421)難治性てんかんとカンナビジオール

図:大麻草の薬効成分を使用する「医療大麻」はてんかん発作を抑える作用がある。大麻草の主成分であるデルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(Δ9-THC)は精神変容作用(陶酔や幻覚や多幸感など)の副作用があり、てんかん発作を誘発する作用も報告されている。一方、カンナビジオールには精神変容作用は無く、てんかん発作を抑制する作用が報告されている。抗てんかん薬の副作用を軽減したり、気分や睡眠を良くする作用、注意力や記憶力などの精神活動を向上させる作用もある。抗てんかん薬に抵抗性を示す難治性てんかんの治療にカンナビジオールの有効性が報告されている。

421)難治性てんかんとカンナビジオール

 【てんかんの約3割は薬剤抵抗性】
私たちの大脳では神経細胞がネットワークを形成し、お互いに調和を保ちながら電気的に活動しています。この穏やかな電気的活動が突然崩れて、激しい電気的な乱れが生じて筋肉のけいれん(痙攣)を起こす病気がてんかん(癲癇)です。
てんかん(癲癇)は、脳の神経細胞が過剰に興奮することによって「てんかん発作」を来す脳の病気です。「てんかん発作(epileptic seizure)」というのは、てんかんの一回ごとの発作で、多くはけいれん(痙攣)です。けいれん(convulsion)とは、全身または一部の筋肉の不随意で発作的な収縮が起こる症状です。
つまり、てんかんとは、大脳の神経細胞が過剰に興奮するために、筋肉のけいれんが反復性に起こる疾患です。
原因は様々で、脳に何らかの障害や傷があることによって起こる症候性てんかんや、原因不明の特発性てんかんなどがあります。
3歳以下の発病が最も多く、80%は18歳以前に発病すると言われていますが、最近は高齢者の脳血管障害などによる発病が増えてきています。
てんかんの罹病率は総人口の約1%と報告されています。つまり100人に1人がてんかんを持っています。
てんかんの治療では、まず抗てんかん薬を用いた薬剤治療が行われます。
薬によっててんかん発作が消失しない場合は、難治性てんかん(薬剤抵抗性てんかん)と呼ばれます。
成人の場合、適切な抗てんかん薬2、3種類を使用し、2年以上治療しても発作が止まらず、日常生活に支障をきたす状態である場合に「難治性てんかん」と呼ばれます。
てんかんがある人の約3割が難治性てんかんと言われています。つまり、薬をきちんと飲んでいても、約3割の患者さんは発作を止めることができていません。薬の副作用が強く出てしまうために、有効な抗てんかん薬を飲めない人もいます。
てんかんの治療には薬物以外にケトン食手術迷走神経刺激療法などもありますが、治療に抵抗するてんかん患者さんは多くいます。
てんかん発作が慢性的に続くと、脳が発達する小児期であれば精神・運動機能の発達障害が起こります。また、難治性てんかんは抗てんかん薬が多剤・大量投与になりやすく、薬剤による副作用(学習障害、行動異常、発達障害など)が問題になります。
このような難治性てんかんのもたらす悪影響を防止あるいは減少させる治療法として大麻成分のカンナビジオールが注目されています。

【医療大麻とカンナビジオールとてんかん】
大麻草あるいは医療大麻については410話411話412話413話で解説しています。
大麻(マリファナ)には抗けいれん作用や鎮静作用があり、筋肉のけいれんやてんかん発作の抑制に効果があることが古くから経験的に知られています。米国では、医療大麻が認可されている州で、てんかんの治療に医療大麻が処方されています。
通常の抗てんかん薬が効かない難治性てんかんに医療大麻が有効という報告があります。
しかし、医療大麻の場合、精神変容作用のあるΔ9-テトラヒドロカンナビノール(Δ9-THC)が多く含まれ、長期の使用や小児への使用には難しいという欠点があります。
また、Δ9-THCには発作を刺激する作用があるという報告もあります。
そこで、注目されているのが、大麻草でΔ9-THCについで多く含まれるカンナビジオールです。
純粋なカンナビジオール製剤が抗てんかん作用を示し、しかも有害な副作用が無いだけでなく、有益な副作用(気分や睡眠が良好になる、精神活動が活発になるなど)が得られるということで注目されるようになっています。
Δ9-THCや抗てんかん薬には記憶力低下など神経活動を低下させる副作用がありますが、カンナビジオールは記憶力や集中力を高めるなど精神活動を良好にする作用があります
したがって、カンナビジオールを併用することによって、抗てんかん薬の服用量を減らし、それらの副作用を軽減できるということで注目されています

【カンナビジオールの抗てんかん作用】
カンナビジオールの抗てんかん作用については動物実験で数多くの報告がありますが、人間での検討はまだ小規模な臨床試験が少数あるのみです。
カンナビジオールを使っている小児の難治性てんかん患者の調査に関する論文があります。著者は米国スタンフォード大学(Stanford University)の神経科(Department of Neurology)のグループです。
抗てんかん薬としてのカンナビジオールの可能性や現状を理解するのに役立ちますので、その論文の要旨と内容のポイントを紹介します。


Report of a parent survey of cannabidiol-enriched cannabis use in pediatric treatment-resistant epilepsy.(小児の治療抵抗性てんかんにおけるカンナビジオール高含有量大麻の使用に関する親の調査結果)Epilepsy & Behavior, 29(3), 574–577. 2013年


【要旨】
重度の小児てんかんは、頻回のけいれん発作と中枢神経系の発達障害と生活の質の低下がみられる。このような治療抵抗性の小児てんかんに対して、家族は様々な代替医療を探している。
この調査では、治療抵抗性のてんかんの小児における、カンナビジオールを高濃度に含む大麻の使用に関して行った。
子供のけいれん発作を治療する目的で、カンナビジオールを高濃度に含む大麻を使用している親たちの情報交換のためのフェースブック(Facebook)のグループに属している親たちを対象に調査が行われた。
「てんかんの診断とカンナビジオール高含有大麻の使用」という調査の選択基準を満たしたのは19例であった。
ドラベ(Dravet)症候群が13例、Doose症候群が4例、Lennox-Gastaut症候群が1例、原因不明(特発性)のてんかんが1例であった。
カンナビジオール高含有大麻を使用する前に治療に使われた抗てんかん薬の数の平均は12種類であった。
19例のうち16例(84%)の小児てんかん患者の親は、カンナビジオール高含有大麻を使用している間はけいれん発作の頻度が減少したと回答した。
このうち2例(11%)はけいれん発作が完全に起こらなくなり、8例(42%)はけいれん発作の頻度が80%以上の減少を認め、6例(32%)はけいれん発作の頻度が25~60%の減少を認めたと回答した。
けいれん発作の減少以外の有益な効果として、集中力などの精神機能が改善し、気分や睡眠が良好になったことが回答された。
親がカンナビジオール高含有大麻を、治療抵抗性のてんかんの小児の治療法として使用している実態を今回の調査は明らかにした。
医療大麻の使用を認可する州が増えている現状を考えると、てんかん患者の間に大麻製剤を使った治療への関心が増えてくることが予想される。カンナビジオール高含有大麻を小児に使用する場合の安全性や許容性(tolerability)に関するデータはまだない。
難治性の小児てんかんの治療薬としての安全性や許容性や有効性について検討するためには、精製カンナビジオールの標準化された製剤を使った客観的な評価が必要である。


(本文の内容の抜粋)

生後数年以内が始まるような小児のてんかんは、治療に抵抗性を示すことが多いのが特徴です。
抗てんかん薬、ケトン食、高用量のステロイド、手術など既存の治療法でてんかん発作を減らすことができないと、親は様々な代替療法を探し求め、それを試しています。
そのようなてんかんの代替医療の一つとして、カンナビジオールが最近注目されています。
大麻草は約80種類のカンナビノイド(大麻草に特有に含まれる成分の総称)を含み、そのうちΔ9-テトラヒドロカンナビノール(Δ9-tetrahydrocannabinol :THC)カンナビジオール(cannabidiol)の2つが、最も含有量の多いカンナビノイドです。
そして、この2つのカンナビノイドは全く異なる薬効を示します。
最も重要な違いは、THCには精神変容作用(陶酔作用や気分の高揚や多幸感など)があり、カンナビジオールにはそのような精神作用は無い点です
近年、大麻の医療目的での使用が注目されるようになりましたが、特にカンナビジオールの薬理作用や臨床的効果の検討が増えています。その理由は、カンナビジオールには精神作用がない点と、実際に病気の治療に使って有効性が報告されるようになったからです。
米国では医療大麻が認可されている州が増えていますが、このような医療大麻が使用できる所では、THCを含む大麻草からカンナビジオールを摂取することが主になります。
しかし、THCは発達途上の小児の脳の発育を阻害し、認知機能を低下させることが明らかになっています。さらに、THCはてんかん患者の脳に対して、けいれん発作を誘発する作用があります。
一方、カンナビジオールは、精神作用は全くなく、てんかんの様々な動物実験モデルによる多くの検討で、抗けいれん作用が明らかになっています
人間においては、治療抵抗性のてんかんの成人を対象にした精製カンナビジオールの治療効果を検討した小規模な二重盲検プラセボ比較試験が2件あるだけです。
一つは1978年のMechoulamらの報告で、9例のてんかん患者をカンナビジオールを1日200mg投与する群(4例)とプラセボ群(5例)に無作為に分けて検討しています。3ヶ月間の試験で、プラセボ(偽薬)を投与された5例ではてんかん発作の頻度は不変でしたが、カンナビジオールの投与を受けた4例中2例はけいれん発作が完全に止まりました。
もう一つの臨床試験の結果は1980年の報告で、15例の治療抵抗性の成人てんかん患者をプラセボ群(7例)と精製カンナビジオール(1日400mg)投与群(8例)に無作為に分けて18週間の経過を検討しています。
カンナビジオールの投与を受けた8例のうち、4例はてんかん発作の顕著な減少を認め、残りの3例でもてんかん発作の部分的な減少を認めています。一方、プラセボ群では、7例中1例にてんかん発作の部分的な減少を認めただけでした。
精製したカンナビジオールの投与による副作用として最も多いのは眠気でした。精神変容作用はどの患者にも認められていません。
しかし、1986年に報告された非盲検試験では、1日200mgの精製カンナビジオールを12例に投与しても、てんかん発作の頻度は減少しなかった、という有効性を否定する報告もあります。
医療大麻の使用を許可する州が増えてきたため、治療抵抗性のてんかんの子供をもつ親は、カンナビジオール高含有量の大麻の使用を検討するようになっています。
このような現状を背景にした、てんかんの子供をもつ親が、カンナビジオール高含有量の大麻を使った治療に関して、インターネットを介した情報交換を行うように状況になっています。
そこで、この論文では、そのようなてんかん患者の親のフェースブックのグループ(約150人が参加)に対して、匿名のアンケート調査(24項目の質問)を行って、その結果を報告しています。この調査では、20人の親が応答し、そのうち19例が選択基準を満たしました。
年齢は2~16歳です。2歳の子供を除いて、他のてんかん患者は3年以上の薬物治療の経験があります。2歳の患者はカンナビジオールを使用する前、16ヶ月間の薬物治療を行っています。
平均すると12種類の抗てんかん薬を使用しています。
カンナビジオールの投与量は1日に体重1kg当たり0.5 mgから28.6 mgと大きな幅がありますが、多くは体重1kg当たり4~10mg程度です。
THCも微量に含まれていますが、その量は1日に体重1kg当たり0~0.8mgとごくわずかです。
カンナビジオールを服用する前の発作の頻度も、週に2回程度から1日に250回まで差があります。
カンナビジオールの投与期間は2週間から1年以上です。
19例中16例(84%)でてんかん発作の頻度が減少したと回答しました。2例は、4ヶ月間以上のカンナビジオールの服用で完全に発作が起こらなくなりました。
残りのうち8例(42%)は80%以上の減少、3例(16%)は50%以上の減少、3例は25%以上の減少でした。3例は変化なしでした。
12例はカンナビジオールの服用を開始してから、抗てんかん薬の服用量を減らしていくことができました。
けいれん発作の減少以外の有益な効果として、気分が良くなった(15/19, 79%)、集中力や注意力など精神活動の向上(14/19, 74%))、睡眠が良くなった(13/19, 68%)、自己刺激(self-stimulation)の減少(6/19, 32%)を認めました。
副作用として眠気(7/19, 37%)と倦怠感 (3/19, 16%) が認められました。
他の抗てんかん薬を服用しているときは、発疹、嘔吐、興奮性(irritability)、めまい、錯乱(confusion)、攻撃的行動などの副作用が見られましたが、カンナビジオール高含有量大麻の使用ではこのような副作用は認められませんでした。
このようなファースブックに登録された患者グループにアンケート方式での調査が本当に有効性や副作用の状況を正確に現しているのかが問題になります。
そこで今回の調査で最も多かったドラベ(Dravet)症候群の患者のフェースブックのグループでドラベ症候群の治療に使われているstiriperolという薬を使っている患者の親に今回と同じアンケート(発作の頻度の変化や副作用など)で調査しています。
その調査で得られた結果は、ドラベ症候群の小児に対するstiriperolの効果と副作用に関する過去の臨床試験の結果(論文として報告されている)と非常に類似していました。
つまり、この調査方法で得られたカンナビジオールの有効性や副作用の結果は、臨床試験の結果を推測するだけの信頼性があることを示唆しています。


この結果は非常に驚くべきものです。というのは、この調査で最も多いドラベ(Dravet)症候群のてんかんは非常に難治性で、多くの抗てんかん薬やケトン食でもてんかん発作を減少させることは困難な病気です。このドラベ症候群のてんかん発作に対して非常に高い有効性を示しています。
実際、この調査でも、平均12種類の抗てんかん薬が無効であった症例を対象にして、80%以上の症例で明らかな発作の減少を認めています。しかも、副作用が少なく、症状の改善効果や、認知機能や気分を良くする効果などを認めています。このような有益な副作用は他の抗けいれん薬では見られません。
つまり、治療抵抗性の小児のてんかんにカンナビジオールを多く含む大麻製品を積極的に試してみる価値は十分にありそうです。
カンナビジオールは大麻草に含まれる成分の一つです。
大麻草に特徴的に含まれる成分にカンナビノイドがあります。カンナビノイドは窒素(N)を含まない炭素(C)、水素(H)、酸素(O)からなる一群の化合物で、現在までに約80種類のカンナビノイドが単離され、構造が決定されています。
カンナビジオールは大麻草から抽出されるカンナビノイドの約40%を占めますが、品種改良によってカンナビジオールの含有量を増やし、Δ9-テトラヒドロカンナビノール(Δ9-THC)の含有量を減らした品種も栽培されています。
このようなカンナビジオール高含有量のエキス(カンナビジオール・オイル)がサプリメントとして欧米で販売されています。(日本でも入手可能です)
てんかん治療の場合は、1日に体重1kg当たり4~10mg程度のカンナビジオールが必要ですが、小児であれば体重10kgの場合で40~100mgの摂取は市販のサプリメント(CBDオイル)の濃い製品を使えば、1ヶ月分が数万円で済みます。

【カンナビジオールは多彩なメカニズムで神経ダメージを保護する】
カンナビジオールには、抗炎症作用、抗酸化作用、抗けいれん作用、抗不安作用、抗うつ作用、制吐作用(吐き気や嘔吐を止める作用)、抗精神病作用などが報告されています。
そのため、神経変性性疾患、てんかん、酸化傷害、吐気や嘔吐、不安、うつ病、睡眠障害、統合失調症などの疾患や症状を改善する効果が指摘されています。
カンナビジオールはCB1を活性化しないので精神変容作用(陶酔感、多幸感、気分の高揚など)はありません。
抗炎症作用や抗酸化作用など神経細胞を傷害や変性から守る作用があるので、神経変性性疾患に対する治療効果が特に注目されています。
実際に、カンナビジオールとΔ9-テトラヒドロカンナビノール(Δ9-THC)を混合した製剤を使って、ハンチントン病の患者に対する治療効果を検討する臨床試験が行われています。Δ9-THCとカンナビジオールの合剤は、多発性硬化症の患者の痙攣や痛みを軽減する目的でも使用されています。
このように多くの病気に対する治療効果が報告されていますが、その作用機序については十分に解明されていません。
Δ9-THCが、内因性カンナビノイド・システムのカンナビノイド受容体(CB1とCB2)にアゴニスト(受容体に働いて機能を示す作動薬)として作用して様々な薬効を示すのに対して、カンナビジオールはCB1とCB2のカンナビノイド受容体には作用せず、むしろカンナビノイド受容体の働きを阻害することが明らかになっています。
しかし一方、内因性カンナビノイドを分解する酵素を阻害することによって、内因性カンナビノイド・システムを活性化する作用が報告されています。
したがって、カンナビジオールには内因性カンナビノイド・システムの活性化と阻害という両方の作用があり、様々な病態によって作用が異なることが指摘されています。
このように内因性カンナビノイド・システムに作用するだけでなく、セロトニンアデノシンの働きに対する作用、核内受容体のPPARファミリー・タンパク質や様々なイオンチャネルへの作用なども報告されています。
中枢神経系(脳や脊髄)においてカンナビジオールは抗炎症作用を示します。
構造中に2つの水酸基があり、これによる抗酸化作用の関与も指摘されています。
抗酸化、抗炎症、グリア細胞の活性化の抑制、グルタミン酸の代謝の調節など多彩な作用によって神経細胞をダメージから保護する作用があります。
神経細胞の傷害はミクログリア細胞と呼ばれる神経組織において炎症に関与する細胞を活性化し、これが神経細胞のダメージを促進します。カンナビジオールはミクログリア細胞の活性化を抑制します。
グルタミン酸は興奮性の神経伝達物質で、脳虚血などの病的状態では神経毒として作用します。カンナビジオールはグルタミン酸の産生を減らして神経細胞のダメージを抑制する作用が報告されています。
内因性カンナナビノイドを分解する酵素を阻害してCB1とCB2を介した内因性カンナビノド・システムを間接的に活性化する作用も報告されています。
その他にCBDが作用する受容体やタンパク質が多数報告されています。その中には、細胞内への電解質などの物質の出入りを調節する様々な種類のイオンチャネルやトランスポーター、細胞のシグナル伝達に関与する受容体や酵素などが含まれ、これらの物質を活性化したり抑制する作用が報告されています。
遺伝子発現にも作用します。例えば、炎症反応の過程で活性化される転写因子(NF-κB)の活性を阻害して、一酸化窒素の産生を抑制する効果が報告されています。
細胞内の抗酸化酵素や解毒酵素の発現量を増やす作用も報告されています。
このように、神経細胞を傷害する活性酸素、炎症性サイトカイン、シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)、誘導性一酸化窒素合成酵素(iNOS)、グルタミン酸などの産生を抑制する作用などの相乗的な作用によって神経障害を軽減します。
その結果、ハンチントン病やパーキンソン病など神経変性疾患の治療に期待されています。

【カンナビジオールの抗てんかん作用のメカニズム】
カンナビジオールにはてんかん発作を抑制する作用が多くの動物実験モデルで確認されています。
カンナビジオールの抗てんかん作用は、ある単一の作用機序では説明できません。多くの作用メカニズムが総合的に作用して、てんかん発作を抑えると考えられています。
しかも、多彩のメカニズムであるにも拘らず、正常細胞に対する毒性(ネガティブな副作用)はほとんど認めず、逆に良い作用(ポジティブな副作用)が得られるという、極めて有用な薬と言えます
カンナビジオールはカンナビノイド受容体のCB1とCB2にはほとんど作用せず、むしろカンナビノイド受容体(CB1とCB2)とそのアゴニスト(受容体に結合して作用を引き起こす作動薬)との相互作用を阻害するアンタゴニストとして作用します。つまり、カンナビジオールの抗てんかん作用はカンナビノイド受容体とは関係の無い(非依存的な)機序で発揮されると考えられます。
例えば、細胞内のカルシウム代謝の調節によって神経細胞の興奮性を制御する作用、セロトニン受容体の5-HT1Aにアゴニストとして作用して細胞膜の過分極膜応答(membrane hyperpolarising responses)を引き起こしててんかん発作を阻止する作用、けいれんを抑制する作用があるアデノシンの中枢神経系内での濃度を高める作用などが報告されています。さらに多くの作用機序が提唱されており、それらの総合的な作用で抗てんかん作用を示すと考えられています。
また、このような多彩な機序が、神経変性疾患や痛みや炎症やがんに対する効果とも関連していると考えられています。つまり、カンナビジオールの抗てんかん作用のメカニズムはかなり複雑で、多くの機序が関与していると言えます。
多彩な作用メカニズムが作動しているにも拘らず、副作用が極めて少なく、むしろ良好な状態になり生活の質も良くなります。他の抗てんかん薬と併用して、これらの薬の効果を高める(したがって、抗けいれん薬の服用量を減らせる)だけでなく、副作用を軽減する作用もあります

【てんかんとがんの治療の接点】
てんかんの治療にケトン食が有効です。がんの治療にもケトン食は有効です(420話参照)。
がん患者がてんかんを合併することがあります。例えば、脳転移による症状や、脳転移の放射線治療などで治療後にてんかんを起こす場合もあります。
抗てんかん薬の発がん作用も問題になっています。抗てんかん薬の中には長期の服用で発がん作用が懸念されるものもあります。
したがって、がん治療とてんかんの治療に共通して有用な方法として、ケトン食カンナビジオールが適しています。つまり、ケトン食とカンナビジオールの併用はてんかんとがんの両方の治療に役立つと思います

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