波紋

一人の人間をめぐって様々な人間関係が引き起こす波紋の様子を描いている

「新東京物語」③

2021-03-23 09:35:58 | Weblog
壱穂は困惑したが親友の頼みとあって断ることも出来なかった。許嫁の相手の家は岡山市の高級住宅地の一角にあった。何しろ親は軍隊の立派な偉い人とあってお屋敷である。家には三人の姉妹と両親で住んでいた。相手は長女でカソリックの信者で聖歌隊のメンバーでピアノをたしなむ子女であった。
壱穂は恐る恐る訪問しその趣旨をつたえた。泣かれたりするかとも思っていたが、話はすっかり変わっていった。壱穂は思わぬ歓迎を受けて、もてなされその家で歓迎されたのだ。そして何時の間にかその娘と壱穂はすっかり良い中になっていたのである。壱穂もまんざらではなかったらしく何時の間にか二人は付き合うようになっていた。(女心と秋の空)ということわざもあるが、果たして二人の結びつきに何があったのか、それはふたりにしかわからない。やがて二人の関係は佳子の耳にも入ることになり、美継も知るところとなった。明治の古い教育と厳重な家庭で育った二人にとって大事な長男の結婚は最大の問題であった。当然相応しい嫁を迎え跡を継がせることを考えていたところ、若い二人から結婚の意思を知るところとなり、それは青天の霹靂となってしまった。とりわけ佳子にとってはかわいい息子を泥棒猫にとられてしまったように激怒することになる。
当然それは許されることではなく二人はその権幕を知り、話は大義絵になりそうになってしまった。佳子は三人の息子を育てているうちに何時の間にか息子たちをわがものしている気持になっていて自分の意志通りにする傾向にあったが、この事件をきっかけに一段と感情が高ぶり始めていた。当然二人の結婚は許されることなく、破談とするように言われたが、二人の気持ちはさらにつりょくなるばかりであった。そんな若い者の姿を美継は静かに見守るばかりであった。

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