としては空席が目立った。それなのに『新世界から』の終曲で指揮者がまだタクトを下さないのにフライング拍手をしたり、家路を急ぐのか席をすぐに立つなど相変わらずの観客が多かった。しかしながら、最後までしっかりと聞き入ったお客は何度も何度も惜しみない拍手をソヒエフに送っていた。そのなかには「パーヴォ・ヤルヴィの次はお前だぞ」と思っている観客が何人もいることを私なりに確信した。なお、ソヒエフはこのあとNHK音楽祭(31日)でN響を振る。そして、来年は11月B定期C定期に登場予定。


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