ミーハーのクラシック音楽鑑賞

ライブ感を交えながら独断と偏見で綴るブログ

オペラ『アンドレア・シェニエ』@新国立劇場(3日目)

2016-04-21 22:16:44 | オペラ
昨日(20日)新国立劇場・オペラ劇場で公演された『アンドレア・シェニエ』(3日目)を観に行ってきた。音楽はウンベルト・ジョルダーノ。演出・美術・照明はフィリップ・アルロー。指揮はヤデル・ビニャミーニ。管弦楽は東京フィルハーモニー交響楽団。主な出演者は下記の通り。

アンドレア・シェニエ:カルロ・ヴェントレ
マッダレーナ:マリア・ホセ・シーリ
ジェラール:ヴィットリオ・ヴィテッリ
ルーシェ:上江隼人
密偵:松浦 健
コワニー伯爵夫人:森山京子
ベルシ:清水華澄
マデロン:竹本節子
マテュー:大久保 眞
フレヴィル:駒田敏章
修道院長:加茂下 稔
フーキエ・タンヴィル:須藤慎吾
デュマ:大森いちえい
家令/シュミット:大久保光哉
合唱:新国立劇場合唱団

先週ここで観た『ウェルテル』はこれまで観た新国立劇場オペラのなかでも最悪と言っても過言ではないぐらい妙味のないオペラだった。いくら新制作だからにしても、あらゆる面でオーソドックスというか保守的で、眠りたくなるというよりもアクビが出る呆れた出来で、もう二度と上演はして欲しくない。

それに対して『アンドレア・シェニエ』は2005年、2010年に続く再々演ということもあるが完成度は高く、『ウエルテル』で「カネ返せ!」と思った怒りを払拭するぐらい素晴らしかった。お話はフランス革命さなかの悲恋物語。舞台美術は回り舞台の上にギロチンの刃を連想させる全てが斜めになっている装置。これが場面ごとに転換していき、見事なまでの背景イメージを作り上げていく。この計算された舞台美術は絶妙絶好だった。

出演者ではタイトルロールを演じたカルロ・ヴェントレはテノールの歌声は素晴らしいものの、演技力というか表現力が稚拙。同様に相手役のマッダレーナのマリア・ホセ・シーリも似たよったりだった。一方でアルフレードのアントニオ・ポーリは歌声はセーブされているものの、演技力は抜群で革命戦士ぶりをしっかり表現していた。彼と端役諸氏およびその他大勢を演じた合唱団、ダンサー、子役なくしては感動はなかったかもしれない。

指揮のヤデル・ビニャミーニは先日のネトレプコ・コンサートでタクトを振った人だが、緩急自在の指揮ぶりは見事で、東京フィルから情感豊かな音色を引き出していた。また、終局の二重唱『きみのそばにいるよ』では主役2人に的確な指示を送っていて、彼はおそらくこのオペラをかなり熟知していると思えた。余談だが、休憩時間にヨーロッパ・オペラに精通している知人に話を聞いたところ、このオペラは日本ではあまり上演されないが、ウィーンやミュンヘンではよく上演されていて『忠臣蔵』のようなポピュラーな演目だそうである。

冒頭にも書いたが『ウェルテル』のような新作の愚作よりも、こうした良作は何度でも上演すべきであろう。ただ、もう少し魅力的なキャスティングはしてもらいたい。


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