碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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テレビ界「新2強時代」の到来か!?

2013年01月12日 | 「北海道新聞」連載の放送時評

北海道新聞に連載している「碓井広義の放送時評」。

今回は、2012年の年間視聴率について書きました。


昨年の年間視聴率
フジ失速、テレビ朝日が躍進
「新2強時代」の到来か

年明けに2012年の年間視聴率が発表になった。注目すべきはテレビ朝日がプライムタイム(午後7~11時)で1位になったことだ。1959(昭和34)年の開局以来、初の出来事である。

視聴率にはプライムの他にゴールデン(午後7~10時)と全日(午前6時~深夜0時)があるが、こちらの年間首位はかろうじて日本テレビが守った。

なぜテレビ朝日は躍進できたのか。一つは幅広い視聴者のニーズに誠実に対応してきた成果だ。たとえばドラマでは、他局が若者狙いに奔走する中で大人が見られる作品を粘り強く作り続けてきた。

「相棒」というメガヒットも、「はぐれ刑事純情派」などが地盤を固めた御家芸の延長線上にある。また数少ないゴールデンのアニメ枠「ドラえもん」や、民放では貴重な音楽番組となった「ミュージックステーション」も継続している。

次に、どんな番組をどこに置くかという「編成」のうまさがある。午後の時間帯で「相棒」など人気ドラマを再放送し、そのまま視聴者を「スーパーJチャンネル」(道内ではHTB「イチオシ!」)に誘導する。

夜も「ナニコレ珍百景」など長寿バラエティーやドラマから、「報道ステーション」へと流し込む。現在のテレビ朝日はエンターテインメント番組と報道・情報番組のバランスも良好だ。

一方、フジテレビにかつてのような勢いがない。最近まで日本テレビと首位争いをしていたのに、どうしたのか。実はその原因の一端が年末年始特番からも見てとれる。大晦日に「アイアンシェフ」の6時間スペシャル、そして1月2日は「クイズ$ミリオネア」復活スペシャルだった。

「アイアンシェフ」はかつての「料理の鉄人」のリメイクであり、「クイズ$ミリオネア」もまた往年のヒット番組である。もちろん過去の自社番組をどんなふうに生かそうと自由であり、リメイクにはリメイクの価値がある。ただし忘れてはならないのが、テレビは時代の空気とリンクしているということだ。

「アイアンシェフ」でいえば、現在の日本の視聴者に、豪華食材を使った料理で競い合うというバブル遺産のような内容が受け入れられると思っている、そのセンスに疑問符がつく。また、文字通り一攫千金の高額賞金を目指す「クイズ$ミリオネア」も同様だ。かつての成功体験が、現在のかじ取りをどこか狂わせているのではないか。

日本テレビとフジテレビの「2強時代」から、新たなステージへと移行しそうな年の始まりである。

(北海道新聞 2013.01.11)

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