北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

「イコロ」の「ロ」はなぜ小さいの? ~ 阿寒湖アイヌシアター

2011-12-06 23:45:56 | Weblog
 台湾からの旅行代理店の皆さん9名を迎えたFAMツアーの交流会に出席するために夕方から阿寒湖畔へ。

 今日から道東を巡る旅に参加してもらい、感じた魅力を詰め込んだ道東の旅を作ってもらおうというのです。

 ちょうど一昨日から降った雪が山や森を飾って、美しい風景が一行を迎えたようで、道東の美しさをさらにPRできたようです。


    ※     ※     ※     ※     ※


   【イコロの正面です】


 さて、折角阿寒湖畔へ行くのですから、普段なかなか会話ができない人たちともお会いしておこうと、少し早めに釧路市内を出発してFAMツアーの前にやっと完成した阿寒湖アイヌシアター「イコロ」を訪ねました。

 「イコロ」は日本で初めての先住民族専用舞踊劇場で、古式舞踊、ユーカラ劇、音楽、そして人形劇など、多種多彩な文化表現で交流と文化伝承を果たそうという建物です。

 ここでは地元コタンのアイヌの皆さんが来年から演じる人形劇の練習の真っ最中でした。


   【舞台を広く使った演出です】


 人形劇は、アイヌの女性から聞き取ったウェペケレといわれるアイヌの伝承物語を元にしたもので、札幌の人形劇団やまびこ座の協力を得て作り上げられました。

 物語は熊の神様にまつわるお話でタイトルは「ふんだりけったりクマ神様」。珍妙なやり取りで笑える大人から子供まで楽しめる内容になっています。




 この取組を熱心に進める、阿寒アイヌ工芸協同組合専務理事の秋辺日出男さんを訪ねてお話を聞きました。
 

「劇の練習はいかがですか?」
「やまびこ座の皆さんと違ってこちらは素人ですから大変です。札幌では先行して上演もされていますからそれを何度も見て勉強しながら準備を進めています」

「ふんだりけったりクマ神様というタイトルが面白いですね」
「それが、この物語のアイヌ語の原題は『(男性器の)チンチンとタマタマが濡れちゃった』というもので、ちょっとエロっぽい要素があってアイヌの人たちの中では子供を寝かしつけてから聞く話だっただそうです」

「R18指定というわけですか?」
「そうそう(笑)でもさすがに原作のままではよろしくないので、劇の中では川に入って濡れたことにしたりしてね。最初はとても長い物語になっていましたが、40分で納まるような構成にしていただきました」

「建物が完成して今までオンネチセでやられていた古式舞踊などもこちらでやられているのですね。人形劇のお披露目はいつですか?」
「はい、今月の17日(土)と18日(日)に行うことになっていて最終の練習に励んでいるところです。ぜひ来てください」



【イコロのロはなぜ小さいの?】
 ここで使われる人形も地元で作ったものだそうで、練習にも熱がこもります。

 ところで以前から気になっていたのが「イコロ」という表現。アイヌ語で「宝」を意味すると聞いていたのですが、「イコロ」ではなく「イコロ」と「ロ」の字が小さい表記になっているのです。

 不思議だったので秋辺さんに訊いてみました。

「それは、もともと日本語の発音にない音だからで、委員会の皆さんが協議してそうしてくれました」
「日本語にはないんですか」

「はい、シアターの入り口の上にアルファベットで書かれている表記は"ikor"となっています。読むときは"iーkor"でこの"r"はロにもルにも聞こえますが母音が続かない子音だけなので、日本人には正確に読めないのじゃないでしょうか。それらの意味を込めて、小さなロにしているんです」


   【本当だ、ikorと書いてある】



 なるほど、小さなロにも深い意味がありました。

「イコロのロはなぜ小さいと思いますか?」という問いから、アイヌ語の世界、そしてアイヌ文化へと興味が広がりそうです。

 私もこれからはそういう問いかけをしながら『イ・コロ』と呼ぶようにしましょう。

 ここ阿寒湖アイヌシアター「イコロ」で、アイヌの人たちの民族のアイデンティティにぜひ触れてください。


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