ミーハーのクラシック音楽鑑賞

ライブ感を交えながら独断と偏見で綴るブログ

『マノン・レスコー』@新国立劇場

2015-03-14 01:27:56 | オペラ
一昨日(12日)新国立劇場・オペラ劇場で公演されている『マノン・レスコー』(2日目)を観てきた。音楽はジャコモ・プッチーニ。演出はジルベール・デフロ。指揮はピエール・ジョルジョ・モランディ。管弦楽は東京交響楽団。主な出演者は下記の通り。

 マノン・レスコー:スヴェトラ・ヴァッシレヴァ
 デ・グリュー:グスターヴォ・ポルタ
 レスコー:ダリボール・イェニス
 ジェロント:妻屋秀和
 合唱:新国立劇場合唱団
 《19時00分開演、21時50分終演》休憩1回

2011年3月15日に初日を迎えるはずだった今回の『マノン・レスコー』。しかしながら、東日本大震災のために公演は中止を余儀なくされた。あれから4年。舞台は主要キャストは変わっていないが、指揮はリッカルド・フリッツァからスヴェトラ・ヴァッシレヴァに。

あらすじというかテーマは、ヒロインであるマノン・レスコーが貧乏ながらも好きなデ・グリューとの愛に生きるか、それとも愛はないがジェロントの庇護のもとに贅沢な暮らしに生きるか、といったところだろうか。

さて、舞台であるが舞台美術と演出がとてもいい。舞台美術は、第1幕は馬車の駅舎の待合室、第2幕はマノンの部屋、第3幕は港の桟橋、第4幕は荒野を表しているだが、どのセットも華美な装飾をまったく施さずに白を基調したシンプルに造られている。その一方で、衣装は18世紀の世界を再現していて、これがなんの違和感もなくセットにマッチしている。これはひとえに、ジルベール・デフロのプランおよび演出の巧みさゆえであろう。そして、第1幕と第3幕の合唱団および助演陣が出てくるシーンでの細部にいたる精巧な演出は見事で感服するしかない。デフロは『カヴァレリア・ルスティカーナ/道化師』での完成度の高い演出にも驚いたが、今回の演出も素晴らしい。彼は相当な才能があると思うので、新国立劇場は彼をもっと登用すべきではなかろうか。

次に主要キャストだが、タイトルロールを演じたスヴェトラ・ヴァッシレヴァは小柄ながらも舞台映えのする歌手だ。ただし、歌に関しては前半は妙に声を張り上げるだけといった感じで、気持ちと歌が妙にチグハグだった。しかし、後半は歌にしっかりと感情移入がされていて、悲劇のヒロインをしっかり演じていた。相手役のグスターヴォ・ポルタは『道化師』のときほど切れる歌声はなかったものの、マノンを引き立てることもあり、それはそれなりに良かった。ダリボール・イェニスと妻屋秀和の二人に関しては、さほど重要な歌があるわけでないので「もったいなあ」と言うしかない。

そして、演奏であるが、これはこれまで聴いた新国立劇場のオケピのなかでも屈指といってもいいほど出色だった。プッチーニを熟知していそうなピエール・ジョルジョ・モランディの指揮のもとに、東京交響楽団が白を基調とした舞台美術と同じように清廉かつ瑞々しい音色を随所に醸し出し、聴きごたえたっぷりだった。時に舞台より耳をすましている時間が長くなったりしてしまうほど優れた演奏を披露してくれた。

最後に今回の公演は十二分に4年前の復活というかリベンジを成し遂げたといっていいと思う。また何年か後に更にグレードアップして再演されるに違いない。


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