碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
見たり、読んだり、書いたり、時々考えてみたり・・・

1回だけの「村上朝日堂」復活、そして安西水丸さんに合掌

2014年04月13日 | 書評した本たち



先月19日に、イラストレーターの安西水丸さんが亡くなった。

享年71。

「週刊朝日」最新号の表紙は、追悼の意味で、水丸さんの作品で
飾られている。

そして、<1回だけの「村上朝日堂」復活!>の文字も見える。



本当に、「1回だけの」というか、本当にこれが最後なんだろうなあ。

「村上朝日堂」シリーズは、大好きな連載だった。

文:村上春樹、え:安西水丸。

文章もだけれど、水丸さんの「え」、つまりイラストが心地よかった。

村上さんは、刊行予定の「セロニアス・モンクのいた風景」という単行本(読みたい!)の表紙を、水丸さんに依頼していたそうだ(見たかった!)。



嵐山光三郎さんの連載「コンセント抜いたか」でも、水丸さんに触れている。

水丸さんはカレーが好きだったそうだ。

日曜は、カレーにしてみよう。

合掌。




今週、「読んで書評を書いた本」は次の通りです。

緒川 怜 『迷宮捜査』 光文社

瀬戸川宗太 『思い出のアメリカテレビ映画』 平凡社新書

佐藤卓己 『災後のメディア空間』 中央公論新社

塩澤実信 『昭和のヒット歌謡物語』 展望社

* これらの書評は、
  発売中の『週刊新潮』(4月17日号)
  読書欄に掲載されています。


映画「白ゆき姫殺人事件」のツイッターに注目

2014年04月13日 | 映画・ビデオ・映像

映画「白ゆき姫殺人事件」を観てきました。

原作が、「告白」の湊かなえさん。

まあ、それが一番の動機で、次が井上真央、貫地谷しほりといった実力派女優陣、そして「ゴールデンスランバー」の中村義洋監督だから、ってところですね。

人里離れた山中で10か所以上を刺され、焼かれた死体が発見される。殺害されたのは典子(菜々緒)で、容疑者は化粧品会社のOL城野美姫(井上真央)。テレビディレクターの赤星雄治(綾野剛)は、美姫の同僚、家族、幼なじみなどに取材。典子が美姫の同期入社で、美人で評判だった一方、美姫は地味で目立たない存在だったことが報道され……。

結論から言えば、映画館で観るのに十分値する、佳作でした。

湊さんお得意の「藪の中」スタイルが生きている。

それぞれが自分の事情を抱えており、自分の都合で、自分にとっての真実を語る。

そう、「記憶は捏造される」のです。

そこにテレビやネット(主にツイッター)などのメディアがからんで、
事態を混乱させ、進展させ、ますます何が本当か、わからなくなる。

この辺り、とても現代的で面白い。

そして、物語の中で、「赤毛のアン」がなんとも有効に使われている。

朝ドラが「花子とアン」というタイミングもどんぴしゃです。

それにしても井上、貫地谷は、やはり上手いなあ。

報道番組の契約ディレクター・綾野剛はハマり役。殺される菜々緒も(笑)。

というわけで、オススメできる邦画の1本です。