碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

日経MJ(流通新聞)で、コラム「CM裏表」を連載開始

2014年04月08日 | 「日経MJ」連載中のCMコラム

日経MJ(流通新聞)で、新しい連載コラム「CM裏表」を始めました。

「CMの魅力や社会への影響などを解説」するというのが趣旨なのですが、個人的には、CMを通じて世の中や時代を見つめられたら、と思っています。

毎週月曜の掲載で、私の他に放送作家の山田美保子さんなど3名の方々が参加。

月に1度、順番が回ってきます。

自分でも楽しみな連載なので、どうぞよろしくお願いいたします。


CM裏表

「ロト7」
上司を信じるな
実感する会社劇

会社は面白い。色々な人間が生息している。特に上司は奇々怪々だ。成功は自分の手柄、失敗は部下のせいというタイプも少なくない。ロト7の柳葉敏郎さんみたいに「すべて私の指示です。責任は私がとります」なんて言う上司は貴重だろう。

でも、気をつけよう。上司は豹変(ひょうへん)する。柳葉さんも、得意先に名刺ではなくロト7のマークシートを渡したミスを、部下の妻夫木聡さんに転嫁した。

「君子豹変」という言葉は、急に態度を変える身勝手な振る舞いを指すことが多い。だが本来は、立派な人間ほど自分の間違いを直ちに改めるという意味だ。

CMでは、柳葉さんが「キャリーオーバー」に反応したことでロト7好きが露見する。この上司、信じていいのか。部下の自己決定が試される瞬間。それもまた会社の醍醐味だ。

(日経MJ 2014.04.07)



新たな王道の「模索」と、風穴を開ける「試み」

2014年04月08日 | 「北海道新聞」連載の放送時評

北海道新聞に連載している「碓井広義の放送時評」。

今回は、NHK朝ドラ「ごちそうさん」と、北海道テレビの特番を取り上げました。

バラエティー 試み新た
3局で制作、全国放送へ

3月29日、NHK朝の連続テレビ小説「ごちそうさん」が最終回を迎えた。全話の平均視聴率は22・4%(関東地区、ビデオリサーチ調べ)。過去10年間で最高の支持だ。

このドラマは異色作「あまちゃん」から一転して、“女性の一代記”という定番に戻っただけではない。主人公のめ以子(杏)が、「食」という身近なものを支えに激動の時代をたくましく生きる姿に共感が集まった。そこでは、め以子がプロではなく、あくまでも主婦として食と向き合ったことが大きい。

また登場する料理も特別な食材や技術を必要とせず、どこの家庭でも作れそうなものだ。それでいて料理のシーンは楽しそうで、食事のシーンはおいしそうだった。家庭の食がこれほど素敵に見えたドラマは過去にない。

その一方で、戦争が日常化する社会を庶民の目線でリアルに描いてもいた。我が子を戦場へ送る辛さも、失う悲しみも、抑制の効いた脚本と演技が十分に伝えてくれた。これは反戦を標榜しない反戦ドラマであり、朝ドラの新たな王道を探った1本だった。

今回、もう1本、評価したい番組がある。3月28日の夜11時15分から北海道テレビで放送された「現代%(パーセン)基礎チシキ」だ。気になることを「アンケートによる%」で数値化し、エンターテインメントとして楽しむバラエティである。たとえば、「女性からボディタッチされると自分に気があると思う男性」は65%。「下着の上下は基本バラバラな女性」が54%など、放送時間が遅いこともあり、やわらかなネタが並んでいた。

司会はバナナマンの設楽統。出演者に同じく日村勇紀、ますだおかだの岡田圭右など。壇蜜やデーブ・スペクターもVTR出演する賑やかさで、新機軸のバラエティを開発しようという意欲が感じられた。

しかし、それ以上に注目すべきは、この特番が北海道テレビ、名古屋テレビ、九州朝日放送による初の共同制作だったことだ。3局とも、キー局であるテレビ朝日の番組を流すと共に多くの自社制作を行っている。だが、それらはあくまでも地域限定番組だ。また人員にも予算にも限界がある。

そこで、共同制作によって全国の視聴者に見てもらえる番組を生み出そうというのが狙いだ。今後、テレビ朝日を含む各地の放送局に、番組販売という形でセールスしていく。いわば中央集権的なネットワークシステムに風穴を開ける試みでもある。そのチャレンジ精神に声援を送りたい。

(北海道新聞 2014.04.07)