●全部、小生が悪いのだが、謎のトリックデックが出てくることがある。
●全部、小生が悪いのだが、謎のトリックデックが出てくることがある。
講談社学術文庫『醒睡笑』52頁15番より
【現代語訳】
いいかげんな者がいたそうだ。その人はしっかりした人に向かって「私は日本一のことを思いついたぞ」を言った。「どんなことを思いついたのか」と問う。「臼で米をつくのを見ると、下へさがる杵は役に立つと見える。しかし、上へあがる杵が無駄である。だから、上にも臼を釣り、米をつくならば、上下の米をついて、杵の上げ下げが無駄にならないにちがいない」と言い終わらないうちに、すぐれている者「さて、釣り下げている臼に米は入ることはできないだろう」と尋ねると「なるほど、その考えを全くしなかった」と。
【改変古文】
おろそかなる者ありけり。その者、おとなしき人にむかひて「我は日本一のことを思ひつきけり」とぞ言ひける。「何事をか思ひつく」と問ふ。「臼(うす)にて、米をつくをみるに、下へさがる杵(きね)は役に立つと見ゆ。されど、上へあがるきねが、いたづらなり。しかれば、上にも臼を据ゑ、逆様に臼を釣り、米をつかば、上下の米をつき、杵の上げ下げ、あだになるまじと思案したり」と言ひ果てぬうちに、かしこき者「さて、釣りさげたる臼に米、え入らじ」と問へば、「げにそを思案はつゆせず」と。
おろそかなる者ありけり。その者、おとなしき人にむかひて
(いいかげんな者がいたそうだ。その人はしっかりした人に向かって)
中心人物の見抜き方だが多くの場合、最初の人物である。特に今回の場合は確定である。なぜでしょう?
次の一文の出だしが「その者」だから。2文続けて同じ人物が主語だから主人公に決まっているじゃん。これを文脈というのである。文脈をつかむには根拠をもつこと。昔、寝ていた生徒に「どうして解答がエになった!」と聞いて慌てて目が覚めて彼/彼女は言ったね。「文脈だから」。文脈は万能の言葉だと思っている生徒がいること、文脈と言う言葉が漠然と受け止めている生徒がいることを認識した瞬間である。と言いつつ、ひっくり返すが私も高校時代「文脈」という言葉が分からなかった。教師が「文脈からわかるな」という解説をしていたからである。文脈がどうするとわかるか。それを教えねば教える立場にない。根拠を示す、せめて連想できるように教えなくてはいけないと決心している次第である。今回は
指示語は文脈を作る
ということを理解しておこう。
「おろそかなる者」「おとなしき者」は古文単語の意味がわかないとつかみにくい。
おろそかなり いいかげんだ・粗末だ・粗略だ
である。「愚か者」「予習を疎(おろそ)か」「おろおろする」あたりから、推測、連想ができよう。これらの語感で暗記してほしい。これを語源・語感で単語を暗記するという技である。
ついでにセット化するために、
おろかなり いいかげんだ・(女性に対していいかげんだと)愛情が薄い・不十分だ
これも覚えておこう。
「むかひて」は「向かって」。いいかげんな者が「おとなしき者」を相手に話しているということは反対の性質を持った人物ということは推測が付く。
しかし、ここで古文単語「おとなし」を知っていれば上記のように文脈に頼らなくていい。知識は文脈を容易につかませるのだ。
おとなし【大人し】 大人っぽい・思慮分別がある
【 】内の語源で連想・理解しよう。現代語の「おとなしい」に引っ張られない事。こういう単語(今と意味が異なる単語)を古今異義語という。入試ではよく出る。なぜなら古今異義語の意味が分かるのは暗記作業した=努力した証拠だからだ。努力のできる健気な生徒を大学は望むのだ。
「我は日本一のことを思ひつきけり」とぞ言ひける。
(「私は日本一のことを思いついたぞ」を言った。)
「けり」が会話にあるね。前回、
会話中・和歌中内の「けり」は詠嘆
という公式を教えたはず。「だなあ」が代表的な意味だが、ここでは「よ」で詠嘆を表してもいいか、いいよな、な。
「私は日本一のことを思いついたよ」と言った(そうだ)という訳になる。
ここで「ける」って何? と思う人は偉い! そういう疑問が持てるのは古文学習のコツが分かってきた証拠。「ける」は過去の助動詞「けり」の連体形である。普通は文末(。・と・など)の上は終止形である。連体形は、まだ、実感しなくていいが、終止形は「終わる・止まる」の意味なので理解してくれ。
さて、終止形であるはずの部分が「連体形」になってしまう。なぜかというと上に「ぞ」があるからである。ここで有名な「係り結び」が出てくる。一度は聞いたことがあるかもしれないが、要は本来、終止形で終わる部分が「連体形」や「已然形」になるのである。
係り結びは
ぞ・なむ〔強意〕 → 連体形(~u=う段・~き)
や・か〔疑問・反語〕 → 連体形(~u=う段)・~き)
こそ〔強意〕 → 已然形(~れ・~へ・~め・~け)
となる。( )の中は初学者用の説明である。例外はあるし、細かい話をするといくらでもできるが、古文の初学者はこれを理解し、暗記するだけで十分だ。
雨、降る。 (「降る」は終止形)
雨ぞ降る 雨なむ降る 雨や降る 何故か雨降る (線の部分は連体形)
雨こそ降れ (「降れ」は已然形 ✕命令形)
林、うつくし。(「うつくし」は終止形)
林ぞうつくしき。 林なむうつくしき。 林やうつくしき。 いかに林かうつくしき。(「うつくしき」は連体形)
林こそうつくしけれ。(「うつくしけれ」が已然形)
さてさて、愚か者が日本一のことを思いついたそうだ。なんかろくなことをおもいつかない予感がするな。
「何事をか思ひつく」と問ふ。
(「どんなことを思いついたのか」と問う。)
「思ひつく」は何形? 「か」があるから? そう、連体形。意味は疑問。
だから「『何事を思いついたのか』と問う」という訳になる。
ここで「問ふ」を連体形と答えないように。「思ひつく」の部分で文がくぎれているから。「。(句点)・と・とて・など」の直前は文が切れるのである。つまり、普通は終止形がくる。普通はね。
2023-04-29に誤植(?)訂正。及び係り結びに形容詞を付加。
●非常に有意義なオンラインでのLIVEであった。
●プライドの話は耳が痛かった。謙虚に謙虚に。誠実に。
●ゆうきとも師の実際のマジックショーのオーディオコメンタリーが面白かった。
●まくら、伏線、軽口・ジョークを入れる意味などの意味も実感してわかった。
●ジョークを言うわりに意外と意味がないんだよね、ジョークに。小生の場合。
●ちなみに、先の記述「意味など」の「など」が大事。ここにはヒントすら書かない。
●会員になろう、同志よ。
●まあ、ネタばらしにならないように記述する能力が低いだけなんだが。
●5月8日の自分のショーには(たぶん)間に合わないが、いつか計算された、ユーモアのあるショーをやってみたいものだ。
※今回からメモをコクヨの情報カードB6版を使用したらだいぶ見やすくなったよ。
保管もしやすくなった。
●来月の14日に県主催のとある相談会を予約しているんだが、相談会と言っても時間が限られている(たった一時間!)ので少しは予習しておこうかと、図書館へ。
●相談会の資料作りの人に出会ってしまい、そのあたりも準備してくれるそう。
●図書館便利だな。いろいろと手伝ってくれるのなあ。
●その後、久しぶりに台湾水餃子屋さんへ。お店の人にも「お久しぶりですね」と言われるくらいの久しぶり。
食べ放題なんだけど、水餃子は頼まなかった。
●麻婆茄子が意外とうまかった。あと、油淋鶏。春巻き。
●その後、百均へ行くつもりだったが、久しぶりの外出で電池切れを起こしかけていたので、近くの無印良品を軽く見てから映画館へ。
グリーンルイボスティー、意外とうまいな。
●電池切れを起こしかけた中、映画を観たら意識朦朧。寝かける。というか、寝た部分もある。
●ひいきの女優が出たところはしっかり見た。わき役ながら良い俳優に育ったものだ。
●5月8日にクロースアップのボランティアをするのだが、その演目の妄想シリーズである。
●クローズアップの冒頭としてmonthly Magic Lesson DVD VoL210の「マッチング・ホース」を。
「会場の人と『うまがあっている』ようで何よりです」的なオープニングで。
●観客参加型のマジックだから観客に予想外の行動を取られないように指示する練習にもなる。
●今まで純粋にマジックと無縁な人に見せたことがない(妻とマジックを趣味とする友人だけ)作品なので、このあたり、大変だ。
●オープニングをこれにするとトリネタを何にするか、大変そうだねえ。
●これは今月、演じたての作品だから、そこは良いことかな。
●ぃゃ、油断大敵だ。
●特になし。
●と書くところが予定がいくつか入った。
というか、ゴールデンウィーク後の予定が入った。
その準備期間にゴールデンウィークをあてることになったわけだ。
●まずは、5月8日にミニマジックショーである。いつもの施設で実施。
クロースアップマジックができるのが嬉しい。
今まではクリスマス会と、まあ、理由があったのだが、今回はショーを演じる理由がない(^^;)
●まあ、調理実習でちまきを作る予定の日らしいから、端午の節句ということで良いのかな。
●サロンもたまには(マジック自体が「たまに」ですが)演じたいのでオープニングはサロンでいきたい。
●このあたりの妄想は今後の記事にできるかと。
●5月14日に県立図書館でとある相談会の予約に成功。
むこう任せにするだけでは悪いから、こちらも準備をしなくては。
さあ、相談しちゃうぞ!
乃木坂46「君の名は希望」で現代文
あの林修先生が「君の名は希望」を乃木坂46のメンバーの方々に講義されていたということを耳にしたことがある。おそらくは以下の設問のようなことを解説されていると思うんだけど、つまりはダブった内容なんだろうけど、まあ、設問形式にしたことでご勘弁を。使用した当時のプリントに少々、諸事情で手をいれたので、どこか表現がおかしくなってしまっていたら、ごめんなさい。
なお、この教材はアクティブラーニング用に作られている。解説A、Bはそれぞれ別のプリントとして生徒さんに配られることになっている。というか、そうしていた。解説のバージョンAの解説を読んだ生徒さんは解説バ-ジョンBを読んだ生徒さんの問一の解答を採点し、解説の書かれたプリントを見ないで説明する。解答のバージョンBだとそれを問三で行うという要領。採点をすること、解説をすることでかなり実力がつくはず。単に先生の話を聞いたり、解説を読んだりするだけという受け身の授業より国語の経験値があがると思うんだ。国語のアクティブラーニングで悩まれている先生方はこの形式はいかがでしょうか。もし、あったら、こういう形式を自力で作ったということで勘弁してやってください。
また、アクティブラーニングを知らないという方は現在の先生方が、受け身だけで生徒さんに授業をしない工夫をされていることを知っておいていただけたら幸いです。
以下に歌詞の一部が引用されるが、あくまでも引用であり、教育目的です。
【問題】
次の秋元氏の歌詞(部分)を小説として読んで後の問いに答えなさい。なお、行変えなど、一部出題者が行っている。
僕が君を初めて意識したのは 去年の6月 ①夏の服に着替えたころ
転がってきたボールを無視していたら 僕が拾うまでこっちを見て待っていた
「透明人間」
そう呼ばれていた 僕の存在気づいてくれたんだ
厚い雲の隙間に光がさして グラウンドの上 僕にちゃんと影ができた
いつの日からか孤独に慣れていたけど ②僕が拒否してたこの世界は美しい
こんなに誰かを恋しくなる自分がいたなんて 想像もできなかったこと
未来はいつだって新たなトキメキと出会いの場
③君の名前は希望と今知った
わざと遠い場所から君を眺めた だけど時々その姿を見失った
24時間心が空っぽで 僕は一人では生きられなくなったんだ
孤独より居心地がいい 愛のそばで幸せを感じた
問一傍線部①「夏の服に着替えたころ」が象徴していることはどういうことか。七十字以内で書きなさい。
問二 傍線部②「僕が拒否してたこの世界」とは、どのような世界か。
問三 傍線部③「君の名前は希望と今知った」のとはどういうことか。七十字以内で書きなさい。
バージョンA
これは詩として読まなくていい。また、歌詞として読まなくてもいい。出題者は「小説」と言っている。出題者の意向は現代文では優先される。
(入試)小説は物語を読み取ることだと石原千秋氏(早稲田大学教授)がおっしゃっていたような気がする。この小説を物語として語るとこんな感じになる。
「透明人間」とよばれるほど存在感を持っていない主人公が自分を認めてくれる人と出会い、好きになることで自分が確固とした存在になったという物語
問一 傍線部ア「夏の服に着替えたころ」が象徴していることはどういうことか。
【解答】単に衣替えをした時期を指しているのではなくて、クラスになじめなくてつまらない自分の人生全体が変化した時期を象徴しているということ。
【解説】このシーズンを作者が選んだ理由を考えてみよう。なぜ、ひな祭りじゃないのか。クリスマスではないかのか。創作物の季節が設問になっているときには、必ず理由がある(ここを読み取れたことを採点者に示すためにA要素がある)。まず、「夏の服着替えたころ」はクラスになじめたころでもあるはずだ。4月にクラスができ、6月に夏服になることが多いだろう。二ヶ月たっているのだ。ただし、この少年を除いてはである。なにせ「透明人間」なのだ。「そう呼ばれていた」のだ。ここで「クラスのみんなによって」が省略されているわけだ。(ここで解答のB要素が出てくる)。なお、「ころ」を説明するときに今回は「時期」を使用しているが、傍線部そのままを避けるためにそうした。そして、このあとの展開は「拒否してた世界は美しい」というように世界をプラスの存在と感じ、「こんなに誰かを恋しくなる自分がいたなんて 想像もできなかったこと」と「想像もできなかった」自分へ変化するのである。この変化・展開の象徴にふさわしい語句として「着替えたころ」があるのである(ここでC要素が出てくる)。なお、象徴を説明する場合、単にそのものを指しているのではなく、別の意味が隠されているということを明らかにするように書こう。
採点基準
A 単に衣替えをした時期を指しているのではなく
同様の趣旨が書いてあれば2点。
B クラスになじめていず
同様の趣旨が書いてあれば2点。クラスを学校としてもかまわない。
C 自分の人生全体が変化した時期を象徴しているということ。
同様の趣旨が書いてあれば2点。
問二 傍線部イ「僕が拒否してたこの世界」とは、どのような世界か。
【解答】周囲が自分を無視していたので、自分も同様に他者との交流を避けていた現実の世界。
【解説】 「拒否」とはかなり強く拒んでいる様子だよね。そこに理由を読み取って欲しい。「透明人間」と呼ばれていた少年とはクラスなどでどういう扱いを受けていたんだろう。「僕の存在気づいてくれたんだ」と存在を認めてもらうときに「てくれたんだ」という表現を使う少年の気持ちから考えると、解答の前半はわかるだろう。存在を認めていないということを理解しよう。「孤独になれて」いなくてはならなかったのだ。後半は「拒否」を説明することで言い換える。「転がってきたボールを無視していた」のも自分から拒否していたということだ。
バージョンB
これは詩として読まなくていい。また、歌詞として読まなくてもいい。出題者は「小説」と言っている。出題者の意向は現代文では優先される。
(入試)小説は物語を読み取ることだと石原千秋氏(早稲田大学教授)がおっしゃっていたような気がする。この小説を物語として語るとこんな感じになる。
「透明人間」とよばれるほど存在感を持っていない主人公が自分を認めてくれる人と出会い、好きになることで自分が確固とした存在になったという物語
問二 傍線部②「僕が拒否してたこの世界」とは、どのような世界か。
【解答】周囲が自分を無視していたので、自分も同様に他者との交流を避けていた現実の世界。
【解説】 「拒否」とはかなり強く拒んでいる様子だよね。そこに理由を読み取って欲しい。「透明人間」と呼ばれていた少年とはクラスなどでどういう扱いを受けていたんだろう。「僕の存在気づいてくれたんだ」と存在を認めてもらうときに「てくれたんだ」という表現を使う少年の気持ちから考えると、解答の前半はわかるだろう。存在を認めていないということを理解しよう。「孤独になれて」いなくてはならなかったのだ。後半は「拒否」を説明することで言い換える。「転がってきたボールを無視していた」のも拒否していたということだ。
問三 傍線部③「君の名前は希望と今知った」とはどういうことか。
【解答】半年以上、片思いをしていたにも関わらず、新しい感動をこの片思いが与えてくれるので、今までと違って未来に期待感を持てるようになったということ。
【解説】 「今」という時間表現に注目ができたかである。そういえば問一も時間表現の設問であった。設問と設問を関連させて解くとき、実はより客観性のある解答が作れる。なぜなら、本文中に根拠を持てる箇所が増えるのだ。問一が去年の6月ごろを指しているので、今は半年以上たった状況なのである(ここで要素Aが出てくる)。ここで「希望」の中身は直前にある「未来はいつだって新たなトキメキと出会いの場」である。ここを言い直したのが解答のB要素になる。その結果、どうなったのか。問一、問二とも関連するが、この片思い(直後の「わざと遠い場所から君を眺めた」ところから告白もせずに片思いを続けていたことがわかる)は世界を拒否していた「透明人間」である「僕」ではなくさせたのである(ちなみに「僕にちゃんと影ができた」というのは透明人間でなくなったことを暗示している)。そこで解答例の要素Cのように「今までと違って」という要素が必要になるのだ。じゃあ、「今までと違って」どうよ? ってことになる。「君の名は希望」と思えるようになったのである。「希望」の言い換え(説明だから言い換えた方がいい)をする。なお、「君」については「片思い」で説明できているおり、そこは要素AとBでふれているからいい。もし、C要素だけの解答があったら、片思いにも言及していないと減点だ。
A 半年以上、片思いをしていたにも関わらず、 2点
B 新しい感動をこの片思いが与えてくれるので、 2点
- 片思いは一回だけの使用でもかまわない。ABで二回とはかぎらない。例えばB要素で「片思い」の部分が「気持ち」でも良い。
- 新たなトキメキと出会いの場 この部分をほぼ同じように使うとわかりにくいので解釈が欲しいマイナス1点
C 今までと違って未来に期待感を持てるようになったということ。 2点
- 「愛のそばで幸せを感じた」は「希望」がある結果である。「希望」自体は未来への感情であるので、この部分を使用した解答は加算の対象外。ただし、不正解ではない。部分点がもらえないということ。
- 「未来に期待感」は「希望」の言い換えである。
ショートバージョンですが、以下が乃木坂46さんの歌になります。
乃木坂46 『君の名は希望-DANCE&LIP ver.-』Short Ver.