福ちゃんの散歩道

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携帯キャリア3社が販売代理店を 「死活格付け」の横暴、KDDI内部資料で判明! ダイヤモンド編集部 村井令二:記者

2021-08-14 10:00:00 | ダイヤモンド


このニュースに触れて
この様な動きはKDDIだけではないだろう
携帯マーケットが成熟した今日、ショップは多すぎるのが現実
ショップ機能は既存顧客のメンテナンスステーションへと変化している中で
キャリアは全国各エリアで適正ショップ数を描いているだろうから
どの様にショップを再編するか長期的な課題だろう
業務委託というビジネスモデルが諸悪の根源にある
(市場拡大期のインセンティブビジネスで過当競争時代のモデル)
業務委託の指標数値で不振ショップは淘汰する時代に
ある意味で
代理店業務とはその様な宿命業態だと思う


携帯キャリア3社が販売代理店を 「死活格付け」の横暴、KDDI内部資料で判明!
ダイヤモンド編集部 村井令二:記者

携帯キャリア3社とそれらの販売代理店。その奴隷のようなゆがんだ関係の実態については、長らくベールに包まれていた。そこで、ダイヤモンド編集部では、KDDIが販売代理店に示した内部資料を入手。巧妙に代理店の経営を支配する「隷属の構図」が明らかになった。(ダイヤモンド編集部 村井令二)

KDDIが黒字の代理店に身売り持ちかけ
背景に「奴隷のような関係」

「もはや事業を売却してはいかがでしょうか」――。KDDIの担当者から突然の申し出を受けた販売代理店「auショップ」を営む店主はショックを受けた。売却金額まで明記された身売りの提案は、近隣でauショップを運営する別の販売代理店に営業権を引き渡すという衝撃的な内容だった。 もちろん業績不振で経営が立ち行かなくなったのならば、売却もやむを得まい。だが、この販売代理店は黒字の店舗だ。店主は「自分の店の行く末を他人に決められる筋合いはない」と怒りをあらわにする。実は、KDDIがその身売り話を持ち掛けてきた理由は明白だった。 この販売代理店は直前に、KDDIの店舗評価で「Dランク」を付けられていたのだ。KDDIによる店舗評価の最低ランクで、今後は「支援金」が支給されないため、経営が厳しくなってゆくのは明らかだった。 このように、携帯キャリアから「退店勧告」を突き付けられる販売代理店が全国で相次いでいる。販売代理店の経営はキャリアから受け取る支援金に依存しているため「奴隷のような関係」は続く。そのゆがんだ関係は長くベールに包まれていた。そこで、ダイヤモンド編集部では、KDDIが販売代理店に示した内部資料を入手。巧妙に販売代理店の経営を支配する構図が明らかになってきた。

格付け」が握る生殺与奪の権

 内部資料によると、KDDIは3カ月ごとに販売代理店に「auショップ様向け施策」という文書を通達して、全国の販売代理店に支援金の支給方針を示している。

 文書には、携帯電話の新規契約、他社転入(MNP)の新規契約、機種変更など基本的な携帯電話サービスのほか、光回線、電気、都市ガス、インターネット、セキュリティーなど周辺分野のサービス項目が列挙されている。それぞれのサービス項目ごとにポイントを付与し、それを合計した「総合指標ポイント」で、各販売代理店の成績を点数化する仕組みである。

 評価制度の肝は、販売代理店に付与したポイントの成績に応じて、販売代理店を「S、A、B、C、D」の5段階の「店舗ランク」に格付けし、それぞれのランクごとに支援金を決定することにある。

 販売代理店は、高いランクに格付けされれば高額の支援金が支給される一方で、下位ランクに落ちると支援金の支給を止められる。まさしく「死活格付け」だ。

 最低評価のDランクになれば、主要な支援金の対象から外される上、一度でもDを取ると「永年Dランク」として二度と上位ランクに浮上できないという厳しい実態も明らかになった。

店舗減らしの口実か?

 営業成績の悪い店舗が市場から退場するのは当然である。だが、この仕組みの最大の問題は、格付けが「相対評価」であることだ。これによって販売代理店は、いくら営業成績が好調でも、他の店舗の成績がそれを上回ればランクは上がらない。ある販売代理店の経営者は「絶対評価の目標があれば経営計画も立てられるが、相対評価で支援金を決められては収入が読めない」と不満を漏らす。

 もっとも足元では、S~Cランクが相対評価で、Dランクのみポイントが一定基準を下回った場合に格付けされるため「よほどのことがなければDランクには落ちない」(販売代理店)との声がある。だが、この仕組みの変更も予期せず行われるので、販売代理店側の不安が解消されることはない。

 実際に、販売代理店を格付けする基準は頻繁に改正されている。2019年6月ごろまでは、全ての格付けが相対評価で決められていた。これにより当時は、総合指標ポイントが少ない店舗が軒並みDランクになり、全国的に支援金の支給停止が相次いだもようだ。

 冒頭のauショップも、当時の相対評価の基準で永年Dランクに転落した店舗だった。KDDIから事実上の退店勧告を受けた格好だが、複数の販売代理店の経営者からは「KDDIは意図的にDランクの店舗を増やして、全体の店舗数の削減を狙っているのではないか」との疑念が絶えない。

 こうした店舗格付けの仕組みを導入しているのは、KDDIだけではない。NTTドコモとソフトバンクらキャリア3社に共通した仕組みである。

 大手3キャリアの販売代理店が、この支援金に依存せざるを得ないのには理由がある。

 それは、キャリアから仕入れた携帯端末の「卸売価格」が、通信キャリアがインターネットを通じて販売する「直販価格」とほぼ同じに設定されているからだ。

 これにより販売代理店は端末の「小売価格」をキャリアの直販価格に合わせて仕入れ値である卸売価格と同じ水準に設定することになり、粗利を確保できない流通構造になっている。

 もともと販売代理店は、卸売価格に利益を上乗せして販売価格を独自に設定することができるが、複数の販売代理店によると「キャリアから『頭金』を徴収しないよう要請された」との声がある。

 携帯業界でいう頭金とは一般的な意味とは異なり、端末の卸売価格に販売代理店が「独自に上乗せする金額」のことをいう。つまり、販売代理店の裁量で販売価格を設定するれっきとした利益確保の手段だ。

 しかし、キャリアはユーザーに頭金の負担を強いる販売を嫌う傾向にあり、販売代理店の多くは「粗利0円」での販売を余儀なくされている。ますます、販売代理店の経営がキャリアからの支援金に依存する構造が深まっている。

支配構造を解明できるか

 キャリアと販売代理店との「支配と隷属の関係」はむしろ強まっており、販売代理店の現場は疲弊している。

 前出のauショップの施策では、3~5月の評価期間に、月額1万円前後の大容量の料金プランの獲得を重視する方針が示された。だが、販売代理店からは「高齢者など必要のない客にも大容量プランを売り付けざるを得なくなる」との声が噴出している。

 また6~8月の評価期間には、10万円以上の高額なアンドロイド端末と通信契約のセット販売に多くのポイントを付与する施策が示されており、強引な営業につながる懸念が指摘されている。

 過去には、ウオーターサーバーの販売や、オンラインショッピングサイトの売り上げがポイントの評価対象になっていたため、一部の販売代理店では「月額30万~50万円近くの商品を自腹で購入していた」という証言もあった。

 こうしたキャリアと販売代理店のいびつな関係に、監督官庁の総務省と、競争ルールを所管する公正取引委員会がメスを入れ始めた。

 総務省は4月までに、ドコモ、KDDI、ソフトバンクの大手3社の販売代理店に匿名インタビューを実施し、5月25日付で、大手3社の代理店に対する施策の改善を求める指導を行った。

 公取委は6月10日に公表した実態調査報告書で、キャリアによる販売代理店の評価制度が「(優越的地位の乱用など)独占禁止法上の問題となる恐れがある」と踏み込み、16日にはキャリア3社に、販売代理店との取引が独禁法上の問題がないか自主的に点検・改善し、報告するよう求めた。

 総務省と公取委は「卸売価格=直販価格」の問題にも注視することで、足並みをそろえている。

 特に公取委は、「キャリアが販売代理店の端末販売の価格を拘束していると判断される場合は、独禁法上の問題になる恐れがある」と踏み込むとともに、卸売価格と小売価格が同じ価格になるという業界構造について「見直しを行うことが望ましい」と強く迫った。

 これまで携帯電話の料金値下げに注力してきた政府が、キャリアと販売代理店のいびつな関係にメスを入れたのは一歩前進である。

 だが、総務省と公取委は共にキャリア3社に自主的な改善を求めることにとどまっている。今後、複雑で巧妙な「代理店支配の構造」の正常化が十分に進まなければ、もう一段踏み込んだ行政発動に至る可能性もある。






阪神とソフトバンク、「固定資産」の大きな差に見る球団戦略の違いとは 矢部謙介:中京大学国際学部・同大学院経営学研究科教授

2021-04-28 07:48:00 | ダイヤモンド

阪神とソフトバンク、「固定資産」の大きな差に見る球団戦略の違いとは

ビジネスに効く!会計思考力』第2回は、「貸借対照表(B/S)」の読み解き方を解説する。理解を深めるために、プロ野球球団、福岡ソフトバンクホークスと阪神タイガース、そして北海道日本ハムファイターズを例に考えてみよう。各チームのB/Sから見えてくる戦略とは?(中京大学国際学部・同大学院経営学研究科教授 矢部謙介)

貸借対照表(B/S)には
企業の戦略や経営方針が表れる

 今回は、財務三表の一つである貸借対照表(B/S)から、プロ野球球団の戦略について読み解いていく。その前にまずは、B/Sの基本構造についてさっと触れておこう。

 損益計算書(P/L)に比べて、B/Sはとっつきにくいと言う人も多いが、B/SにはP/L以上に企業の戦略や経営方針が表れるものだ。ここでは、まずB/Sの基本構造を理解し、苦手意識をなくしておこう。

 B/Sには、会社がどのようにして資金を集めてきたのか、そしてその資金をどのように投資したのかが書かれている。

BS基本構造

 B/Sの右側に書かれているのは、会社がどのようにして資金を調達したかだ。銀行からの借入金などの負債(いずれ返済や支払いが必要になるもの)と、純資産に分かれている。純資産は株主に帰属する資本であり、返済の必要はない。

 負債は、さらに流動負債と固定負債に分かれている。流動負債は、短期(多くの場合1年以内)のうちに支払いや返済が必要になるもの、固定負債は支払いや返済の期限が長期(多くの場合1年超)のものだ。

 B/Sの左側は、調達した資金の投資先を表し、流動資産と固定資産に分かれている。流動資産には短期(多くの場合1年以内)のうちに現金化される資産、固定資産には短期間では現金化を想定していない資産が分類される。固定資産は、土地や建物などの形のある有形固定資産、ソフトウエアなど形のない無形固定資産、そして短期間のうちに売買することを想定していない投資有価証券などが含まれる投資その他の資産に分けられる。

 さて、B/Sの基本構造についてざっと頭に入れたところで、福岡ソフトバンクホークス(以下、ホークス)と阪神タイガース(以下、タイガース)のB/Sを見てみよう。実は両社には「固定資産」の割合に大きな差がある。固定資産が大きいのはどちらの球団か。そしてその違いの理由とは。

ホークスVSタイガース
固定資産に大きな差

ホークスvsタイガース

 両社の資産における最大の違いは、固定資産の割合の差にある。ホークスの固定資産が96%であるのに対して、タイガースの固定資産は9%にすぎない。上の図ではそれぞれの項目が占める比率を表しているが、実際の金額にも大きな違いがある。ホークスの固定資産は、1066億7400万円も計上されている一方、タイガースの固定資産は17億3900万円だ。

 なぜこのような差が生じているのか。種明かしをする前に、同じプロ野球球団である北海道日本ハムファイターズ(以下、ファイターズ)の2018年12月期と2019年12月期のB/Sを比較してみよう。

ファイターズ

 これによると、2018年12月期に21%にすぎなかった固定資産が、84%にまで増加している。それに伴って、流動資産は79%から16%に減少している。

 これを金額で見てみると、次のようになる。

流動資産:91億1500万円→19億5500万円(71億6000万円の減少)
固定資産:24億4200万円→102億4700万円(78億500万円の増加)

 ファイターズが公開しているB/Sには流動資産や固定資産の内訳は表示されていないが、おそらく流動資産に計上されていた現預金や運用資産を、固定資産に投資したのではないかと推測できる。

 では、その固定資産の投資先とは何なのか。

プロ野球球団が球場を
保有したい理由

 その答えは、「新球場建設計画」だ。ファイターズは、総工費約600億円をかけて北海道北広島市に「北海道ボールパーク」を建設し、2023年3月の開業を目指している。

 ファイターズは、今回の新球場建設計画を実行に移すにあたり、球場運営などを行う新会社「ファイターズ スポーツ&エンターテイメント」を設立しており、この新会社の筆頭株主(出資比率34.17%、2021年3月末現在)となっている。出資の金額は約82億円だから、先ほどの固定資産の増加分はこの新会社への出資を通じて新球場建設に投じられていたと推測できる。

 同じくホークスの固定資産が大きいのも、球場を保有していることがその理由だ。ソフトバンクは、2012年に本拠地である福岡ヤフージャパンドーム(現福岡PayPayドーム、以下福岡ドーム)をシンガポール政府投資公社から870億円で買い取っている(2012年3月24日付日本経済新聞朝刊)。この所有権が計上されているため、ホークスの固定資産はこれほどまでに大きくなっているのだ。

 ではなぜ、プロ野球球団は球場を保有したいと考えているのか。それは、球場の施設利用料削減が見込めることに加え、球場を核とした事業展開によりファンサービスを拡充し、そこでの収益も確保できるからだ。

 ホークスに関する前出の記事によれば、福岡ドームを取得する前の年間使用料は約50億円。この費用削減分を戦力強化に振り向けることで、年俸の高い選手を獲得しやすくなったといわれている。

 ファイターズの現在の本拠地は札幌ドームだが、この札幌ドームの使用料は年間15億円ほど。しかも、球団関係者によれば「こちらの都合で改修ができず、グッズ販売や飲食店運営も不可。親会社、日本ハムの商品さえ自由に売れない」(2016年5月24日付日本経済新聞地方経済面)というのだ。年間施設利用料が重荷になっていたこと、球場運営の自由度が低いことが、新球場建設の動機なのではないだろうか。

「甲子園球場」は
どこが所有しているのか?

 新建設のボールパークでは、周辺にサウナ&スパやホテル、グランピング施設やアリーナ、レストランなどを設置し、教育施設や住宅なども建設する構想だとしており、球場以外の施設からの収益も見込める。それが、ファイターズが新球場建設に乗り出した狙いなのだ。

 現在は、コロナ禍において球場への入場客数が制限される状況が続いているが、コロナ禍が収束すれば、球場と球団を一体で運営することの効果は大きい。そのため、球場と球団の一体経営により戦力と顧客満足度の双方を高めていくというのが、プロ野球球団経営のトレンドになっている。

ところで、タイガースの固定資産は総資産の9%にすぎなかったことから、球場を自社所有しているようにはみえない。では、タイガースの本拠地である甲子園球場の所有者は誰なのか。

 その答えは、タイガースも所属する企業グループの統括会社である阪急阪神ホールディングスの有価証券報告書にある。タイガースの本拠地である甲子園球場は、球団の親会社である阪神電気鉄道(阪神電鉄)の所有となっているのだ。

 甲子園球場の帳簿価格は土地と建物を合わせて500億8300万円だが、これらは球団であるタイガースではなく、阪神電鉄のB/Sに計上されていたわけだ。この甲子園球場の運営について、2020年3月期の有価証券報告書では、「阪神甲子園球場では、飲食・物販店舗において、選手関連商品が好評を博したほか、飲食メニューの一層の充実を図るなど、魅力ある施設運営に取り組みました」と述べられている。タイガースにおいては、球団と球場の一体運営が、すでに親会社の視点から実施されていたのである。

*次回は5月12日(水)に配信予定です。

矢部謙介(やべ・けんすけ)/中京大学国際学部教授。ローランド・ベルガーなどを経て現職。マックスバリュ東海社外取締役も務める。Twitter(@ybknsk)にて、決算書が読めるようになる参加型コンテンツ「会計思考力入門ゼミ」を配信中。著書に『武器としての会計思考力』『武器としての会計ファイナンス』『粉飾&黒字倒産を読む』(以上、日本実業出版社)など。
https://twitter.com/ybknsk

三菱重工・川崎重工・IHIの航空3重工、「ボーイングショック」からの一抜けは?

2021-04-22 07:40:00 | ダイヤモンド


三菱重工・川崎重工・IHIの航空3重工、「ボーイングショック」からの一抜けは?

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ボーイング依存が強い機体製造事業で
不安がくすぶっている理由



 日本の航空機産業がなかなか復調しそうにない理由は、しごく単純だ。いくら足元で需要が上向いてきたといっても、コロナ禍以降、旅客需要そのものは大きく落ち込んできたからだ。

 国際航空運送協会(IATA)によれば、20年の旅客需要(有償旅客を輸送した距離を示すRPKベース)は19年比65.9%減と、航空史上最も急激な減少を記録した。さらに、コロナの感染拡大の波が各国に断続的に押し寄せていることなどから、旅客需要がコロナ発生前の水準に戻るのは、実に3年先の24年になるとの見方が専らだ。

 つまり、「エアラインが航空機の数を増やすほど旅客需要が回復するのは、まだまだ先だ」(航空機業界幹部)ということだ。特に、エアラインはコロナによる業績悪化で財務が傷んでいる。老朽化した航空機の更新には一定程度対応する必要があったとしても、航空機の新規発注にはしばらく慎重にならざるを得ない。

 エアラインに「機体発注の様子見傾向」があることは、完成機メーカーの機体製造計画を見れば明らかだ。例えば、20年に14機から10機に縮小されたボーイングの中型機「787」の月産レートは、21年にさらに5機にまで引き下げられた。

 それでも、日本のジェットエンジン生産の60~70%を担うIHIを筆頭に、航空3重工全てが手掛ける民間航空機エンジンの分担製造事業は、「まだ戻りが早そうだ」(航空機エンジンメーカー幹部)。

 航空機エンジンは基本的に、新造エンジンの納入ではなく、定期的に行われる高利益率のメンテナンスでもうける事業だからだ。旅客需要が持ち直して航空機の稼働が上がれば、それだけ収益が取り込みやすくなる。

 問題は、航空3重工の中では三菱重工と川崎重工が手掛ける民間航空機体の分担製造事業の方だろう。こちらは、完成機メーカーによるエアラインへの機体納入数が増えないことには収益が上がらない。

 しかも米ゼネラル・エレクトリックや米プラット・アンド・ホイットニー、英ロールス・ロイスを通し、ボーイングと欧州エアバスの両社の機体に搭載されている航空機エンジンと違って、機体の分担製造は日本の場合、ボーイングへの依存が強い。

 そのボーイングには20年、エアバス以上に逆風が吹き荒れた。コロナ禍による航空需要の蒸発はもちろん、18年と19年に2度の墜落事故を起こした小型機「737MAX」の運航停止などが重くのしかかった形である。

 ボーイングの20年の機体納入数は、エアバスの3割弱にまで落ち込んだ。同年12月期の最終赤字額は、なんと1.2兆円。次世代大型機「777X」についても開発の後ろ倒しを余儀なくされており、その分担製造を請け負う日本勢も影響を免れない状況にある。

 その上、「コロナ終息後の機体は、ボーイングよりエアバスに強みのある100~220席くらいの小型機がトレンドになるといわれている」(経済産業省幹部)。小型機はエアラインにとって導入コストが安い。最近は技術的な進歩によってある程度長い航続距離を確保できるようにもなっており、小型機の方がリーズナブルだと受け取られる可能性が高いのだという。

 ボーイングの中大型機と共に歩んできた三菱重工と川崎重工にとって、「小型トレンド」は今後の懸念材料だ。

 ただし、そんなボーイング依存の2社ですら、会社全体の将来業績はボーイングの浮沈のみでは測れない。確かに、航空3重工にとって民間航空機関連ビジネスは重要な収益源となっている。しかし、3社は祖業の造船業から百数十年をかけて多角化を遂げており、事業範囲がとてつもなく広いのだ(下図参照)。





 では、会社全体として「ボーイングショック」から“一抜け”する航空3重工とはどこか。

航空3重工の“本業”って何?
業績を左右するキー事業とは

 短期的に見れば、三菱重工とIHIは旅客需要の急減をまともに食らった21年3月期であっても、ボーイングショックをくぐり抜けて黒字確保の見込みを出す勝ち組だ。

 まず三菱重工は、そもそも“本業”がガスタービンなど、発電に関わるエナジー(エネルギー)事業だということが大きい。国産初のジェット旅客機「三菱スペースジェット」事業を除けば、実のところ事業損益全体に占める民間航空機関連ビジネスのインパクトは、それほど大きくないのだ。

 そのため、他の2社と同様に機体や航空機エンジンの分担製造事業で打撃を受けても、本業が稼ぎ出す利益で跳ね返すことができる。

 三菱重工の成長エンジンも、明らかにエネルギー事業中心に移行した。何しろ昨秋には、7000億~8000億円を投じてきたとされるスペースジェットの開発活動を、事実上凍結する決断まで下している。世界的に押し寄せる脱炭素の潮流に対応し、グリーン社会の実現に関わる「エナジートランジション(エネルギーの移行)」新領域に経営資源を集中させようというわけだ。

 具体的には、火力発電設備におけるCO2削減に向けた人工知能の活用、CO2回収事業の拡大、水素の製造、あるいは水素やアンモニアを燃料とするガスタービンの開発などに取り組む。こうした脱炭素分野への“種まき”と“水やり”を、この数年間で構築してきた盤石な財務基盤を背景に徹底的に実行する。目指すは24年3月期に500億円、31年3月期に3000億円の売り上げ規模だ。

 一方のIHIは、事業ポートフォリオ上、民間航空機関連ビジネスの損益インパクトがかなり大きい。しかし、16年~19年で選択と集中や事業構造改革を断行したこともあり、21年3月期は各セグメントが踏ん張る。

 ボイラー事業で利益率の高いライフサイクル(保守や修理、部品交換など)案件を取り込めた他、第2次世界大戦前から保有し、元は造船所だった広大な豊洲地区(東京都)の賃貸収入の増加などにも成功している。賃貸収入は当初、コロナ禍によるテナントの撤退が案じられたものだが、結果的には20年3月に大規模複合施設「豊洲ベイサイドクロスタワー」を竣工したことが追い風となった。

 今後は民間航空エンジン事業を柱にしながら、ライフサイクル案件の強化といった取り組みを全社的に加速させて利益を積み上げていくことになる。

 残る川崎重工は、民間航空機関連ビジネスに加えて車両、船舶海洋セグメントも振るわず、航空3重工で唯一、21年3月期の業績が赤字に沈む見通しだ。北米におけるレジャー向け二輪車の需要増や中国における油圧機器の販売増などによって業績は持ち直しつつあるものの、橋本康彦社長の危機感は強そうだ。

 20年6月に社長に就任するや、注力フィールドとして「安心安全リモート社会」「近未来モビリティー」「エネルギー・環境ソリューション」を設定。それぞれのフィールドに向けてロボット、ヘリコプター、商船などのノウハウを展開することにより、これまでの事業領域に捉われない柔軟な収益拡大体制の構築を急ピッチで進めている。

 そのために、車両カンパニー(鉄道車両事業などを展開)の分社化といった組織の大改革にも動きだしている。とりわけ、4月に行った旧船舶海洋カンパニーと旧エネルギー・環境プラントカンパニーの統合は、脱炭素で需要拡大が見込まれる水素事業の強化に直結する注目施策といえる。

 水素事業といえば、国土交通省を通して液化水素を海上輸送するための国際ルール作りに動くなど、川崎重工が10年来こつこつと拡大してきた同社の“虎の子”だ。新カンパニーは、30年に売上高1200億円、40年に同3000億円という目標を着実に達成し、水素事業を会社全体の収益の柱にするミッションを中核的に背負うことになる。

 大きく戦略転換に舵を切る三菱重工、川崎重工と、既存戦略のブラッシュアップをもくろむIHI。重厚長大産業に携わる航空3重工は、良くも悪くもどっしり構えて各種ビジネスに対峙する。K字の勝ち組なのか負け組なのか、本当の答えは、10年後にようやく見える。


NTTが仕掛けた携帯値下げの茶番劇、最後に笑うのはドコモら「3キャリア」という大矛盾・・・

2021-04-10 10:00:00 | ダイヤモンド

官製 値下げの顛末=菅政❓値下げの顛末

ダイヤモンドニュースから


NTTが仕掛けた携帯値下げの茶番劇、最後に笑うのはドコモら「3キャリア」という大矛盾




菅首相の携帯料金値下げの政策に応じてドコモが仕掛けた値下げは、KDDIとソフトバンクの追随を呼び、大手3キャリアの寡占が一段と強まりつつある。

 もともと総務省が進めていた携帯料金の引き下げ策は、大手3キャリアと楽天の4社体制に加え、MVNOの各社を巻き込んで競争を促進させる方向で進められてきた。価格・サービス競争の活性化で消費者へ利益が還元されることが、そもそもの値下げの狙いだったはずである。

 だが、大手3社のみをターゲットにした価格引き下げで競争が停滞すれば本末転倒だ。これでは、最後に笑うのは消費者ではなく3キャリアのみということになってしまう。

 20年9月の菅政権の誕生とともにアクセルを踏み続けてきた総務省は、4月以降の携帯料金値下げによる弊害をよく注視して、競争構造の立て直しに向けて早期に手を打つ必要があるだろう。

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ドコモ再編と携帯値下げ「バーター取引」の真相、NTT・菅官邸・総務省の一蓮托生

2021-04-08 06:00:00 | ダイヤモンド

ドコモ再編と携帯値下げ「バーター取引」の真相、NTT・菅官邸・総務省の一蓮托生

総務省とNTTとの間で行われた
2カ月に及ぶ「密室協議」の謎

 NTTは、政府が3分の1以上を出資する特殊法人だ。NTT法に基づき、総務省が取締役の選任の認可権を持つほか、毎年3月には事業計画の認可を受けなくてはならない。 同時に、年度の途中で計画が大きく変われば「変更」の認可を得なければならないこととされているが、NTTは今回のドコモ完全子会社化で事業計画の変更を申請しなかった。総務省が「必要ない」と判断したためだ。NTT法に基づく認可手続きを免除した格好だが、その判断に至ったのはなぜなのか。 国会答弁で、総務省の竹内芳明・総合通信基盤局長は「ドコモは従来からNTTの連結子会社で、完全子会社化されたとしてもNTT法が求める業務が変わることはなく、責務の遂行に影響を与えることはない」「昨年7月にNTTから説明を受けて、その後に詳細なやりとりを行って、9月の時点で変更の認可は必要ないと判断した」としている。 だが、NTTにとって4兆円もの資金を投じる巨額買収だ。NTTは99年の分割・再編に伴って同年度の事業計画を変更して認可を受けたことがあるが、今回はそれに次ぐほどの再編である。

 国会で、この問題を指摘した立憲民主党の小西洋之参議院議員は「これだけのインパクトがあるドコモの完全子会社化について、本当に事業計画の変更の認可手続きが必要なかったのだろうか」と疑問を投げ掛ける。 果たして、2カ月もの長きにわたって、閉ざされたプロセスで総務省とNTTがどんなやりとりを交わしたのか。波紋が広がっている。

課長更迭事件で総務官僚は戦慄
菅首相と総務省の「恐怖支配の構図」

 菅義偉首相の長男が在籍する放送事業者の東北新社による高額接待はNTTに波及した。総務省とNTTの「蜜月」関係に疑いの目が向けられているが、接待問題が泥沼化するとともに、総務省が抱える深い闇もあぶり出されてきた。 発覚すれば処分を免れない高額接待に総務官僚が相次ぎ応じた理由について、ある総務省関係者は「総務省で菅氏の存在は絶対だ。東北新社の創業者と菅氏の関係が近いことは誰でも知っている。特に菅氏の長男に誘われたら断れない」という恐怖心に支配されていたことを明かす。 この関係者によると、菅氏と総務省の支配関係は、菅氏が第1次安倍政権で総務相を務めたときから始まった。当時の菅総務相が総務官僚に衝撃を与えたのが、菅氏の方針と異なる発言をしたという理由でNHK担当課長を更迭した出来事だ。「朝出勤していた課長が夕方にはいなくなった」という見せしめ効果で、気に入らなければ人事権を容赦なく行使する菅氏に総務官僚は戦慄した。

 菅氏の総務相就任は06年9月から07年8月までのわずか1年だったが、以降も総務官僚は菅氏に人事や政策の事前報告を欠かさず、支配関係は続いた。「意向に反すると何をされるか分からない怖さがあったので、他の大臣経験者よりも圧倒的に手厚いフォローだった」(前出の総務省関係者)という。

 12年に第2次安倍政権が誕生して菅氏が官房長官に就任すると、総務官僚の菅氏への服従姿勢は一段と強まる。14年に設置された内閣人事局で国家公務員の人事が一元化されて全省庁の官僚人事を菅氏が握ったが、それ以前から総務官僚の人事は菅氏に完全に支配されてきた。第2次安倍政権が長期化するとともに、遂に総務官僚にとって菅氏は絶対的な恐怖の対象になった。

菅政権の意向を
過剰に忖度するNTT

 この恐怖の支配構造の中で総務省は、18年8月に一つの節目を迎える。当時官房長官だった菅氏が札幌市内の講演で「携帯料金は4割引き下げる余地がある」と発言したのだ。菅氏は、その1カ月前の7月に人事の手も打っていた。情報通信政策の第一人者である谷脇氏を、携帯電話を所管する総合通信基盤局長に充てたのだ。谷脇氏は、菅総務相時代に携帯電話政策に携わり、07年にまとめた報告書で「携帯と通信料と端末代金の分離プラン」の方針を打ち出して、携帯業界にその名を轟かせた。

 当時、ガラケーと呼ばれたフィーチャーフォンは「0円端末」が当たり前だったが、この分離プラン政策によって端末販売が減少して「谷脇不況」と呼ばれる現象を引き起こしている。そうした影響力のある人物を菅氏が起用したことは、料金値下げに向けた強い意思の表れに他ならない。当時の野田聖子総務相も「少しでも安くしてほしいというエールを頂いた」と同調したが、総務官僚の視線は、野田氏を飛び越えて菅氏に向いた。

 これとほぼ同時期に菅氏はもう一つの布石を打った。前述の通り、NTTの取締役人事は政府の認可事項だ。菅氏の人事介入で、18年6月にNTTの社長に就任したのが澤田氏だった。澤田氏の前任は、人事・労務畑出身の鵜浦博夫氏。NTTの株価を3倍に引き上げるなど大きな実績を残した鵜浦氏は会長となって総務省との窓口を務めることが確実視されていたが、澤田氏の就任とともに発表された役員人事は、鵜浦氏が相談役に退き、副社長だった篠原弘道氏が会長になるという異例の体制だった。この背景を探ると、15年に安倍晋三首相が高市早苗総務相に携帯料金の値下げを指示したことにさかのぼる。当時NTT社長だった鵜浦氏は協力する姿勢を見せずに値下げは実現しなかった。この経緯を問題視した菅氏の介入で、鵜浦氏の会長就任が拒否されたとみられている。

 こうして政府との交渉役になった澤田氏は、政権の方針である携帯料金の値下げに配慮せざるを得なくなった。結果として、菅氏に絶対服従する総務省と、政権の意向を忖度するNTTという“鉄壁”の構図が出来上がったのだ。

NTT分割で衝突した
谷脇氏と澤田氏の因縁

 携帯料金の値下げと、ドコモの完全子会社化を巡り、菅氏、谷脇氏、澤田氏の個人的な関係も見逃せない。

 96年に決着したNTTの分割・再編の当時、谷脇氏は総務省の事業政策課の課長補佐として交渉に加わっていたが、当時、NTTの秘書課長を経て、再編成室に配属されていた澤田氏は、NTT側で分割反対の論陣を張っていた交渉相手だった。

 第1次安倍政権で菅総務相の信頼を厚くした谷脇氏は、前述の通り、携帯料金値下げの推進役に抜てきされ、同じタイミングでNTTの社長に就任した澤田氏と再会した格好だ。

 歴史的に総務省は、NTTを分割して競争を促進する政策を採ってきたが、それに抵抗してきたNTTにとって99年の分割・再編は、反対運動に敗れた結果として押し付けられた屈辱との意識が根強い。

 NTTの歴代社長はグループ再統合にこだわり続けたが、18年に就任した澤田氏にとっても悲願だ。こうして「菅案件」である携帯料金値下げの命題を課されて、澤田氏のNTT社長就任と同時期に総合通信基盤局長に就任した谷脇氏は急接近することになった。

携帯値下げとドコモの子会社化
「バーター取引」疑惑の核心

 それでは結局、NTTにとって業績悪化を招く懸念のある「携帯料金値下げ」と悲願の「ドコモの完全子会社化」はバーター取引だったのか。ここからは、事実関係と取材を基にその疑惑に迫ってみたい。

 まずは、携帯料金値下げの動きを時系列で追ってみる。

 18年9月に行われたNTTの澤田氏と鵜浦氏による接待は、菅氏が「4割値下げ」に言及した直後に当たる。この場での会話について谷脇氏は国会の答弁で「携帯電話の話も出るのは自然」と認めた。

 この接待会合の後、澤田氏は持ち前の行動力で携帯料金の値下げにまい進した。NTTドコモの社長を務めていた吉澤和弘氏に対し「思い切った値下げ」を指示。ドコモは10月31日の決算発表の場で「携帯料金の2~4割値下げ」を表明するに至った。

 実は、澤田氏は「この頃には、すでにドコモの完全子会社化が念頭にあった」と証言している。谷脇氏の接待で、ドコモ再編の話を持ち出したのかどうかは不明だが、これまでの事実関係を積み重ねれば「携帯料金値下げとドコモ完全子会社化のバーター取引の密約があったのでは」とする疑いが出てくることは不自然ではない。

 いずれにしても、その後の携帯料金値下げに向けた総務省の動きも速かった。翌19年5月10日には、携帯電話の通信料金と端末代金の完全分離を義務付ける改正電気通信事業法が国会で成立。これにより谷脇氏が菅総務相の時代から研究してきた分離政策が、ついに法律化されて、揺るぎない政策となった。

 この法律を基に、総務省は19年6月18日、携帯電話の2年契約を途中解約する際の「違約金」を従来の9500円から1000円に引き下げて、スマートフォンなど端末の値引きの上限を2万円に制限する方針を提示。それまでの総務省と携帯事業者の議論を無視するかのように唐突に示された方針に、携帯業界の誰もが菅氏の影を感じ取った。

 次に、ドコモの子会社化の動きを見てみよう。

 NTTがドコモの完全子会社化に動いたのは20年4月のことだ。澤田氏が、当時のドコモ社長の吉澤氏に打診したことで本格的な協議が始まった。NTTはドコモの完全子会社化の方針を、同年7月に総務省に伝えており、その後の9月29日に公式発表している。

 同時に、武田良太総務相と公正取引委員会の菅久修一事務総長は、そろって「NTTによるドコモの出資比率の引き上げ」を容認する方針を表明した。過去約30年にわたって、政府はNTTのドコモ出資の引き下げ方針を主張してきたにもかかわらずだ。すでに政府内の足並みがそろっていたことで、12月にNTTグループは、悲願だったドコモ完全子会社化をいとも簡単に実現してしまった。

 そして、同じ12月にNTTは月額20ギガバイトの容量で2980円という、当時としては衝撃的な携帯料金値下げプラン「アハモ」を発表し、菅氏の意向通りに携帯料金の値下げの先導役となった。

 ここで、いみじくも同時期に携帯値下げとドコモ完全子会社化が結実するのである。時系列の系譜だけを見れば、偶然にしては出来過ぎであろう。

 その後に明らかになった接待問題で、次期事務次官の就任が確実視されていた谷脇氏は責任を取り辞職。澤田氏と谷脇氏との間で交わされた詳しいやりとりはやぶの中だ。それでも、菅氏が指示した携帯料金値下げの政策は、配下に置く総務省のみならずNTTも巻き込んで、ドコモ完全子会社化という形で実現した事実だけが残った。

 ある通信業界の関係者は言う。「総務省が菅氏ばかりを見て政策を決めてきたのは分かっているし、NTTと総務省の不透明な関係は誰もが感じていた。この際、全てを断ち切った方がいい」。菅官邸、総務省、NTTの“癒着”関係の浄化が必要なことだけは確かである。