がんの予防や治療における漢方治療の存在意義を考察しています。がん治療に役立つ情報も紹介しています。
「漢方がん治療」を考える
434) β-カリオフィレンのカンナビノイド受容体CB2活性化作用
図:カンナビノイド受容体タイプ2(CB2)はGタンパク質共役型受容体(7回膜貫通型受容体)で、リガンドが結合すると三量体のGタンパク質の活性化を介して、特有のシグナル伝達経路によって抗炎症作用や鎮痛作用や抗がん作用などの作用を示す。黒こしょうなどの香辛料や大麻草の精油に多く含まれるβ-カリオフィレンというセスキテルペンはCB2の選択的アゴニストであることが報告されている。
434) β-カリオフィレンのカンナビノイド受容体CB2活性化作用
【医薬品の半数くらいがGタンパク質共役受容体をターゲットにしている】
2012年のノーベル医学・生理学賞はiPS細胞を発見した山中伸弥教授らが受賞しましたが、同じ年のノーベル化学賞は「Gタンパク質共役型受容体」の研究でデューク大学のロバート・レフコビッツ(Robert J. Lefkowitz)教授とスタンフォード大学のブライアン・コビルカ(Brian K. Kobilka)教授の2人でした。
Gタンパク質共役型受容体(G protein coupled receptor : GPCR)は細胞膜を7回貫通する特徴的な構造から7回膜貫通型受容体とも呼ばれている細胞膜の受容体で、光・匂い・味などの外来の刺激や、神経伝達物質・ホルモン・イオンなどの内因性の刺激を感知し、細胞内に伝達するはたらきをしています。
GPCRに分類される細胞膜受容体を作る遺伝子は1000種類以上が見つかっており、細胞膜受容体の最大のグループを形成しています。
GPCRは細胞機能に重要な役割を果たしているので、GPCRを介するシグナル伝達系に関する研究では以前にもノーベル賞(医学・生理学賞)が与えられています。
例えば、Gタンパク質を介するセカンドメッセンジャーのcAMPの発見(1971年)、Gタンパク質およびそれらの細胞内情報伝達における役割の発見(1994年)、GPCRアゴニストであるドーパミンの発見や神経系における情報伝達に関する研究(2000年)、GPCRの1つである嗅覚受容体の発見とその機能の解析(2004年)などがあります。
また、GPCRをターゲットにした医薬品の開発で、ジェームス・ワイト・ブラック(Sir James Whyte Black)が1988年にノーベル医学・生理学賞を受賞しています。ブラックは、アドレナリンβ受容体の遮断薬のプロプラノロールやヒスタミンH2受容体遮断薬のシメチジンの開発など、標的分子を特定しそれに選択的な低分子阻害薬を開発するという現代の創薬の基礎を築きました。アドレナリンβ受容体もヒスタミンH2受容体もGPCRです。
GPCRにはアドレナリン受容体やヒスタミン受容体以外にも、ドーパミン受容体、嗅覚受容体、アデノシン受容体、セロトニン受容体、オピオイド受容体、カンナビノイド受容体など多数あります。
これらの受容体は体の機能の調節に重要な働きを行っているので、これらの受容体をターゲットにした物質は医薬品となります。
実際、GPCRは多数の種類があって多様な生理機能に関与しているので、既存の医薬品の半数くらいが、何らかの形でGPCRの機能に影響を及ぼすことによって薬理作用を示すと考えられています。つまりGPCRは医薬品開発のターゲット分子として極めて(おそらく最も)重要であると考えられています。
【Gタンパク質共役型受容体はGタンパク質を介して外部の情報を細胞内に伝える】
受容体(Receptor)は脂質二重層の細胞膜を貫通するように存在し、細胞外の刺激や情報を細胞膜で囲まれた細胞内部に伝える役割を担っています。
受容体の細胞外側には、特定のシグナル分子(ホルモンや増殖因子や医薬品など)が結合できる「鍵穴」のような構造が存在し、その鍵穴にシグナル分子が結合すると、それが引き金になって様々な化学反応を細胞内で引き起こす働きを持っています。
この連鎖的な反応を通じて情報が細胞内に伝達され、最終的に特定の機能をもったタンパク質の遺伝子発現を促進したりして、細胞の生理機能の変化を引き起こします。このような一連の経路をシグナル伝達経路と呼びます。
図:細胞は脂質二重層から成る細胞膜によって細胞外と細胞内が分けられている。細胞膜を貫通するように存在する受容体に特有に結合するシグナル分子(リガンド)が結合する(①)と、その受容体は活性化し(②)、連鎖的な化学反応を引き起こす(③)。このようなシグナル伝達によって細胞外の情報が細胞内に伝達され、最終的に特定の機能を持った遺伝子の発現や酵素の活性化などによって、細胞機能に変化が生じる。
細胞膜受容体には多くの種類が知られていますが、そのうちもっとも大きなグループを構成しているのがGタンパク質共役型受容体(G protein coupled receptor : 略してGPCR)です。
α-ヘリックスというらせん構造で親油性の部分が、細胞膜(脂質二重層)を内外に行ったり来たりを7回繰り返しているので「7回膜貫通型受容体」という名称で呼ばれることもあります。N末端を細胞外に、C末端を細胞内に突出させています。
GPCRが活性化されると、細胞内のGタンパク質と呼ばれるタンパク質を介してシグナルを細胞内に伝達するために、「Gタンパク質共役型受容体」という名前がつけられています。
Gタンパク質はグアニンヌクレオチド結合タンパク質の略称です。Gタンパク質はα、β、γの3つのサブユニットから構成される複合体(三量体)を形成しています。
Gタンパク質は通常、GDPが結合した状態で存在していますが、この状態のGタンパク質は不活性型であり、作用を現しません。
GPCRにリガンドが結合して活性化されると、GDP(グアノシン二リン酸)が遊離してGTP(グアノシン三リン酸)が結合して活性型となって細胞内のシグナル伝達を引き起こします。
Gタンパク質の活性化は数百種類にも及ぶセカンド・メッセンジャーの産生を制御します。例えば、アデニル酸シクラーゼ(adenylyl cyclase)に作用してATPからセカンド・メッセンジャーのサイクリックAMP(cAMP)への合成を制御します(cAMP経路)。ホスフォリパーゼC(Phospholipase C)に作用して細胞膜脂質のホスファチジル・イノシトール(phosphatidyl inositol)からセカンド・メッセンジャーとして働くジアシルグリセロールやIP3(インシトール三リン酸)の産生を制御します(PLC経路)。
これらの作用は活性化されるGPCRの種類によって活性化される場合と阻害される場合があり、刺激されるGPCRの種類によって多様な作用を示します。(下図)
図:Gタンパク質共役型受容体(G protein coupled receptor : GPCR)は細胞膜を7回貫通する特徴的な構造から7回膜貫通型受容体(seven-transmembrane receptors)とも呼ばれている。細胞膜を貫通する部分をつなぐ細胞外のループ状の部分にシグナル分子が特異的に結合する鍵穴様の領域が存在する。Gタンパク質は細胞膜の細胞内側に存在し、α、β、γの3つのサブユニットから構成される三量体を形成している。αサブユニットはGTP( グアノシン三リン酸)あるいはGDP(グアノシン二リン酸)のどちらかを結合できる。三量体のGタンパク質はGDPが結合した不活性な状態で細胞膜に存在している。GPCRにリガンドが結合するとGPCRの構造が変化して三量体Gタンパク質のαサブユニットのGDPが外れてGTPが結合する。GTPが結合して活性化状態になったGタンパク質αサブユニットは、受容体(GPCR)やβサブユニットやγサブユニットと解離して、酵素やイオンチャネルなどに作用して、その下流のシグナル伝達経路を活性化する。このようなメカニズムでGPCRは光・匂い・味などの外来の刺激や、神経伝達物質・ホルモン・イオンなどの内因性の刺激を感知し、細胞内に伝達する働きを担っている。
GPCRは多くの種類の細胞に分布しており、光・匂い・味などの外来刺激や、神経伝達物質・ホルモン・イオンなどの内因性の刺激を感知して細胞内に伝達する役割を担っています。
例えば、光を感じて視覚に関わるロドプシン、におい物質に作用する嗅覚受容体、さまざまな生理現象を司る神経伝達物質(アドレナリン、ヒスタミン、セロトニンなど)の受容体などは全てGPCRの仲間です。
GPCRは酵母や原虫など単細胞の真核細胞でも外界の情報伝達に重要な働きを担っています。多細胞生物では進化の過程でさらに多くの種類のGPCRを持つようになっています。
人間ではGPCR遺伝子は1000種類以上が見つかっており、個々のGPCRは特定のシグナルに特異的に反応して生理機能を引き起こします。
GPCRはそのリガンド(受容体に結合して活性化する分子)に基づいて分類されますが、そのリガンドが特定されていないGPCRも150種類ほど知られています。これらをオーファン受容体(orphan receptor)と言います。(orphanは「孤児」という意味)
【カンナビノイド受容体はGタンパク質共役受容体】
薬用植物の活性成分の研究から、体内の受容体が発見された例が幾つかあります。その代表が、ケシの未熟果に含まれるモルヒネやコデインなどのアヘンアルカロイド(オピオイド)が結合するオピオイド受容体や、大麻草に含まれるカンナビノイド(大麻草に含まれる薬効成分の総称)が結合するカンナビノイド受容体です。
オピオイド受容体もカンナビノイド受容体も、動物が植物成分を薬効として利用するために存在する訳ではありません。もともと生体内で内因性のリガンド(受容体に結合して活性化する成分)があって特異的な受容体との間にシグナル伝達系を作っていたものが、その受容体に結合する成分が植物にたまたま含まれていたというだけです。
恐らく、このような植物成分は、動物や虫や菌に対する毒として存在しているものと考えられます。
動物や虫や菌に有毒な成分を持っている植物は生存や繁栄に有利になるので、このような毒を持った植物の進化は促進されると考えられます。そして、このような植物毒を人間は医療に利用してきました。
オピオイド受容体は、最初はアヘンに含まれるモルヒネなどのアヘンアルカロイドが結合する細胞の受容体として見つかり、その後、このオピオイド受容体に結合する内因性オピオイドとしてベータ・エンドルフィンやエンケファリンなどのいわゆる脳内麻薬(内因性オピオイド)が発見されました。
そして、これらの内因性オピオイドとオピオイド受容体が生体機能の調節に重要な役割を担っていることが明らかになったのです。
大麻草(マリファナ)には400種を超える化合物が含まれていますが、そのうち約80がカンナビノイドと呼ばれる大麻草固有の成分です。カンナビノイドは体の中のカンナビノイド受容体に結合することによって様々な薬効を発揮します。
オピオイド受容体もカンナビノイド受容体もGタンパク質共役型受容体(GPCR)です。
オピオイド受容体やカンナビノイド受容体に作用するシグナル分子(リガンド)は何らかの薬効や毒性を示すことになり、医薬品開発のターゲットとして可能性を持っています。
麻薬も大麻も古くから医薬品として人類が使用してきました。その薬効は最初は経験的に見つかったのですが、近代の研究によって、それらの成分が作用する受容体やシグナル伝達系が存在することが明らかになってきたということです。
【内因性カンナビノイド・システムが体の働きを調節している】
大麻由来のカンナビノイドが結合する受容体が存在することは、体内にカンナビノイド受容体に作用する体内成分が存在することを意味しています。カンナビノイド受容体と反応する体内物質を内因性カンナビノイドと言います。
カンナビノイドが結合する受容体としてCB1とCB2の2種類が見つかっています。CB1もCB2も7回膜貫通型のGタンパク質共役型受容体です
1964年にイスラエルのワイズマン研究所の ラファエル・メコーラム(Raphael Mechoulam) 博士らによって、大麻の精神変容作用の原因成分としてΔ9-テトラヒドロカンナビノール(THC)が分離され、1988年にTHCが直接作用する受容体が発見されカンナビノイド受容体タイプ1(CB1)と命名されました。
CB1は中枢神経系のシナプスに存在し、脳で最も広く分布するGタンパク質共役型受容体ですが、末梢神経系や、さらに筋肉組織や肝臓や脂肪組織など非神経系の組織にも分布しています。
数年後にタイプ2の受容体(CB2)の遺伝子が発見されました。CB2は主に免疫系の細胞に発現しています。
1992年に内因性カンナビノイドのアナンダミド(anandamide)が発見されました。アナンダミドはサンスクリット語の「内なる至福」を意味します。
さらに、2番目の内因性カンナビノイドとして2-アラキドノイルグリセロール(2-arachidonoylglycerol; 2-AG)が発見され、さらにいくつかの内因性アンナビノイドが見つかっています。
内因性のカンナビノイドが同定されると、それらの生合成や分解に関与する酵素や、受容体とリガンドが結合したあとのシグナル伝達経路が解明されました。
つまり、体内には内因性カンナビノイド(アナンダミドや2-アラキドノイルグリセロールなど)と、それらを合成する酵素や分解する酵素、内因性カンナビノイドが結合するカンナビノイド受容体によって内因性カンナビノイド・システムが構成されています。
内因性カンナビノイドのアナンダミドと2-アラキドノイルグリセロールは細胞膜のリン脂質からホスホリパーゼによって生成されるアラキドン酸の代謝産物です。
内因性カンナビノイドは生理的あるいは病的刺激によってオンデマンド(要求に応じて)に細胞膜のリン脂質を分解して合成・分泌されて、カンナビノイド受容体を刺激して生理作用を示します。
内因性カンナビノイドシステムの活性化は、リガンド(内因性カンナビノイド)がCB1やCB2と直接的に作用する他に、内因性カンナビノイドの細胞内取り込みや細胞内での分解の阻害によっても起こります。
CB1とCB2を阻害剤でブロックしても、植物カンナビノイドや合成カンナビノイドや内因性カンナビノイドが作用を及ぼすことが知られており、これは、これらのカンナビノイドがCB1とCB2以外のターゲットが存在することを示唆しています。
つまり、カンナビノイド系は極めて複雑なネットワークやメカニズムで生体機能を制御していると言えます。
【内因性カンナビノイド・システムの異常が様々な疾患を引き起こしている】
カンナビノイド受容体タイプ1(CB1)は中枢神経系において様々な神経伝達調節を行っており、記憶・認知、運動制御、食欲調節、報酬系の制御、鎮痛など多岐にわたる生理作用を担っています。
カンナビノイド受容体タイプ2(CB2)は免疫細胞や白血球に多く発現し、免疫機能や炎症の制御に関与しています。
CB1は中枢神経系に多く発現し、CB2は免疫細胞に多く発現していますが、カンナビノイド受容体(CB1とCB2)は多くの組織の細胞に存在し、多彩な生理機能の調節に関与しています。
カンナビノイド受容体のCB1やCB2に結合する内因性カンナビノイドとしてアナンダミド(Anandamide)や2-アラキドノイルグリセロール(2-arachidonoylglycerol)などが発見されています。
この内因性カンナビノイド・システムが関与している疾患として、多発性硬化症、脊髄損傷、神経性疼痛、がん、動脈硬化、脳卒中、心筋梗塞、高血圧、緑内障、肥満、メタボリック症候群、骨粗鬆症など多数の病気が報告されています。
内因性カンナビノイド・システムは神経細胞の損傷などに対して細胞を保護する作用や回復を促進する作用に関与しています。
つまり、これらの疾患の治療に内因性カンナビノイド・システムの制御(活性化や阻害など)が有効である可能性が示唆されているのです。
現在、カンナビノイド受容体に作用する物質として、生体内で合成される内因性カンナビノイド(アナンダミド、2-アラキドノイルグリセロールなど)、大麻草(Cannabis sative)に含まれる植物性カンナビノイド(テトラヒドロカンナビノール、カンナビジオールなど)、医薬品の開発目的で合成されている合成カンナビノイドなどがあります。
【CB2の活性化は抗炎症作用や鎮痛作用や細胞保護作用や抗がん作用を示す】
カンナビノイド受容体のCB1は中枢神経系に多く発現しており、CB1の活性化は多様な精神作用を示します。
大麻に含まれるカンナビノイドで最も含量の多いテトラヒドロカンナビノール(THC)はCB1とCB2を活性化し、鎮痛や食欲増進や吐き気を軽減する作用や筋肉けいれんを緩和する作用などがあります。しかし、THCを多く摂取すると、不眠やめまいや運動失調や気分の高揚などの副作用が問題になります。
また、肝臓では、CB1が炎症や線維化の増悪に関与しています。(425話参照)
一方、CB2のアゴニスト(受容体に結合して作用を示す作動薬)は、炎症を抑制する抗炎症作用や鎮痛作用があります。
CB1とCB2のアゴニストの混合物である植物カンナビノイドの副作用(有害作用)の多くはCB1のアゴニストによることが明らかになっており、CB1に作用せずCB2に選択的なアゴニストは有用な薬物になることが示唆されています。
CB2の活性化が有効な疾患として、様々な種類の疼痛、がん、神経系の炎症や変性による疾患、免疫異常、咳、炎症性疾患、心血管疾患、肝疾患、腎臓疾患、骨の異常、かゆみ(掻痒)などが報告されています。
選択的CB2受容体アゴニストによる治療効果が期待できる疾患として以下のような多くの疾患が報告されています。(Philos Trans R Soc Lond B Biol Sci. 2012 Dec 5; 367(1607): 3353–3363.の表1より)
手術後疼痛(acute or post-operative pain)
慢性炎症性疼痛(persistent inflammatory pain)
神経障害性疼痛(neuropathic pain)
骨転移を含むがん性疼痛(cancer pain including bone cancer pain)
掻痒症(pruritus)
パーキンソン病(Parkinson's disease)
ハンチントン病(Huntington's disease)
筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis)
多発性硬化症(multiple sclerosis)
自己免疫性ぶどう膜炎(autoimmune uveitis)
エイズ脳炎(HIV-1 brain infection)
アルコール性神経障害(alcohol-induced neuroinflammation/neurodegeneration)
不安関連障害(anxiety-related disorders)、
双極障害や人格障害や注意欠陥・多動性障害や物質使用障害における衝動(impulsivity)
コカイン依存(cocaine dependence)
外傷性脳障害(traumatic brain injury
脳卒中(stroke)
動脈硬化症(atherosclerosis)
全身性硬化症(systemic sclerosis)
炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease)
アルコール性肝疾患(alcoholic liver disease)などの慢性肝障害(chronic liver diseases)
糖尿病性腎症(diabetic nephropathy)
骨粗しょう症(osteoporosis)
咳(cough)
がん(乳がん、前立腺がん、皮膚がん、膵臓がん、結腸直腸がん、肝臓がん、転移性骨腫瘍、悪性リンパ腫、白血病、神経膠腫など)
以上のように、CB2アゴニストは多くの疾患に対して治療効果を示す可能性が報告されています。
【香辛料や大麻草に含まれる精油成分βカリオフィレンはCB2の選択的アゴニスト】
テルペン類(テルペノイド)とは
植物体内でメバロン酸経路により生合成され、イソプレン骨格(C5H8)がいくつか結合してできた化合物の総称です。
モノテルペンはイソプレンが2個結合(C10H16)し、ジテルペンはイソプレンが4個結合し、セスキテルペンはイソプレンが3個結合したものです。「モノ(mono-)」は「1個」、「ジ(di-)」は2個で、「セスキ(sesqui-)」は1.5個の意味です。
炭素が10個で構成しているC10のモノテルペン類と、炭素が15個(C15)で構成されるセスキテルペン類は揮発性が高く、空気中を漂いにおいを作り出しています。
炭素数が20のジテルペン以上になると分子量が大きくなるため揮発しにくくなります。
このような揮発性の高い植物成分を精油と言います。
ベータ・カリオフィレン(β-caryophyllene)は、多くの香辛料や植物性食品の精油に含まれるセスキテルペンです。
炭素数15と水素数24のC15H24で酸素や窒素は含まないセスキテルペン系化合物で、4員環と9員環がトランス縮環したビシクロ[7.2.0]ウンデカン骨格を有する非常に稀な構造を持つ天然物質です。
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