新国立劇場2010/2011シーズンオペラ
「ばらの騎士」 公演日程・指揮者・出演者変更のお知らせ
http://www.nntt.jac.go.jp/release/updata/20001417.html
震災に関する私のブログは↓
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今回の大震災で相次ぐクラシック音楽コンサートや来日オペラ公演が相次いで中止された。そして、これから主催者は多額の金額を払い戻ししなければならないが、多くの方が思っていると同様に私も払い戻しされた金額の一部を義援金に回すつもりでいる。
サントリーホールのホームページを見て吃驚。
聴きに行く予定だった公演をはじめ、今月中の公演の多くが中止・延期。今日からは首都圏の鉄道はかなり通常に近い運行をするというのに残念でならない。
今日は午後3時からのサントリーホールでのチェコフィルの演奏会に行く予定だった。しかし、さきほども緊急地震速報が携帯電話を鳴らし、茨城県沖で余震が発生したように、まだ何が起きるか解らない状況で、自宅に高齢者の母親を残して外出するのも憚るので、自粛することにしました。
おそらく私のようにいろいろな事情でサントリーホールへ行けない人がいると思う。もし、このことを理解していただけるならば、主催者であるフジテレビ、冠スポンサーである東芝、そしてチェコフィルは今回の売り上げの一部を義援金としていただきたい。そうしてもらえれば、聴きに行けなくても悔いはありません。
マグニチュード8.8という歴史上最大の地震が発生、東北地方では甚大な被害と犠牲者も多数出るであろうということが解っていたにもかかわらず、また東京でも断続的に余震が続き、公共交通機関が全面ストップしていたにもかかわらず、昨日(3月11日)日本フィルはサントリーホールでの定期公演を敢行した。
昨日公演を予定されていたオーケストラはオペラシティの東京交響楽団、函館の東京都交響楽団、横浜みなとみらいの佐渡裕指揮のBBCフィルは公演を中止。トリフォニーホールの新日本フィルは強行するものの、払い戻しに応じるとのこと。ところが、サントリーホールの日本フィルだけが「本日おいでになれない方は明日お席の許す限り振り替えさせて頂きます」というお断りで強行した。
いったい昨日の公演に何人の人が聴きに行けたのだろうか。六本木周辺に住んでいる人および職場が近くにある人以外はまず行くことができなかったはずだ。そんなことを解っているにもかかわらず、公演を行うことは暴挙以外何ものでもない。
私事で申し訳ないが、昨日の公演は87歳の母親と行く予定にしていた。しかし、昨日のような状況下ではとてもじゃないが高齢者を伴ってサントリーホールへ行くことはできない。母親はプロコフィエフの「ロミオとジュリエット」をとても楽しみにしていただけにかなり落胆したが、それよりも公演を強行したことにもっと驚いていた。
サントリーホールとの契約で無理矢理公演されたのか、それとも赤字になるのを回避したいがために公演強行したのかその辺りの事情は知らない。しかし、今回のことで日本フィルの状況分析能力の無さとお客さんに対する配慮の欠如を認識すると共に、ほとほと呆れ返ってしまった。
ラザレフという素晴らしいシェフを迎え、木管金管に実力者を揃え、いつも最後に全員でお客さんにお辞儀をする楽団員に好感をもってきたが、残念ながら事務局は最低であった。
と、ここまで書いて日本フィルのホームページを再度見たら「昨日・今日の定期演奏会にやむを得ずご来場頂けないお客様におかれましては、他日公演チケットとの引き換えを行います」と追記されていた。しかし、これで納得する人はどれぐらいいるのだろうか。
一昨日(4日)サントリーホールで開かれたライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の来日公演を聴きに行ってきた。指揮はリッカルド・シャイー。
【演目】
ブルックナー/交響曲第8番ハ短調(ノヴァーク版)
《19時00分開演、20時35分終演》
ちょっと変わったオケの配置。ヴァイオリンは対向配置。下手側、第1ヴァイオリンの後方にコントラバスが2壇に分けれて10台。その横のチェロの後方に同じように2壇に分かれてチューバ、ホルン9台(4台はワーグナーチューバ兼用)が並ぶ。こうして左側に少し偏った配置のために、普通はセンター正面12時のところに並ぶ木管首席陣が少しずれて1時ぐらいに位置する。そして、ハープは上手ヴィオラの後ろに3台。第2ヴァイオリンの後方だけが唯一の空白スペースとなったかが、いずれにしろ100人以上の大編成。
第1楽章(アレグロ・モデラート)
緊張感と集中力に満ちたスタート。地響きのように唸るコントラバスの音色が明晰かつ迫力満点で心地よい。ヴァイオリンはスモーキーというかエコーがかかったような味わいある音色でドイツのオケらしい荘厳さと重厚さがずっしりと伝わってくる。そして、イタリア人なのにまるでドイツ人のようなガッチリとした体型のリッカルド・シャイーは威厳に満ちた大学教授のような感じでオケを纏め上げていく。
第2楽章(スケルツォ、アレグロ・モデラート)
起伏に富んだアップテンポな展開で私がもっとも好きな楽章。低弦の響きと金管の色彩感がなんともいえない。加えてティンパニーのコントロールされた打音が反撥することなく溶け合っていく。また、木管陣の清らかな音色が聴こえてくる。いや~、もう満足満足。
第3楽章。(アダージョ)
この楽章は愁眉だった。ホルン陣の音色にとにかく酔いしれた。あんな芳醇にしてマイルドな音色を聴いたのはシカゴ交響楽団以来だ。ベルリンフィルは聴いたことがないが、ホルン&ワーグナーチューバ陣はヨーロッパのオケでは実力ナンバー1ではないだろうか。ここまで聴いてきて、これは歴史的名演に立ち会えるのか、と思ってしまったが、残念ながらそうは問屋は卸さなかった。
第4楽章(フィナーレ)
シャイーは少し間をおいてから第4楽章に入った。しかしながら、冒頭のファンファーレで金管の音色が少し割れてしまう。その後にある弦のピチカートも乱れる。ドイツから日本へきた長旅の疲れが出てしまったのだろうか。そのせいか、全体のアンサンブルに妙な自己主張が見えてしまう。それでも、最後はシャイーの指揮の下、重厚壮大にして統一感に満ちた終焉を迎えた。
終演後の「フライング・ブラボー」が危惧されたが、シャイーが手を下ろすまでその声は鳴らず、シャイーが正面観客席を振り返った途端にブラボーのハーモニーの嵐が沸き起った。それも私が知る限りでは最大級のブラボーの嵐で、それは嵐というよりウエーブという感じだった。
なお、この日はNHKの劇場中継班が録画に入っていて、この模様は3月18日(金)23時からの教育テレビ「芸術劇場」で放送予定。
昨日(3月1日)サントリーホールでの札幌交響楽団東京公演を聴いてきた。指揮は尾高忠明。チェロはミクローシュ・ペレーニ。
【演目】(※はアンコール曲)
武満徹/ハウ・スロー・ザ・ウィンド−オーケストラのための(1991)
ショスタコーヴィチ/チェロ協奏曲第2番ト短調
~休 憩~
ショスタコーヴィチ/交響曲第5番ニ短調
※シベリウス/アンダンテフェスティーボ
《19時10分開演、21時25分終演》
札幌交響楽団の指揮者陣は、音楽監督が尾高忠明(新国立劇場芸術監督・N響正指揮者)、正指揮者が高関健(前・群馬交響楽団音楽監督)、首席客演指揮者がラドミル・エリシュカ(チェコ・ドヴォルザーク協会会長)と、日本の地方オケのなかでは屈指のメンバーを揃えている。そして、本拠地(行ったことはないが)はその響きが定評のKitaraホールで、地方オケとしてはかなり恵まれた環境にあるのではないだろうか。
1曲目。私の不得手なタケミツである。いつもながら、60年代から70年代の映画音楽的な曲だなぁと聴いていたら、どこかで聴いたことのあるような旋律や色彩が聴こえてくる。あ、これって「夢千代日記」と思ってしまった。タケミツはテレビドラマの音楽は少ないはずなので、「夢千代日記」がタケミツなのかどうか聴いているときは解らなかったが、帰って調べたら案の定であった。
2曲目。今回のお目当て。ミクローシュ・ペレーニは一番のお気に入りチェリスト。飄々としながらも、独特の長いボーイングから深みと厚みのある音色で、チェロがもつ優雅さと力強さを“体感”させてくれる奏者。
ショスタコーヴィチのチェロ協奏曲第1番は何度も聴いているが、第2番は初めて聴く。この曲はおそらくテクニック的にはさほど難しさはないと思うが、テンポの取り方やオケとの合わせ方がかなり高度なのではないだろうか。そんななかで、第2楽章の聴かせどころであるスケルツォでのホルンとの掛け合いは素晴らしかった。また、コンマス(伊藤亮太郎)率いるヴァイオリン陣との音色の重ねあわせも綺麗に溶け込んでいて、ショスタコーヴィチ特有のテンポとリズムの世界を堪能することができた。言葉は少し可笑しいかもしれないが、チェロの職人芸を聴いた思いだった。ブラボー!
3曲目。出だしのコントラバスが甘い。結局、この甘さが最後まで尾を引いてしまったのか、この曲の持つインパクトを弱くしてしまった。加えて、チェロ協奏曲では愁眉だったホルン陣が5人に増えたことによってアンサンブルがうまく整わなくなり、他の木管陣も2曲目とはうってかわって、妙に肩に力が入ってしまい、その音色に輝きを感じられない。
一方で、金管陣は素晴らしい。どっしりとした大地に根を下ろしたような力強さを感じさせてくれた。そして、何よりも白眉だったのがヴァイオリン陣。いや~、在京オケも真っ青の音色で、終始一貫素晴らしく、尾高忠明も「札響のヴァイオリンを聴けよ!」と言わんばかりに、ヴァイオリン陣に対しての指示と煽りの多い指揮だった。
アンコールも結局は弦楽とティンパニーだけで、ヴァイオリン陣の爽やかな北の大地の風を運んでくるような美麗な音色に聴き惚れてしまった。
最後にサントリーホールに苦言をひとつ。開演前に当日券には雨のなか長蛇の列。以前にも書いたが、サントリーホールの当日券はボックスのなかに係員がひとりいるだけで処理している。これではチケットをなかなか裁くことはできない。おそらく、この処理の遅さから開演時間が10分遅れたに違いない。それにしても、クラシックのお客さんは品がいいというか、誰もこのどうしようもない対応に文句を言わないのだろうか。これが演劇だったらお客さんは暴言の一言二言を吐いて帰ってしまう。こんな殿様商売的対応をしていては、クラシック音楽の裾野は広がることはない。