朝間詰め、浅場のポイントに入った頃には、北東の風が吹いていた。
「其処まで強い感じはしないですね。白波は有りますね」
自分たちの予想よりも早く吹き始めた風に、気を付けながら釣りを開始する。
狙いは、50メートルよりも浅いところ。
一投目から、何かがバイトしてくる。
「乗らないな…」
潮は、ゆっくりと下りながら沖に払い出している。
潮自体は、上っている気もする。
しかし、潮の動きが良くない分、風に押されている感じが強い。
塩田さんに、アタリ。
竿先が、バタバタと激しく暴れる。
「イトヨリかチダイみたいですね」
予想通り、チダイが上がってきた。
風が北から北東に、そして真東へと回り始めている。
海底付近のベイト反応が、浮き始めている。
ジギングにアタリが来た。
スロージギングにガンゾウヒラメがヒット。
続けてヒットしてきたのは、ホウボウ。
「何でも、ヒットしてくれば楽しいです」と、塩田さん。
魚探にベイト柱が出始めた。
その事を伝えようとしたときに「何か来た」と、塩田さん。
「エソかな…。余り引かないな…」
小さい何かと思っていたが、船の側に来て、急に走り出した。
「おお、いきなり走り出した」
その姿を確認する。
「ヨコワですよ」
3キロクラスのヨコワが、上がってきた。
針掛かりも、ガッチリと掛かっていた。
「この時期に、これが来るのはビックリですね」
嬉しい驚きだ。
良いベイト柱が出ている。
直ぐに、仕掛けを入れていく。
「来た!」
これまでとは明らかに、アタリが違う。
一気に10メートルくらい走られる。
「これは良い」
と、楽しみながら巻き上げるが…「あっ!」
2度目の突っ込みで針が外れた。
「あっ!」と言う声を発して、竿先から生体反応が消えた。
気分を変えようと、ポイントを移動する。
ポイントに入ると、直ぐに海底から少し浮き上がったベイト反応が出てきた。
「良い感じの反応がありますよ」
仕掛けを入れて、暫くするとアタリが来た。
「今日は、スロージギングの日ですね」
魚とのやり取りを楽しむ。
姿を見せたのは、ニベだった。
ここから、仕掛けを入れる度に、ニベがヒットしてくる。
型は、1キロクラスの小型が多い。
「このベイトには、ニベが付いて居るみたいですね」
針掛かりが上手く行かなくても、ジグを追い掛けてくる。
3~4匹続けて釣り上げたところで、ポイントを移動する。
しかし、風が真東から東南東に、さして南東の風に変わってきた。
沖合の深場のポイントは、諦める。
「もっと、浅場に行ってみましょうか」
30メートル前後の浅場に、移動する。
まずまずのベイト反応がある。
南東の風が、強くなり始めた。
船の周囲では、白波も立ち始めている。
「来た。何か来ました」
塩田さんの鯛ラバに、何かがヒット。
最初の走りは、凄い勢いだった。
慌てずに、ゆっくりとラインを巻き上げていく。
「重いだけで、叩きませんね。サメか…」
姿を見せたのは、1メートルを超すサメだった。
タモ入れ直前に走った勢いで、針が外れた。
仕掛けを切られることもなく、放流。
南東の風が、益々強くなってきた。
このサメを最後に、納竿とした。