きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

東日本大震災と日本経済の課題③・④

2011-04-16 23:18:28 | 震災・災害・復興・地震&災害対策など
東日本大震災と日本経済の課題③・④

引き続き、東日本大震災から復興・復旧していくため日本経済に何が求められるか。どういう方向に転換が必要か。
識者のメッセージを掲載する。
「しんぶん赤旗」からだ。



復興へ内部留保を活用
中央大名誉教授 今宮謙二さん

 東日本大震災の被害額について、内閣府が最大で約25兆円という試算を出しました。でも、放射能汚染の被害などを考えると、それ以上に大きな被害が出る可能性があります。
 今回の津波は、東北地方の商業、農業や漁業などに大打撃を与えています。多くの工場も失われました。国民生活への影響は計り知れません。そして、原発事故による電力不足の問題です。消費は伸びず、生産も低迷し輸出も振るわなくなるでしょう。日本経済全体が大きく停滞し、景気もいっそう悪くなると思います。
 しかも、今回は、日本経済だけでなく世界経済にも大きな影響を与えました。被災地で電子部品関係や自動車部品関係が被害を受け、世界のメーカーにも影響を与えました。
 金融市場でも、波乱が起きました。震災直後に円相場は1ドル76円台に高騰しました。株価も10%以上下落し、世界的にも同時株安が発生しました。その後、金融当局による国際的な協調介入が行われています。株式市場もやや安定した状態を維持していますが、今後どうなるかは分かりません。混乱を通じて行われる投機取引についても、厳重な監視が必要です。

再建二つの課題
 大震災下の日本経済を再建するには、二つの課題があります。
 一つは、何といっても緊急の課題である国民生活の再建です。住宅、暮らし、仕事など、国が責任をもって直接補償することが必要です。そして二つ目は、地域経済の再建です。地元の商店や中小企業、農林漁業などの再建を含め、新しいまちづくりをどう進めていくかが非常に大事です。
 復興財源を確保するためには、大型の補正予算が必要になります。「思いやり予算」や不要な公共事業、法人税引き下げや大企業優遇税制措置などをやめ、2011年度の予算を全面的に組み替えることが必要です。
 震災復興のための国債発行もやむを得ないと思います。日銀にすべて引き受けさせろという声もありますが、それには問題があります。従来の国債とは別枠で発行して、莫大(ばくだい)な内部留保を持っている大企業に引き受けてもらうというやり方がいいと思います。復興税という考え方も提起されていますが、国民に負担増を強いれば、ますます景気が悪くなります。
 政府は、金融機能強化法などを利用し、被災者に対し、金融面での全面的支援を行う必要があります。金融当局は、中小企業の営業、農林漁業の再生、そして国民の暮らしのために、金融機関が適切に融資するよう監視することも必要です。

根本的な転換を
 今回の福島原子力発電所の事故は、天災ではなく、明らかに「人災」です。東京電力の問題だけでなく、政府のこれまでの原子力政策そのものの破綻がはっきり表れました。輸出依存型大企業体制というゆがんだ日本経済の構造には、大企業中心の原子力行政があります。エネルギー政策を根本的に変え大企業中心体制にメスを入れることが必要です。
(聞き手中川亮)(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2011年4月8日付



“安全な街”国は責任を
奈良女子大学大学院教授 中山徹さん

 東日本大震災の影響は被災地だけでなく全国的な広がりを見せています。私の住む大阪でも、中小業者の方から部品や資材が足りず仕事ができないという声を聞きます。中小企業は今でも大変厳しい状況です。今後、一層悪くなっていくのではないかと懸念しています。
 東京電力福島第一原子力発電所の事故は、深刻な状況が続いています。これから先どうなるかという展望が見えません。この状況が長引くもとで、消費も全体的に落ち込んでいます。「風評被害」も拡大しています。政府は的確な情報と将来の予測をしっかり示す必要があります。

地域の実情考え
 復興については、阪神・淡路大震災のときとは違った対応が求められます。阪神・淡路大震災の人的被害の8割は建物の倒壊によるものでした。復興に際しては、耐震性の高い建物をどうつくっていくのかが最大の課題になりました。それに対応するのも基本は個人でした。
 ところが、今回の津波被害というのは、都市が根こそぎつぶされてしまっているわけです。今後も起こりうる地震・津波に対する安全の確保が大きな課題になってきます。それは、個人ではできないことです。この点では、どういう街をつくっていくかという、住民本位の復興ビジョンが決定的に重要です。
 海岸線に人が住むということを前提にした場合、どのような安全対策が必要か。どのような防潮堤を造るのか。緊急時の避難場所の設置をどうするか。住宅の耐震性の強化や安全基準の見直しも必要でしょう。いずれにしても、地域の実情に応じた安全な街づくりの基本的方向を国は責任をもって住民に示す必要があります。一律ではうまくいきません。
 壊滅的な被害を受けた農林漁業の再生も大きな課題です。農業や漁港の基盤整備を一からつくり直すことが中心になります。
 こういう時期に、国内の農業・漁業を成り立たなくする環太平洋連携協定(TPP)に参加するというのは無理です。TPP参加はやめるべきです

防災に重点的に
 復興に向け、公共事業のあり方も問われてきます。自民・公明政権下の小泉「構造改革」路線以来、公共事業を三大都市圏を中心に集中させてきたこれまでのやり方は変えなくてはなりません。不要不急の大型事業は当面やめるべきです。そのお金を被災地の復興と学校や病院など公共施設の耐震や防災に重点的に配分することが必要です。
 今回の大震災では、各地の観光地も大きな被害を受けました。災害時に観光客の安全をどう確保するかということを考える時です。観光は被災地の経済再生という点でも大切な要素です。外国人観光客も増えています。外国人に「日本は防犯面の安全性は高いが防災面ではそれほどではない」と見られることは国益になりません。防災面でも安全な日本をつくっていかなければなりません。
(聞き手矢守一英)(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2011年4月9日付


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