いじめの問題 7  自己肯定感の追加

いじめの問題 7  自己肯定感の追加    2018.04.10.

自己肯定感の成長は、幼少期の親との関係だけで形成されるわけではない。他の重要な要素として、自分の中の遺伝子が持っている能力を十分に発現させる必要がある。

ヒトは、社会が複雑になったために、遺伝子上の情報だけでは社会に適応できない。遺伝子上にあるきっかけを使いながら、様々なことを学習して行く。例えば、男女間の関係も社会の中で複雑になっており、ゆっくりと成長しながら学習してそれぞれの社会に合った方法を学んでゆく。そのために性ホルモンの発現も、小学校中学年から始まり、22歳ごろまで順次増加して行く。他の動物では、性ホルモンの増加はもっと短時間に起こり、それで十分に間に合う社会である。

身体能力にしても、近縁の動物に比べ長時間をかけて獲得して行く。これは直立2足歩行という大きな変化を含んでいるためもあるが、指や腕の使い方が複雑で、成長につれて学習する様々な段階がある。

社会性の獲得についても、幼児時代、子ども時代、青年期などと分けられているように、それぞれに異なった課題がある。親以外と関係を持ち始める幼児期には、それなりの課題があり、親だけで育てられるものではない。子ども時代、青年期なども同様で、親が全てを育てられるわけではない。学校も同じである。教えれば何でも学習すると考えるのは無理がある。

自分の能力の中でも、観察力や相手の状態を読む力は、それぞれの時代に様々な人と接触ることによって獲得するものである。現在のように、子どもたちに自由がなく、常にだれかから管理されている状態では、生きる力になる観察力などは育たない。自分自身を振り返ってみても、自然の中に一人で出ることによって養われた観察力は、いつまでも使える。マムシやクマに出会う恐ろしさは、自然と観察力を養ってくれた。音、気配、臭いなどあらゆるものを動員して自分を守ることが、生きるために必要な力になる。相手の観察にしても、貧しかったので、新聞配達、炭焼きや木こり、土方の手伝いなどあらゆる場面で相手の必要とすることを見極めることが、次の仕事を得るための重要な要素となる。このことは外国に行くようになって、様々な国で言葉も通用しないまま仕事をするときに大きな助けとなった。

自分の能力を育てることが、自分の肯定感に大きく関係している。前回報告した国立青少年教育機構が調査した結果の評価として、他人の目や評価を気にする結果、自己肯定感が低くなっているのではないかとする考え方は、ものの見方としてはいささか浅いように思われる。日本の教育では、動物の社会などとの比較はほとんどなされない。しかしヒトは、動物の進化の上に乗っており、それることはできない。もっと広い視野でものを見る必要があるように思われる。
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