『日刊ゲンダイ』に連載しているコラム「テレビとはナンだ!」。
今週は、テレビ東京の連ドラ「モリのアサガオ」について書いた。
これって、かなりの野心作であり、問題作なのです。
見出し:
しんどい内容だが、重いテーマにトライした
テレビ東京を評価!!
コラム本文:
「モリのアサガオ」(テレビ東京)はしんどいドラマだ。
何しろテーマが死刑囚であり、死刑制度なのだから当然かもしれない。
この奇妙な題名も、死刑執行が午前中に済んでしまうため、死刑囚を朝早くから昼までの短い時間に咲き終わるアサガオの花に譬えたのだ。
そして、モリは死刑囚舎房を指す。
主人公の及川直樹(伊藤淳史)は凶悪犯ばかりの死刑囚舎房に配属された新人刑務官。
彼がそこで出会う死刑囚たちの最後の日々が印象的だ。
たとえば、いじめられて自殺した息子の敵討ちで、3人の中学生を殺害した父親(平田満)。
「私は死刑になるほど悪いことをしたんでしょうか」と刑務官に問いかける。
また無銭飲食をした上で店主親子を殺した男(大倉孝二)は、ようやく遺族に謝罪する気持ちになった途端、刑が執行される。
死刑囚の内面を知ることで直樹の心は揺れ動く。
その揺れる心は、「死刑制度は必要なのか」という視聴者への問いかけでもある。
そう、このドラマは「国家が人間の命を奪うこと」の是非を問うているのだ。
見ていてしんどいのは当たり前で、視聴率が4%台というのも仕方ないだろう。
しかし、国民総裁判員の時代、避けて通れぬ課題であるのは事実。
久しぶりに設けた貴重なドラマ枠で、こうした重いテーマにトライしたテレビ東京を評価したい。
(日刊ゲンダイ 2010.11.09付)