原発問題

原発事故によるさまざまな問題、ニュース

【原発ホワイトアウト】第17章 再稼動 ※36回目の紹介

2014-08-21 21:00:00 | 【原発ホワイトアウト】

*『原発ホワイトアウト』著者:若杉冽  から何度かに分けて紹介します。36回目の紹介  

 現役キャリア官僚のリアル告発ノベル!

 「政財官の融合体・・・ 日本の裏支配者の正体を教えよう」

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カスタマーレビュー)から

救いがあるとすれば著者・若杉冽氏の次の言葉だ。

  「まだまだ驚くべき事実はたくさんあるのです。

  こうした情報が国民に届けば、きっと世論のうねりが起きる。

  私が役所に残り続け、素性を明かさないのは、情報をとり続けるためです。

  さらに第二、第三の『若杉冽』を世に送り出すためにも」(毎日新聞 10月22日)

読み終わって私は、このままでは本書の予言どおり原発事故は再び起こる可能性が高い、と思った。

そして、表紙とびらに引用されたカール・マルクスの次の言葉が本書の内容を言い尽くしていると気づく。

  「歴史は繰りかえす、一度目は悲劇として、しかし二度目は喜劇として」。

この国の統治のあり方を根本的に変えなければ「二度目は喜劇」を防くことができない、と私は考える。

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<過去に紹介した記事>

【原発ホワイトアウト】終章 爆弾低気圧 ※下の方に1~16回までのリンク一覧あり

【原発ホワイトアウト】第4章 落選議員回り ※下の方に17~21回までのリンク一覧あり

【原発ホワイトアウト】第13章日本電力連盟広報部 ※下の方に22~25回までのリンク一覧あり

【原発ホワイトアウト】第14章エネルギー基本計画の罠 ※下の方に26~32回までのリンク一覧あり 

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【原発ホワイトアウト】第17章 再稼動  ※36回目の紹介

-『原発ホワイトアウト』著者:若杉冽 「第17章 再稼動」 を紹介

前回の話:【原発ホワイトアウト】第17章 再稼動 ※35回目の紹介

 「だいだい原子力規制庁で審査を担当している役人たちは、電力会社や重電メーカーに入れなかった原子力学科の落ちこぼれですよ。原子力安全・保安員ができたころに中途作用された、他に行き場のない屑のような連中です。最新の技術についてわかるわけがありません。全部私達が書類の記載の意味を教えてやってんですよ。

 日本では審査ってのはフィクションなんです。国のお墨付きを得た、っていう儀式です。フクシマの事故は天災ですから、フクシマがあろうがなかろうが、原子力安全・保安員から原子力規制庁に同じ連中が移っただけで、メンバーはそのママなんだから、審査だって変わるわけ無いでしょ。連中が何十週間書類とにらめっこしたって同じですよ、結論は。

 アメリカのNRCみたいに4000人も職員がいて、職員の流動性があって、職員が最新の知見を持っているっていうなら別ですよ。でも、原子力規制庁の審査官は80人、しかもロートルだ。そんなアメリカみたいなことは無理ですよね」

 ・・・残念ながら、それは概ね事実だった。


 これで、日本最大の関東電力の新崎原発を含め、定期検査入りした大井と合わせれば、フクシマ事故後に稼動する原発が15基となった。

 逮捕された知事に代わって、職務代理者の筆頭副知事が早々に、新崎原発の再稼動に同意すると表明した。わずか十数ページの周辺住民の避難計画が併せて公表されたが、紙の上の計画通りに物事が進むか、その検証はなされていなかった。しかし、県議会や地元経済界は歓迎のコメントを出した。

 日村があらかじめ入念に描いていたシナリオ通りのスムーズな手続きの流れであった。関東電力にはビッグなクリスマス・プレゼントとなっただろう。

 さすがにワイドショーも、本命の再稼動に関しては大きく取り上げた。時期は冬であり、電力は足りている。

 「円安で輸入価格が高騰していて、もうこれ以上化石燃料には頼れません」というのが、新しく原発文化人に加わったコメンテーターの主張だった。

 円高のときには資源高と言い、円安になると輸入価格の高騰と言う。原油自体の国際市場価格はピークに比べて大きく低下していることには最後まで触れずじまいだった。

 日本電力連盟の作成した原発文化人用の説明資料には、常に電力会社に都合のよい事実しか触れられていない。

 ここで、日本最大の原発の再稼動を職務代理者の権限で認めることはできるのかーそれが法律上は重要な論点であった。

 地方自治法上、職務代理者たる筆頭副知事の権限は、原則として知事の権限すべてに及ぶが、知事たる地位または身分に付随する一身専属的な権限、議会の解散、副知事等の任免などはできないと解されている。

 合法か違法かというレベルでいてば、まあ違法とは言い切れないまでも、妥当か不当かといえば、日本最大の原発の再稼動に対し、知事の逮捕中、選挙の洗礼を受けていない副知事の判断でゴーサインを出すというのは、明らかに「不当」と言えた。

 知事が辞職して知事選が始まっていれば、選挙戦の最大の争点とされていただろう。しかし、知事は逮捕後も容疑を全面的に否認し、辞職していなかった。

 「辞職していない以上は、副知事が判断できるのではないでしょうか。知事が知事の椅子に居座り続ける限り電力供給が滞る、そんなことは許されません。これは新崎県にとどまらない全国の問題なんですっ!」

 と、別の原発文化人は吼えた。日村からの事前説明のとおりの発言だった。

 こうして年末の御用納めまでには、日本全国で15基の原発が稼動することになった。フクシマでの三度のメルトダウンを乗り越えた、原子力ムラのみごとな復元力だった。

 

「第17章 再稼動」の紹介は、本日で終了です。

『原発ホワイトアウト』著書の紹介、長かったですがこれで終了します。

・・・6000ページ以上もある申請書類、どうやって数週間で審査できるのか・・・日本での審査は国のお墨付きを得た、という儀式にすぎなかった・・・


*『原発ホワイトアウト』著者:若杉冽 から、「第17章 再稼動」の過去紹介のリンク

【原発ホワイトアウト】第17章 再稼動 ※33回目の紹介

【原発ホワイトアウト】第17章 再稼動 ※34回目の紹介

【原発ホワイトアウト】第17章 再稼動 ※35回目の紹介

 


<過去に紹介した記事>

【原発ホワイトアウト】終章 爆弾低気圧 ※下の方に1~16回までのリンク一覧あり

【原発ホワイトアウト】第4章 落選議員回り ※下の方に17~21回までのリンク一覧あり

【原発ホワイトアウト】第13章日本電力連盟広報部 ※下の方に22~25回までのリンク一覧あり

【原発ホワイトアウト】第14章エネルギー基本計画の罠 ※下の方に26~32回までのリンク一覧あり


【原発ホワイトアウト】第17章 再稼動 ※35回目の紹介

2014-08-20 21:00:00 | 【原発ホワイトアウト】

*『原発ホワイトアウト』著者:若杉冽  から何度かに分けて紹介します。35回目の紹介  

 現役キャリア官僚のリアル告発ノベル!

 「政財官の融合体・・・ 日本の裏支配者の正体を教えよう」

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カスタマーレビュー)から

救いがあるとすれば著者・若杉冽氏の次の言葉だ。

  「まだまだ驚くべき事実はたくさんあるのです。

  こうした情報が国民に届けば、きっと世論のうねりが起きる。

  私が役所に残り続け、素性を明かさないのは、情報をとり続けるためです。

  さらに第二、第三の『若杉冽』を世に送り出すためにも」(毎日新聞 10月22日)

読み終わって私は、このままでは本書の予言どおり原発事故は再び起こる可能性が高い、と思った。

そして、表紙とびらに引用されたカール・マルクスの次の言葉が本書の内容を言い尽くしていると気づく。

  「歴史は繰りかえす、一度目は悲劇として、しかし二度目は喜劇として」。

この国の統治のあり方を根本的に変えなければ「二度目は喜劇」を防くことができない、と私は考える。

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<過去に紹介した記事>

【原発ホワイトアウト】終章 爆弾低気圧 ※下の方に1~16回までのリンク一覧あり

【原発ホワイトアウト】第4章 落選議員回り ※下の方に17~21回までのリンク一覧あり

【原発ホワイトアウト】第13章日本電力連盟広報部 ※下の方に22~25回までのリンク一覧あり

【原発ホワイトアウト】第14章エネルギー基本計画の罠 ※下の方に26~32回までのリンク一覧あり 

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【原発ホワイトアウト】第17章 再稼動  ※35回目の紹介

-『原発ホワイトアウト』著者:若杉冽 「第17章 再稼動」 を紹介

前回の話:【原発ホワイトアウト】第17章 再稼動 ※34回目の紹介

 「・・・原子力規制委員会が『安全です』っていうポーズさえキッチリ決めてくれれば、あとは自分たちだけが矢面に立つってことにならなければいいんです。仙内、戸鞠、高花、大井、井形の五箇所同時であれば、脱原発の連中の勢力も5分の1ずつに分散しますから」

 こう調子よく語る日村は、まさに人生の絶頂にあると言えた。原発の再稼動を叶えたあとは、その功績を引っ提げて経産省本省の枢要な局長ポストに戻る。もちろん事務次官も目の前だ・・・。

 そんな日村の内心を知ってから知らずか、赤沢はこう言って電話を切った。

 「君、しかし、あまり急ぎすぎるなよ。慢心こそ最大の敵だと言うじゃないか」


(42)

 -日村の告げたとおり、原子力規制委員会は、仙内1・2号機、戸鞠1・2・3号機、高花3・4号機、大井3・4号機、井形3号機の規制基準への適合を、12月初めの一回の審議で決めた。事務方でわずか5ヶ月審査しただけだった。

 その性急さに、戸惑いと驚きの声がマスコミを賑わしたが、

 「新しい規制基準の考え方自体は、公表の半年も前から示されておりましたので、事業者がそれに合わせて入念に準備された結果だと思います。予想よりも早く終わりました」

 と、委員長は平然と語っていた。

 原子力規制委員会のゴーサインに合わせる形で、間髪を入れずに、地元の知事と町長も、それぞれ地方議会の全員協議会を経たうえで、再稼動に同意を表明した。

 数年前の計画停電騒ぎはもう風化していた・・・「電力不足だから原発を動かします」という再稼動をもくろむ当初のロジックは破綻していたが、再稼動に対する国民のアレルギーも、同時に風化していた。

 ワイドショーが一通り騒ぎはしたが、「世界最高水準の規制基準に適合した安全なものは動かす」「電気料金の値上げも困る」ということで、一年半前の大井原発の再稼動ほどの騒ぎにはならなかった。


 第二弾は、厳海3・4号機、嶋根2号機の申請がなされ、それに加えて、当初は想定されていなかったが、なんといっても本命の関東電力の新崎原発6・7号機の再稼動の申請がそれに続いた。7月の段階では申請自体に意義を唱えた伊豆田新崎県知事は、逮捕拘留されてしまい、もう娑婆にはいない。

 第一弾を巡る世の中の反応を、電力会社も、原子力規制委員会も、そして日村も、よく見据えていた。

 「潮目が変わった」「大衆は喉元を過ぎて熱さを忘れた」というのが日村の認識だった。潮目の変化が起きたときには、誰よりも先にその流れに乗らなくてはならない。

 日村の読みどおり、原子力規制委員会は、今度はさらに審査速度を上げて、わずか数週間後に、規制基準にすべて適合との発表がなされた。

 原子力規制委員長は、
 
 「第一弾で審査した事項と同じ事項については、当然、同じ判断になります。したがって、審査のスピードは速くなりました」

 と、さらりと記者会見で述べる。

 6000ページ以上もある申請書類を、どうやって数週間で審査できるのか、と多くの人が疑問に感じていたが、内容が専門的すぎるため、突っ込みの入れようもない。

 日本電力連盟原子力部長は、原発再稼動に肯定的な保守系新聞社の論説委員との懇談の席で、次のように述べて理解を求めた。

 

8/18から「第17章 再稼動」の紹介中です。(毎日 21:00ぐらい)

・・・6000ページ以上もある申請書類、どうやって数週間で審査できるのか・・・日本での審査は国のお墨付きを得た、という儀式にすぎなかった・・・


<過去に紹介した記事>

【原発ホワイトアウト】終章 爆弾低気圧 ※下の方に1~16回までのリンク一覧あり

【原発ホワイトアウト】第4章 落選議員回り ※下の方に17~21回までのリンク一覧あり

【原発ホワイトアウト】第13章日本電力連盟広報部 ※下の方に22~25回までのリンク一覧あり

【原発ホワイトアウト】第14章エネルギー基本計画の罠 ※下の方に26~32回までのリンク一覧あり


【原発ホワイトアウト】第17章 再稼動 ※34回目の紹介

2014-08-19 21:00:00 | 【原発ホワイトアウト】

*『原発ホワイトアウト』著者:若杉冽  から何度かに分けて紹介します。34回目の紹介  

 現役キャリア官僚のリアル告発ノベル!

 「政財官の融合体・・・ 日本の裏支配者の正体を教えよう」

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カスタマーレビュー)から

救いがあるとすれば著者・若杉冽氏の次の言葉だ。

  「まだまだ驚くべき事実はたくさんあるのです。

  こうした情報が国民に届けば、きっと世論のうねりが起きる。

  私が役所に残り続け、素性を明かさないのは、情報をとり続けるためです。

  さらに第二、第三の『若杉冽』を世に送り出すためにも」(毎日新聞 10月22日)

読み終わって私は、このままでは本書の予言どおり原発事故は再び起こる可能性が高い、と思った。

そして、表紙とびらに引用されたカール・マルクスの次の言葉が本書の内容を言い尽くしていると気づく。

  「歴史は繰りかえす、一度目は悲劇として、しかし二度目は喜劇として」。

この国の統治のあり方を根本的に変えなければ「二度目は喜劇」を防くことができない、と私は考える。

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<過去に紹介した記事>

【原発ホワイトアウト】終章 爆弾低気圧 ※下の方に1~16回までのリンク一覧あり

【原発ホワイトアウト】第4章 落選議員回り ※下の方に17~21回までのリンク一覧あり

【原発ホワイトアウト】第13章日本電力連盟広報部 ※下の方に22~25回までのリンク一覧あり

【原発ホワイトアウト】第14章エネルギー基本計画の罠 ※下の方に26~32回までのリンク一覧あり 

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【原発ホワイトアウト】第17章 再稼動  ※34回目の紹介

-『原発ホワイトアウト』著者:若杉冽 「第17章 再稼動」 を紹介

前回の話:【原発ホワイトアウト】第17章 再稼動 ※33回目の紹介

 -特筆すべきは、公表された新しい規制基準は、すべて原発の敷地内のことに限られていたことである。

 原子力規制委員会と原子力規制庁が発足した際に、原子力発電所以外の安全規制の権限、たとえば原発以外の発電所や送電施設についての安全規制の権限は、すべて経済産業省に残された。

 チョンボがあったのは原発なのだから、原発以外の権限までをみすみす取り上げられる理由は経産省にはない。その結果、原子力発電所に直結する送電施設の安全性については、原子力気勢委員会が規制基準を見直すことにならなかった。

 周辺住民の避難計画も再稼動審査の前提要件にはならなかった。アメリカでは、スリーマイル島原発事故のあと、住民の避難計画が具体的に確立して始めて、原発の認可・運転が認められるが、政府の姿勢には天と地ほどの差がある。


 新しい規制基準の公表に合わせて、電力会社から再稼動の申請が原子力規制委員会に提出された。第一弾は、仙台1・2号機、戸鞠1・2・3号機、高花3・4号機、大井3・4号機、井形3号機であった。

 再稼動に至るプロセスは、①電力会社から再稼動の申請が原子力規制委員会になされ、②原子力規制委員会が電力会社の申請内容が規制基準に適合していることを認めたうえで、③立地自治体の同意があれば最終的に国が原発の再稼動を判断することになっている。

 どの知事だって、全国で先頭を切って再稼動を認めるのはいやだ。立地県の知事からそういう意向が内々に示され、資源エネルギー庁次長の日村直史が、電力会社の申請のタイミングも横並びを図るよう各電力会社と調整した結果だった。


 「今のところ、うまくいってるなあ」

 と、商工族のドン、赤沢浩一議員が日村に電話を入れてきた。

 「伊豆田知事もうまく葬り去ってくれた。ご苦労さん」

 赤沢は上機嫌だった。

 「いえ、総理を引っ張り出してくださったのは、赤沢先生ですから。私はただの介添役に過ぎません」

 日村は腕枕をしてやっていた瑠子の頭の下から腕を自由にして、自分の携帯に答えている。六本木のホテル、ザ・リッツ・カールトン東京の48階の部屋だ。

 「・・・まぁ、伊豆田のような頭のおかしい奴は別として、立地県の知事も電力会社も、結局は、『赤信号、みんなで渡れば怖くない』ってことですから。電力会社にとっては、核のゴミや原発の後始末といったことに頬かむりさえすれば、原発はジャラジャラ金が流れてくる現金製造機みたいなもんです」

 日村は窓の外に目をやった。東京タワーが、むしろ目線より下に見える。日本を牛耳っているのは俺だ・・・自分の不敵な笑いが窓に映る。

 瑠子の美しくくびれたウエストをもう片方の腕で抱き寄せる。20大前半の女が甘美な声を漏らしたので、あわてて日村は携帯を手で覆う。

 「・・・知事にとっても、電源立地地域対策交付金のカネを落としてほしい連中が地元にはワンサカいるんですから、原発はカネと票の製造機のようなもんです」

 自分にとっても原発はカネと力を生む装置だ-。

 今、自分の隣で美しい肢体を惜しみなく晒しているこの女は銀座のホステス見習いだが、日村がザ・リッツ・カールトンに誘ってみると、店がはねた後に、ためらいもなくシーリー社製の高級ベッドに転がり込むようになっていた。

 このホテルはもともと小島の紹介で、日村はデイユースの扱いということで、空室さえあれば、わずか1万円で利用することができていた。霞ヶ関や永田町からは距離があるので、顔見知りと出くわす可能性は少ない。

 瑠子との関係でも、ホテルとの関係でも、なんとなく裏で関東電力が補填していることは想像できなくはなかったが、そこをギリギリ詰めて清貧な生活を選ぶよりも、高級キャリア官僚という立場に見合った生活を当然のように選択した。

 表向きは、瑠子との関係も自由恋愛であるし、ホテルも合法的なデイユースなのだ。ホテルだって、カネの力にあかした成金の連中が集まるよりも、品のいい自分に利用してもらったほうが客層がよくなるだろう。密室からだといって一休ドットコムで売りさばくよりも、ホテルからみて望ましい客にデイユース名目で来てもらうほうが合理的だ。

 日村との関係を作ればG8サミットのような政府間の大きな国際会議を誘致できるかもしれないという打算もホテル側にはあるだろう。お互いウィン・ウィンの関係だ。

 

8/18から「第17章 再稼動」の紹介中です。(毎日 21:00ぐらい)

・・・6000ページ以上もある申請書類、どうやって数週間で審査できるのか・・・日本での審査は国のお墨付きを得た、という儀式にすぎなかった・・・


<過去に紹介した記事>

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【原発ホワイトアウト】第4章 落選議員回り ※下の方に17~21回までのリンク一覧あり

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【原発ホワイトアウト】第14章エネルギー基本計画の罠 ※下の方に26~32回までのリンク一覧あり


【原発ホワイトアウト】第17章 再稼動 ※33回目の紹介

2014-08-18 21:00:00 | 【原発ホワイトアウト】

*『原発ホワイトアウト』著者:若杉冽  から何度かに分けて紹介します。33回目の紹介  

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救いがあるとすれば著者・若杉冽氏の次の言葉だ。

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  こうした情報が国民に届けば、きっと世論のうねりが起きる。

  私が役所に残り続け、素性を明かさないのは、情報をとり続けるためです。

  さらに第二、第三の『若杉冽』を世に送り出すためにも」(毎日新聞 10月22日)

読み終わって私は、このままでは本書の予言どおり原発事故は再び起こる可能性が高い、と思った。

そして、表紙とびらに引用されたカール・マルクスの次の言葉が本書の内容を言い尽くしていると気づく。

  「歴史は繰りかえす、一度目は悲劇として、しかし二度目は喜劇として」。

この国の統治のあり方を根本的に変えなければ「二度目は喜劇」を防くことができない、と私は考える。

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【原発ホワイトアウト】第4章 落選議員回り ※下の方に17~21回までのリンク一覧あり

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【原発ホワイトアウト】第17章 再稼動  ※33回目の紹介

-『原発ホワイトアウト』著者:若杉冽 「第17章 再稼動」 を紹介

(41)

 再稼動に先立ち、7月の参院選の前に、原子力規制委員会は、新しい規制基準を策定・公表していた。

 公表された新しい規制基準では、原発自体の設計基準として、難燃性ケーブルの使用といった火災対策や、配管等の多重化など、信頼性向上対策を従来よりも格段に厳格に定めていた。

 また、万一事故が起こった際のシビアアクシデント対策として、フィルター付きベントの設置、非常用バッテリーの増強による電源喪失対策の実施、さらには、航空機衝突、テロ、炉心損傷などが発生した場合に備え、溶融炉心冷却ポンプの設置等も定めていた。

 さらに、原発を取り巻く自然現象への対応として、活断層の認定基準の厳格化、近傍の活断層による地震動評価、建物・建築物直下の活断層の有無の評価といった、地震対策を定めた。津波対策としては、基準津波の策定や防潮扉の設置を定めた。また火山対策としては、火山灰除けの設置が盛り込まれた。

 「考えうる対策をすべて盛り込んだ、国際的に見ても最高水準の、これ以上ない対策となった」

 と、原子力規制委員長は、記者会見で胸を張ったものだ。

 ただアメリカでは原発立地一ヶ所当たり原子炉の数は三基以下であり、日本もフクシマの連鎖を教訓として三基以下に抑えるべきであるという集中立地規制が原子力規制委員会で議論されていたが、その導入は見送られた。既に立地している日本の原発の現状が、この基準を満たさないからであった。

 「1つの原子力発電所に7基あったとしても、だいたい、そのうちいくつかは定期検査中ですから、全部動いているというわけではありません」

 ・・・委員長のこんなあいまいな言い方で、この集中立地規制は看過された。定期検査ですべての原発が稼動しているわけではないのはアメリカでも同じことである、にもかかわらずである。

 肝心の原子炉の安全性も、世界の最新の原発と比較してみると安全性が劣ることは明らかであった。

 たとえば、欧州加圧水型炉では、万一のメルトダウンの際にも、原子炉格納容器の底部にはコアキャッチャーがあり、過酷事故時には、炉心の溶融から出たデブリが冷却設備に導かれる。格納容器自体の大きさも日本の原発と比べるとかなり大型化されている。そして、格納容器の壁は二重構造となっており、外側壁は鉄筋コンクリート製で、外部からの航空機衝突の予防壁となっている。

 このような最新の安全性を確保した原発がヨーロッパのみならず中国でも導入されているのに、日本の規制基準には採用されなかった。日本の重電メーカーの製造する原発はこうした安全性を満たしていないからだ。

 IAEAが策定する国際的な安全基準にも、日本の経産省や文科省から出向している職員が強硬に反対し、最新の安全性は盛り込まれることなく骨抜きにされていた。

 フィルター付きベントについても、原子炉建屋と同一の基盤上に置かなければならない、という伊豆田新崎県知事からの警鐘は見事に無視されていた。フィルター付きベントを原子炉建屋から離れたところに置き、二つの施設を配管でつないだとすれば、大震災の際に起きる大きな揺れで、原子炉からフィルター付きベントに通じる長い配管は破断する可能性が高いにもかかわらず、である。

 除雪対策もおざなりだった。冷却に海水を利用するため海岸線に立地する原発は、海沿いにあるので豪雪に見舞われることは想定しづらい、という理由だった。

 テロ防止のために必要な、原発で働く下請け孫受け企業の社員の身元確認、その義務化も見送られた。フクシマ事故前から、放射線量の高い場所での危険な作業は、電力会社や重電メーカーの社員ではなく、下請けや孫受けの協力会社が担っている。しかし、四次下請け、五次下請けのレベルになると、暴力団が日雇い労働者を手配、斡旋するのが日常の姿だった。

 そうして集められる労働者は、アル中や家庭内暴力で妻子と分かれて独り身になった者、元ヤクザ、勤務先が倒産したりリストラされたりした者、非合法のギャンブルにはまり借金でがんじがらめになっている者、薬物中毒者、クレジットカードの借金が返済できない者、などである。生きるためには、身元確認や線量管理などが導入されては困るのだ。

 電力会社にとっても、線量の高い場所での危険な作業を担う人員が確保できなくなることは大問題だし、四次下請け、五次下請けを通じ、暴力団に人件費をピンハネさせて、不法勢力と水面下でつながることに有形無形のメリットを感じているため、身元確認の義務化には反対姿勢を貫いた。

 

8/18から「第17章 再稼動」の紹介中です。(毎日 21:00ぐらい)

・・・6000ページ以上もある申請書類、どうやって数週間で審査できるのか・・・日本での審査は国のお墨付きを得た、という儀式にすぎなかった・・・


<過去に紹介した記事>

【原発ホワイトアウト】終章 爆弾低気圧 ※下の方に1~16回までのリンク一覧あり

【原発ホワイトアウト】第4章 落選議員回り ※下の方に17~21回までのリンク一覧あり

【原発ホワイトアウト】第13章日本電力連盟広報部 ※下の方に22~25回までのリンク一覧あり

【原発ホワイトアウト】第14章エネルギー基本計画の罠 ※下の方に26~32回までのリンク一覧あり


【原発ホワイトアウト】第14章エネルギー基本計画の罠※32回目の紹介

2014-08-09 21:00:00 | 【原発ホワイトアウト】

*『原発ホワイトアウト』著者:若杉冽  から何度かに分けて紹介します。32回目の紹介  

 現役キャリア官僚のリアル告発ノベル!

 「政財官の融合体・・・ 日本の裏支配者の正体を教えよう」

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カスタマーレビュー)から

救いがあるとすれば著者・若杉冽氏の次の言葉だ。

  「まだまだ驚くべき事実はたくさんあるのです。

  こうした情報が国民に届けば、きっと世論のうねりが起きる。

  私が役所に残り続け、素性を明かさないのは、情報をとり続けるためです。

  さらに第二、第三の『若杉冽』を世に送り出すためにも」(毎日新聞 10月22日)

読み終わって私は、このままでは本書の予言どおり原発事故は再び起こる可能性が高い、と思った。

そして、表紙とびらに引用されたカール・マルクスの次の言葉が本書の内容を言い尽くしていると気づく。

  「歴史は繰りかえす、一度目は悲劇として、しかし二度目は喜劇として」。

この国の統治のあり方を根本的に変えなければ「二度目は喜劇」を防くことができない、と私は考える。

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【原発ホワイトアウト】第14章  エネルギー基本計画の罠  ※32回目の紹介

-『原発ホワイトアウト』著者:若杉冽 「第14章  エネルギー基本計画の罠」 を紹介

【登場人物】
 小島 厳 日本電力連盟常務理事 関東電力総務部長を経て日本電力連盟に出向
 日村 直史 経済産業省資源エネルギー庁次長
 赤沢 浩一 保守党資源・エネルギー戦略調査会長
 山野 一郎 保守党一匹狼議員

前回の話:【原発ホワイトアウト】第14章エネルギー基本計画の罠※31回目の紹介

 最後に、保守党経済産業部会長の木原が締め括りの挨拶に立った。

 「本日は、エネルギー基本計画と電気事業小売り自由化に関する資源エネルギー庁の説明に対し、部会の先生方に自由にご議論いただきました。傾聴すべきご意見を多数いただき、本当に感謝申し上げます。

 今日の皆様方のご議論を形に残して、政府における今後の法案化の作業が道を外れたものとならないように、一つ、ここは経済産業部会と資源・エネルギー戦略調査会との合同部会の緊急提言ということでまとめて、予算が固まる前に、経産大臣に、党の見解をキチンとお伝えしておきたいと思います。

 「よし!」と、若手から合いの手が入る。

 「緊急提言の内容については、私と赤沢調査会長とにご一任いただきたいと思いますが、よろしいでしょうか?よろしければ拍手でご承認ください」

 場内が拍手で包まれるなか、木原部会長がこう締め括った。

 「ご承認いただきありがとうございました。緊急提言を経済産業大臣にお伝えした結果は、また、次の部会で私から報告させていただきます。合同会議は、これにて終了させていただきます。本日はありがとうございました」

 翌朝、木原部会長の議員会館の部屋から、資源エネルギー庁にFAXが送られてきた。日本電力連盟が素案を書き、それを木原部会長が赤沢調査会長の了解を得たうえで送付したものと容易に想像できた。


 <資源エネルギー庁長官 殿

 平素からお世話になっております。別紙の通り、緊急提言をとりまとめましたので、ご送付申し上げます。

 資源エネルギー庁におかれましては、年末のお忙しいなか恐縮ですが、来月前半に大臣の面会をセットしていただけますようお願い申し上げます。

 経済産業部会長 木原 英治


 (別紙)
 緊急提言

 保守党経済産業部会
 資源・エネルギー戦略調査会


 経済産業大臣におかれては、エネルギー基本計画の国会報告および電気事業法改正案の国会提出にあたり、左の諸点に十二分に配慮し遺漏なき措置を講じるよう、緊急提言する。

 一 我が国産業の国際競争力を維持し更なる空洞化を防ぐため、電気の低廉かつ安定的な供給を実現できるよう、原子力発電所の安全性確保を前提とした早期再稼動に全力を尽くすこと。

 二 電力の小売り自由化が、原子力発電や核燃料サイクルの推進の妨げとならないよう、制度設計を行うこと。

 三 原子力発電や核燃料サイクルが市場競争にさらされて安全性に支障を来すことのないよう、発送電分離は慎重に検討すること。

 四 原子力発電所の長期間の運転停止で経済的に低迷している立地地域に来年度予算で抜本的な経済復興策を講じること。

 五 原発等のインフラ輸出でわが国経済を復興するため、民間まかせにせず、政府が本腰を入れてトップセールスに取り組むこと。

 六 原発の安全性に長期的な悪影響を与えることのないように、国公立、私立を問わず、大学の原子力工学科の魅力向上のための助成を来年度予算で措置すること。

 七 国民の原子力に対する拒否反応の克服に今後取り組むことにより、次々期エネルギー基本計画の改訂では、将来的な原子力の導入目標を明記し、わが国原子力産業の成長発展を政府としても期すること。

 八 再生可能エネルギーの固定価格買取制度は、電力市場をゆがめる措置であるため、小売り自由化を待たずに、速やかに買取価格の引き下げまたは廃止を行うこと。

  以上>

 立法府による行政府への民主的統制のメカニズムが働いている、といえば聞こえはいいが、その内実は、こうした既得権益側が国会議員を使って行政に圧力をかけ、法制度や事業の内容を我田引水に変質させることに他ならない。

 国の政治は、その国民の民度を超えられない。こうしたことが当たり前のように行われていることを許している国民の民度は、その程度のものなのである。

 

※「第14章  エネルギー基本計画の罠」は、今回で終了です。

引き続き、8/18から「第17章 再稼動」の紹介予定です。

・・・6000ページ以上もある申請書類、どうやって数週間で審査できるのか・・・日本での審査は国のお墨付きを得た、という儀式にすぎなかった・・・

 


*『原発ホワイトアウト』著者:若杉冽 から、「第14章  エネルギー基本計画の罠」の過去紹介のリンク

【原発ホワイトアウト】第14章エネルギー基本計画の罠※26回目の紹介

【原発ホワイトアウト】第14章エネルギー基本計画の罠※27回目の紹介

【原発ホワイトアウト】第14章エネルギー基本計画の罠※28回目の紹介

【原発ホワイトアウト】第14章エネルギー基本計画の罠※29回目の紹介

【原発ホワイトアウト】第14章エネルギー基本計画の罠※30回目の紹介

【原発ホワイトアウト】第14章エネルギー基本計画の罠※31回目の紹介

【原発ホワイトアウト】第14章エネルギー基本計画の罠※32回目の紹介


★過去紹介した記事>>【原発ホワイトアウト】終章 爆弾低気圧 ※下の方に1~16回までのリンク一覧あり

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★過去紹介した記事>>【原発ホワイトアウト】第13章日本電力連盟広報部 ※下の方に22~25回までのリンク一覧あり


【原発ホワイトアウト】第14章エネルギー基本計画の罠※31回目の紹介

2014-08-08 21:00:00 | 【原発ホワイトアウト】

*『原発ホワイトアウト』著者:若杉冽  から何度かに分けて紹介します。31回目の紹介  

 現役キャリア官僚のリアル告発ノベル!

 「政財官の融合体・・・ 日本の裏支配者の正体を教えよう」

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カスタマーレビュー)から

救いがあるとすれば著者・若杉冽氏の次の言葉だ。

  「まだまだ驚くべき事実はたくさんあるのです。

  こうした情報が国民に届けば、きっと世論のうねりが起きる。

  私が役所に残り続け、素性を明かさないのは、情報をとり続けるためです。

  さらに第二、第三の『若杉冽』を世に送り出すためにも」(毎日新聞 10月22日)

読み終わって私は、このままでは本書の予言どおり原発事故は再び起こる可能性が高い、と思った。

そして、表紙とびらに引用されたカール・マルクスの次の言葉が本書の内容を言い尽くしていると気づく。

  「歴史は繰りかえす、一度目は悲劇として、しかし二度目は喜劇として」。

この国の統治のあり方を根本的に変えなければ「二度目は喜劇」を防くことができない、と私は考える。

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★過去紹介した記事>>【原発ホワイトアウト】終章 爆弾低気圧 ※下の方に1~16回までのリンク一覧あり

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【原発ホワイトアウト】第14章  エネルギー基本計画の罠  ※31回目の紹介

-『原発ホワイトアウト』著者:若杉冽 「第14章  エネルギー基本計画の罠」 を紹介

【登場人物】
 小島 厳 日本電力連盟常務理事 関東電力総務部長を経て日本電力連盟に出向
 日村 直史 経済産業省資源エネルギー庁次長
 赤沢 浩一 保守党資源・エネルギー戦略調査会長
 山野 一郎 保守党一匹狼議員

前回の話:【原発ホワイトアウト】第14章エネルギー基本計画の罠※30回目の紹介 

(36)

 私設秘書の通行証で合同会議に入室していた日本電力連盟の職員が、必死に議事メモを取っている。議員の私設秘書に対する国会への通行証の発行は、極めて甘い。私設秘書は資格要件もないので、議員の希望次第で何枚も発行できるのである。

 日本電力連盟は、気脈を通じた議員から何枚も私設秘書としての通行証を横流ししてもらっており、永田町のどこに日本電力連盟の職員が潜んでいるかわからない。

 この議事メモは、やがて議員に対する政治献金やパーティー券購入の査定の材料となる。そのためか、次々と若手議員が発言する・・・。

 「赤沢先生のお話には、たいへん感銘を受けました。やはり国の指導者は、理想論に溺れることなく、冷徹なリアリストにならなくてはなりません。途上国を含め世界中で産業の競争が激化しているなか、電力の小売自由化も結構なことではありますが、自由化によって原発の推進にマイナスがないよう、資源エネルギー庁には十分配慮していただきたい」

 「フクシマの事故で日本の原子力産業のイメージが国際的に悪くなっていることを非常に危惧しています。韓国勢やフランス勢に勝つためには、事故前以上に政府が本腰を入れて、総理以下全閣僚がセールスに力を入れていただきたい」

 「私は、大学の原子力工学科の入学希望者数の低迷が気になります。再生可能エネルギーに頼れない以上は、原発に頼らざるを得ない。原発の安全性のためにも、良質な人材が供給されることは絶対的に重要であります。1つ思い切って、原子力工学科に文科省の大学予算をドンと付けていただいて、原子力工学科に入れば教育環境や研究環境がバラ色だ、って具合になるようにお願いしますよ」

 「発送電分離は将来の話だと思いますけどね、1つ注文しておきます。原子力は安全性が第一なんだから、やはり競争にははじまない、と思いますよ。送配電と原子力発電を電力の重要インフラとして一体的に、これはやはり現在の地域の電力会社にお委ねして、火力や再生可能エネルギーは思いっきり競争して効率化を進めていただく・・・こういうバランスが大切だと思いますよ。これも、また、1つの選択肢として視野にいれていただく、ということを当局にお約束いただかないと、このエネルギー基本計画と電力小売自由化の報告は、お認めするわけにはいきません」

 同じ時間帯に国土交通部会や農林部会、水産部会も開催されている。保守党では各部会のメンバーは固定化されておらず、議員はどの部会に顔を出してもよい。既得権益にアピールすることができる大事な商売の書き入れ時に、国土交通部会や農林部会、水産部会を欠席して、わざわざ経済産業部会に顔を出して、時間を費やしているのである。

 -その労力に見合った対価を得ようと、若手議員は必死だった。

 電力会社の既得権を擁護し、電力システム改革を少しでも後退させ、福島の事故の前にすべてを復元させる-こうした姿を標榜するかのような発言が怒涛のように続く。

 この場での様子がマスコミにオープンになっていれば、国民の目を気にして、ある程度の抑制が働くのだが、国民の監視から離れた密室の議論なので、そういう箍が外れているのだ。

 各常任委員会の理事会が開催される9時50分近くまで、延々とサンドバッグのように資源エネルギー庁にパンチが打ち込まれた。行政の側には反論は認められていないので、対等で建設的な議論とはならない。日本電力連盟常務理事の小島厳が若手議員に仕込んでいた弾薬は、すべて着火し炸裂した。

 こうしたやりとりも、すべて計算の範囲内である日村にとっては、この合同会議は通過儀礼だった。しかし、政治的にこなれていない秀才タイプの長官や随行している若手課長補佐からすると、この会は、未開の地での野蛮人による公開処刑のように感じられた。

 

※「第14章  エネルギー基本計画の罠」は、8/3~ 紹介中です。

・・・既得権益側が国会議員を使って行政に圧力をかけ・・国民に見えないところで、こうしたことが当たり前に行われている・・・


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【原発ホワイトアウト】第14章エネルギー基本計画の罠※30回目の紹介

2014-08-07 21:00:00 | 【原発ホワイトアウト】

*『原発ホワイトアウト』著者:若杉冽  から何度かに分けて紹介します。30回目の紹介  

 現役キャリア官僚のリアル告発ノベル!

 「政財官の融合体・・・ 日本の裏支配者の正体を教えよう」

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カスタマーレビュー)から

救いがあるとすれば著者・若杉冽氏の次の言葉だ。

  「まだまだ驚くべき事実はたくさんあるのです。

  こうした情報が国民に届けば、きっと世論のうねりが起きる。

  私が役所に残り続け、素性を明かさないのは、情報をとり続けるためです。

  さらに第二、第三の『若杉冽』を世に送り出すためにも」(毎日新聞 10月22日)

読み終わって私は、このままでは本書の予言どおり原発事故は再び起こる可能性が高い、と思った。

そして、表紙とびらに引用されたカール・マルクスの次の言葉が本書の内容を言い尽くしていると気づく。

  「歴史は繰りかえす、一度目は悲劇として、しかし二度目は喜劇として」。

この国の統治のあり方を根本的に変えなければ「二度目は喜劇」を防くことができない、と私は考える。

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★過去紹介した記事>>【原発ホワイトアウト】終章 爆弾低気圧 ※下の方に1~16回までのリンク一覧あり

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【原発ホワイトアウト】第14章  エネルギー基本計画の罠  ※30回目の紹介

-『原発ホワイトアウト』著者:若杉冽 「第14章  エネルギー基本計画の罠」 を紹介

【登場人物】
 小島 厳 日本電力連盟常務理事 関東電力総務部長を経て日本電力連盟に出向
 日村 直史 経済産業省資源エネルギー庁次長
 赤沢 浩一 保守党資源・エネルギー戦略調査会長
 山野 一郎 保守党一匹狼議員

前回の話:【原発ホワイトアウト】第14章エネルギー基本計画の罠※29回目の紹介 

 場が静まり返った。反論しがたい正論だ。

 山野は有名な政治家一族の三世議員である。政治家の世襲はマスコミからは批判されることが多いが、選挙やカネに気を遣いすぎることなく勉強し、正論を主張できるという意味では、地盤と看板を引き継ぐ世襲は、むしろ長所にもなる。

 少し間を置いて、赤沢がおもむろに立ち上がった。場内の視線が赤沢に集中した。

 「山野先生のおっしゃることは、まったくもって正論であります」

 赤沢は、満座の議員たちを見回した。

 「・・・私どもも皆、放射性廃棄物を出す原子力発電所が、今のままでいいとは思っていません」

 場内がざわつき始めた。

 「再生エネルギーの普及に最大限政策資源を投入していくということは、先ほどの資源エネルギー庁の説明にもありました。その点は、ここにいる全員のご同意がいただけるのであろうかと存じます。

 他方、我々は、長期的な視点でエネルギー問題を考えていく必要があるわけです。再生可能エネルギーの普及だけに賭けるという一本足で本当にいいのか?それは博打ではないか?原子力だって、技術開発が進めば、放射性廃棄物を無害化する核種転換や放射性廃棄物の半減期を縮小する技術も進むことでありましょう」

 今度は山野が立ち上がった。

 「そんな技術が進む確証は、どこにあるんでしょうか?現代の錬金術のような話ではないでしょうかっ」

 赤沢は慌てない。

 「・・・いや、山野先生、落ち着いて。私の話が終わるまで聞いてください。山野先生の議論を、私は正論だと認めているんですよ」

 山野が椅子に腰を下ろした。赤沢が続ける。

 「・・・ただ、放射性廃棄物と温室効果ガスとでは、決定的に違う点が1つある。何かわかりますか、山野先生」

 山野は押し黙った。赤沢は語気を強める。

 「それはっ、国際的枠組みであります!地球温暖化は京都議定書以降、温室効果ガスを削減しようという国際的な約束ができ、その次の枠組みも各国が誠意をもってお交渉中であります。いわば世界共通の課題であります。

 それに対し、原子力発電はどうか?原子力発電は、欧州の一部の国が脱原発を決めているとはいえ、アジアをはじめとした途上国では、むしろドンドン推進していこうという国が多いんですね。この場にいらっしゃる先生方には釈迦に説法ですが、国際的には原発推進が全体的な気運であります。原子力ルネッサンスと言われる時代でもあります。

 そういうなかで、我が国だけが、将来世代の負担を考えよ、などといったキレイごとを述べて脱原発に舵を切ったのでは、わが国の産業は国際競争にまけてしまう。違いますか?」

 「そうだ!」

 「その通りっ」

 合いの手が入る。

 「・・・ですから、仮に将来的に脱原発の国際合意ができるような事態が発生したら、山野先生のおっしゃるような省エネと再生可能エネルギーの二者択一のエネルギー基本計画にすればいい。しかし、そういう事態にならないのに、この世界的な原子力ルネッサンスの時代に、日本だけが脱原発と叫んで、素っ裸になってフリチンで外を走るようなエネルギー基本計画は、断じて認めるわけにはいかないのでありますっ!」

 赤沢はこう、気勢を揚げた。

 場内が大きな拍手に包まれた。
 
 原子力ルネッサンス、というのは、将来、世界的に原子力発電が拡大していく、というバーセプションを広めるための原子力ムラによるキャンペーンの標語である。チェルノブイリ原発事故以降、5年に一度くらい、手を替え品を替え、原子力ムラは、全世界でキャンペーンを張ってきた。

 「国内ではなかなか原発が建たないけれども、世界では原発がドンドン建ちますから、原子力産業の未来は明るいんです」という業界の自己暗示だった。

 敵を欺くにはまず味方を欺け、ということだ。

 原子力業界を継続的にウォッチしていれば、業界が、常に明るい見通しを、素人相手に示すことが習い性であることに気がつく。そうしなければ、人材も、研究資金も、投資資金も回ってこない。原子力ムラ以外の素人の政治家や官僚、そして経験と勉強の浅い記者たちは、素直にこうしたキャンペーンの標語をそのまま飲み込んでしまう。

 しかし、現実の数字を見れば、世界の原発の設備容量は、スリーマイル島原発の事故前に想定されていた10億キロワットには遠く及ばす、1990年代以降は4億キロワットにも満たずに、ほぼ横ばいの状態が続いている。アジアでいくつか原発の立地が進んでいるが、欧州では廃炉が進んでいるからだ。

 

※「第14章  エネルギー基本計画の罠」は、8/3~ 紹介中です。

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【原発ホワイトアウト】第14章エネルギー基本計画の罠※29回目の紹介

2014-08-06 21:00:00 | 【原発ホワイトアウト】

*『原発ホワイトアウト』著者:若杉冽  から何度かに分けて紹介します。29回目の紹介  

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 「政財官の融合体・・・ 日本の裏支配者の正体を教えよう」

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救いがあるとすれば著者・若杉冽氏の次の言葉だ。

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  こうした情報が国民に届けば、きっと世論のうねりが起きる。

  私が役所に残り続け、素性を明かさないのは、情報をとり続けるためです。

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読み終わって私は、このままでは本書の予言どおり原発事故は再び起こる可能性が高い、と思った。

そして、表紙とびらに引用されたカール・マルクスの次の言葉が本書の内容を言い尽くしていると気づく。

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この国の統治のあり方を根本的に変えなければ「二度目は喜劇」を防くことができない、と私は考える。

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【原発ホワイトアウト】第14章  エネルギー基本計画の罠  ※29回目の紹介

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【登場人物】
 小島 厳 日本電力連盟常務理事 関東電力総務部長を経て日本電力連盟に出向
 日村 直史 経済産業省資源エネルギー庁次長
 赤沢 浩一 保守党資源・エネルギー戦略調査会長
 山野 一郎 保守党一匹狼議員

前回の話:【原発ホワイトアウト】第14章エネルギー基本計画の罠※28回目の紹介

 会議室が静まり返った。

 「・・・資源エネルギー庁、何かありますか?」

 部会長が促す。

 長官は顔を紅潮させたまま口を開こうとしない。もっとも痛い点を突かれたのだ。小売の自由化の裏で、固定価格買取制度は廃止して、再生可能エネルギーの普及に逆櫓を付けるつもりだったからだ。インテリはロジックに強いからこそ、ロジックで攻められると弱い。

 長官に一言小声で断ったうえで、おもむろに日村が手を挙げた。

 「じゃ、日村次長から」

 部会長が日村を指名した。

 「・・・再生可能エネルギーの普及にも最大限、政策資源を投入することは、この基本計画の改正案にも規定されております。ただ現行の固定価格買取制度は、電力会社の地域独占を前提にしたものでありますので、電力システム改革を行っていくなかで、新しい電気事業法制の在り方に即して、必要な見直しを行っていくものと考えております」

 日村はこう述べ、赤沢の顔に一瞬目を向けてから着席した。赤沢の表情に変化はなかったので、日村は安堵した。

 「今の資源エネルギー庁の説明は、結局、今後決める、今は決めない、という先送りでありますっ」

 山野は反論する。

 「それでいいだろっ!」

 フロアーの陣笠議員から野次が飛んだ。

 山野が続けた。

 「それでは、結局、フクシマ以前の状態と変わらなくなるのではないでしょうか?原子力の核のゴミの処理費用は税や補助金で優遇して人為的に安く設定して、再生可能エネルギーその他の電源に原子力の廃炉や放射性廃棄物処理のコストまで上乗せして、託送料金を高く設定する・・・・こういうことを、まずもって資源エネルギー庁には改めていただきたい。

 化石エネルギーには温室効果ガスが、原子力エネルギーには放射性廃棄物がそれぞれ必然的に発生するわけでありますから、どちらも望ましい電源であるはずがありません。フクシマ後のエネルギー政策は、省エネか再生可能エネルギーかの二者択一とするべきであります!」
 山野は臆せず発言する。

 「経済はどうなるんだ!産業の空洞化を招くぞ!」

 「我慢か、高い電気料金か、そのどちらかを強制することになるんだぞっ」

 野次が相次いだ。しかし、山野は怯まない。

 「原発がコスト的には割高の電源と正直に認めなければ、結局、核のゴミの処理を将来に付け回すことになるのであります。この構図は、地球温暖化とまったく同じであります!」

 

※「第14章  エネルギー基本計画の罠」は、8/3~ 紹介中です。

・・・既得権益側が国会議員を使って行政に圧力をかけ・・国民に見えないところで、こうしたことが当たり前に行われている・・・


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【原発ホワイトアウト】第14章エネルギー基本計画の罠※28回目の紹介

2014-08-05 21:00:00 | 【原発ホワイトアウト】

*『原発ホワイトアウト』著者:若杉冽  から何度かに分けて紹介します。28回目の紹介  

 現役キャリア官僚のリアル告発ノベル!

 「政財官の融合体・・・ 日本の裏支配者の正体を教えよう」

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カスタマーレビュー)から

救いがあるとすれば著者・若杉冽氏の次の言葉だ。

  「まだまだ驚くべき事実はたくさんあるのです。

  こうした情報が国民に届けば、きっと世論のうねりが起きる。

  私が役所に残り続け、素性を明かさないのは、情報をとり続けるためです。

  さらに第二、第三の『若杉冽』を世に送り出すためにも」(毎日新聞 10月22日)

読み終わって私は、このままでは本書の予言どおり原発事故は再び起こる可能性が高い、と思った。

そして、表紙とびらに引用されたカール・マルクスの次の言葉が本書の内容を言い尽くしていると気づく。

  「歴史は繰りかえす、一度目は悲劇として、しかし二度目は喜劇として」。

この国の統治のあり方を根本的に変えなければ「二度目は喜劇」を防くことができない、と私は考える。

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★過去紹介した記事>>【原発ホワイトアウト】終章 爆弾低気圧 ※下の方に1~16回までのリンク一覧あり

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【原発ホワイトアウト】第14章  エネルギー基本計画の罠  ※28回目の紹介

-『原発ホワイトアウト』著者:若杉冽 「第14章  エネルギー基本計画の罠」 を紹介

【登場人物】
 小島 厳 日本電力連盟常務理事 関東電力総務部長を経て日本電力連盟に出向
 日村 直史 経済産業省資源エネルギー庁次長
 赤沢 浩一 保守党資源・エネルギー戦略調査会長
 山野 一郎 保守党一匹狼議員

前回の話:【原発ホワイトアウト】第14章エネルギー基本計画の罠※27回目の紹介

 資源エネルギー庁長官は、こう熱弁をふるう。

 「我が国がフクシマの事故を起こしたからといって、地球温暖化防止の国際的な責任が軽減されるわけではありません。したがって石炭、石油、天然ガス、そしてシェールガスも含めた化石燃料への依存度は、2020年までに温室効果ガスの対1990年比25パーセント削減という民自党内閣時代の目標をどのように設定し直すか次第ではありますが、いずれにせよ、かなりの程度低減させていかざるをえません。

 仮に、保守党政権が政権交代前に設定した15パーセント削減ということであれば、徹底した省エネルギーを前提として、残りを原子力、または太陽光や風力等の再生可能エネルギーで補うことになります」

 温室効果ガスの削減を所与の条件とすれば、省エネか、温室効果ガスを排出しない原子力か、再生可能エネルギーか、との三者択一となる。ここで再生可能エネルギーは不安定で当てにならない、という判断を加えて選択肢から除外するならば、1990年代以降、温室効果ガスを理由に原発を推進したロジックとまったく同一になる。

 既に参院選前から、政権は、国民の根強い原子力に対する反発に配慮し、将来の原子力の比率を改正エネルギー基本計画には明示することは難しい、という見解を示していた。明示しないということは、アンチ原発派に対しては原発ゼロの可能性もゼロではないと言いうるし、原発推進派に対しては原発大増設の可能性があると言いうる、ということだ。相手に応じていかようにでも言い逃れできる計画にする、ということ・・・。

 「私どもといたしましては、電気事業の小売りの自由化を通じまして、国民の皆様が電源を選択する自由を確保することにより、再生可能エネルギーの普及が国民の希望であるのであれば、それを実現できる環境を整備いたします」

 そう資源エネルギー庁長官は続ける。

 一見、国民の希望を叶えるというもっともな政策のように聞こえる。しかし、これには裏がある。

 小売の自由化で、再生可能エネルギーを売る小売事業者の電気の供給が不安定で高い価格であれば、再生可能エネルギーを選択しない国民が大多数となる。その場合には、次のステップとして「再生可能エネルギーを多くの国民は選択しませんでした。その結果、原発の増設が必要になりました」という政策に持っていけることになる。


 説明が終わるや否や、間髪を入れずに、保守党のなかではやや異色の、原子力に懐疑的なことで著名な山野一郎議員が手を挙げた。テレビなどで国民的には人気があり、選挙も滅法強いが、党内では一匹狼である。

 「電力の小売の自由化はたいへん結構なことだと思います。が、電力の小売の自由化を実現した場合に、現在講じている再生可能エネルギーの固定価格買取制度はどうなるのでしょうか?固定価格買取制度のおかげで、わが国でも続々とメガソーラーや風力発電所が建設されています。発送電分離がなされるまでは現在の電力会社は固定価格買取制度を続けることを、この場で約束してください」

 

※「第14章  エネルギー基本計画の罠」は、8/3~ 紹介中です。

・・・既得権益側が国会議員を使って行政に圧力をかけ・・国民に見えないところで、こうしたことが当たり前に行われている・・・


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【原発ホワイトアウト】第14章エネルギー基本計画の罠※27回目の紹介

2014-08-04 21:00:08 | 【原発ホワイトアウト】

*『原発ホワイトアウト』著者:若杉冽  から何度かに分けて紹介します。27回目の紹介  

 現役キャリア官僚のリアル告発ノベル!

 「政財官の融合体・・・ 日本の裏支配者の正体を教えよう」

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カスタマーレビュー)から

救いがあるとすれば著者・若杉冽氏の次の言葉だ。

  「まだまだ驚くべき事実はたくさんあるのです。

  こうした情報が国民に届けば、きっと世論のうねりが起きる。

  私が役所に残り続け、素性を明かさないのは、情報をとり続けるためです。

  さらに第二、第三の『若杉冽』を世に送り出すためにも」(毎日新聞 10月22日)

読み終わって私は、このままでは本書の予言どおり原発事故は再び起こる可能性が高い、と思った。

そして、表紙とびらに引用されたカール・マルクスの次の言葉が本書の内容を言い尽くしていると気づく。

  「歴史は繰りかえす、一度目は悲劇として、しかし二度目は喜劇として」。

この国の統治のあり方を根本的に変えなければ「二度目は喜劇」を防くことができない、と私は考える。

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★過去紹介した記事>>【原発ホワイトアウト】終章 爆弾低気圧 ※下の方に1~16回までのリンク一覧あり

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【原発ホワイトアウト】第14章  エネルギー基本計画の罠  ※27回目の紹介

-『原発ホワイトアウト』著者:若杉冽 「第14章  エネルギー基本計画の罠」 を紹介

【登場人物】
 小島 厳 日本電力連盟常務理事 関東電力総務部長を経て日本電力連盟に出向
 日村 直史 経済産業省資源エネルギー庁次長
 赤沢 浩一 保守党資源・エネルギー戦略調査会長
 山野 一郎 保守党一匹狼議員

前回の話:【原発ホワイトアウト】第14章エネルギー基本計画の罠※26回目の紹介

 税制や予算をめぐる狂想曲が佳境に入る最中、11月最終週の火曜日朝8時、保守党本部7回の701号室で、保守党の経済産業部会と資源・エネルギー戦略調査会の合同会議が開かれた。

 平場、すなわち一般の議員の席、それと向き合う形で設けられた最前列の席、いわゆる「ひな壇」の中心に、当選5回の経済産業部会長の木原英治と、商工族のドン・資源エネルギー戦略調査会長の赤沢浩一が座った。

 形式的には、経済産業部会が保守党の正式なラインの意思決定機関であるが、まだ大臣経験もない部会長の木原は司会進行役に過ぎず、部会長の隣に座る赤沢が意思決定の実質的責任者であった。

 本日の議題は、広報上は、「エネルギー基本計画および電気事業小売り自由化を巡る自由討議」と記されていた。説明者として、資源エネルギー庁長官と次長の日村直史がメイン・テーブルの端に並んでの着席を許された。

 「本日は、お忙しいなかお集まりいただき、どうもありがとうございます。ただいまから経済産業部会と資源・エネルギー戦略調査会の合同会議を開催します。本日の議題は、エネルギー基本計画および電気事業小売自由化をめぐる自由討議、であります。説明者は、資源エネルギー庁長官です。では、まず長官からお願いしますっ」

 木原部会長が口火を切った。

 通常の法案は、閣議決定の直前まで、内容が保守党の部会に諮られることはないが、エネルギー基本計画も電力小売自由化も大きな話なので、赤沢のイニシアティブで、特別に、このような機会が設けられた。それだけ電力会社と経済産業省・資源エネルギー庁との距離感が大きい、ということでもあった。

 「それでは、エネルギー基本計画と電気事業小売自由化についての私どもの考え方についてご説明いたします」

 と、資源エネルギー庁長官が説明を始めた。

 エネルギー基本計画は、もともと十数年前までは長期エネルギー需給見通しと呼ばれており、通商産業省資源エネルギー庁におかれた総合資源エネルギー調査会という名の審議会において、人口推計などと同様に、科学的見地から策定されていた。

 しかし、スリーマイル島やチェルノブイリの原発事故、国内でも美浜原発の蒸気発生器細管のギロチン破断事故などを経て、原子力発電所の立地が進まなくなってきたことに焦りを覚えた原子力ムラが、保守党の赤沢や民自党の組合系議員に陳情し、2002年に議員立法でエネルギー政策基本法を成立させた。

 この法律では、従来の審議会での科学的な「長期エネルギー需給見通し」を、計画経済的な「エネルギー基本計画」に改称し、経済産業大臣がエネルギー基本計画を閣議決定し、国会に報告する義務を規定した。これにより、エネルギー行政は、マーケットメカニズムと科学的分析が律する世界から、「2030年までに原発を少なくとも14基以上新増設する」という毛沢東の大躍進政策級の国家計画に転換されてしまった。

 原子力ムラからの献金やパーティー券購入につられ、「政治主導」という美名の下で、国会議員からの圧力が行政の科学的客観性を歪めてしまった好例である。

 

※「第14章  エネルギー基本計画の罠」は、8/3~ 紹介中です。

・・・既得権益側が国会議員を使って行政に圧力をかけ・・国民に見えないところで、こうしたことが当たり前に行われている・・・


★過去紹介した記事>>【原発ホワイトアウト】終章 爆弾低気圧 ※下の方に1~16回までのリンク一覧あり

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【原発ホワイトアウト】第14章エネルギー基本計画の罠※26回目の紹介

2014-08-03 21:00:00 | 【原発ホワイトアウト】

*『原発ホワイトアウト』著者:若杉冽  から何度かに分けて紹介します。26回目の紹介  

 現役キャリア官僚のリアル告発ノベル!

 「政財官の融合体・・・ 日本の裏支配者の正体を教えよう」

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カスタマーレビュー)から

救いがあるとすれば著者・若杉冽氏の次の言葉だ。

  「まだまだ驚くべき事実はたくさんあるのです。

  こうした情報が国民に届けば、きっと世論のうねりが起きる。

  私が役所に残り続け、素性を明かさないのは、情報をとり続けるためです。

  さらに第二、第三の『若杉冽』を世に送り出すためにも」(毎日新聞 10月22日)

読み終わって私は、このままでは本書の予言どおり原発事故は再び起こる可能性が高い、と思った。

そして、表紙とびらに引用されたカール・マルクスの次の言葉が本書の内容を言い尽くしていると気づく。

  「歴史は繰りかえす、一度目は悲劇として、しかし二度目は喜劇として」。

この国の統治のあり方を根本的に変えなければ「二度目は喜劇」を防くことができない、と私は考える。

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【原発ホワイトアウト】第14章  エネルギー基本計画の罠  ※26回目の紹介

-『原発ホワイトアウト』著者:若杉冽 「第14章  エネルギー基本計画の罠」 を紹介

【登場人物】
 小島 厳 日本電力連盟常務理事 関東電力総務部長を経て日本電力連盟に出向
 日村 直史 経済産業省資源エネルギー庁次長
 赤沢 浩一 保守党資源・エネルギー戦略調査会長
 山野 一郎 保守党一匹狼議員

(35)

 永田町は師走が近づくと段々と慌ただしくなる。

 例年、永田町では、秋に数ヶ月の臨時国会が召集されるが、その長さは、時の政権の力や政治状況によって異なる。

 直近の選挙で敗北していたり、大きなスキャンダルが火を噴いたりして政権基盤が弱体化している場合には、臨時国家をできるだけ短く済まそうとする。野党に攻撃の機会を与えないようにするためだ。そうして会期は短く済まそうとする。野党に攻撃の機会を与えないようにするためだ。そうして会期は短く設定したうえで、内閣改造や大規模補正予算などで、政権を浮揚させるよう努力する。

 他方、今回の保守党政権のように、二度の国政選挙に連続して勝利し政権基盤が固まった場合には、二つのパターンがありうる。

 1つ目のパターンは、政権の力を誇示するように、9月はじめから12月上旬という長さで臨時国会の会期を設定するケースだ。この場合は、臨時国会に続く年明けの通常国会も延長となったりすれば、事実上一年中、国会を開くような状況となる。歴代の総理のなかで、政権基盤が固まり、かつ、総理の気力体力が充実し、与党内での求心力が高まっている場合は、こうしたパターンを採ることが多かった。

 保守党のなかでは、来る臨時国会を「ねじれ解消・滞賃一掃国会」と銘打って、民自党政権時代に国政が混乱して法案成立が滞ったことを挽回するための臨時国会と位置付けるべきだという声が高まった。そして、衆参ねじれの解消を背景に、法案を機械的に次々と処理していくべきだ、との意見も岩崎道夫幹事長を中心に主張されていた。

 しかし、官邸はもうひとつのパターンを選択した。内閣改造を9月末に行ったうえで、臨時国会は10月15日から2ヶ月弱の会期で召集されることになったのだ。

 この8ヶ月で国政選挙が衆参と続いて2回あったので、少しはのんびりしたいというのが多くの議員の本音であった。こうした国会議員の本音を忖度した、という理由のほかに、実は総理の健康問題への不安という理由もあったが、それが厳格な緘口令の下に置かれた。

 臨時国会に加えて、11月下旬になると保守党の税制調査会も始まる。

 保守党は長年、租税特別措置法によって、古い産業界の既得権を税制の活用という手段で擁護してきた。毎年、政府税調で、「優遇税制は原則廃止」といった厳しめの議論をさせて、産業界に対し「租税特別措置の恩典がなくなるかもしれない」と脅す。その後に続く保守党税調で、ギャラリーを前に、族議員が既得権の優遇税制の堅持を訴えて、政治的にそれを勝ち取り、産業界に恩を売る。そういう一種の政治ショーだった。

 さらに、年末にかけては予算の獲得が政治家にとっては重要な仕事である。

 農協、ゼネコン、医師会といった、既得権益を持った業界団体の組織力をフル稼働して2度の国政選挙に勝利した保守党としては、予算をつけるという形で恩返しをすることになった。今世紀に入って、「構造改革」やら「コンクリートから人へ」といたスローガンで痛めつけられてきた既得権側の業界からすれば、それは恵みの雨でもあり、福音であった。

 

※「第14章  エネルギー基本計画の罠」の紹介は、8/3(本日)~

・・・既得権益側が国会議員を使って行政に圧力をかけ・・国民に見えないところで、こうしたことが当たり前に行われている・・・


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【原発ホワイトアウト】第13章日本電力連盟広報部※25回目の紹介

2014-08-02 21:00:00 | 【原発ホワイトアウト】

*『原発ホワイトアウト』著者:若杉冽  から何度かに分けて紹介します。25回目の紹介  

 現役キャリア官僚のリアル告発ノベル!

 「政財官の融合体・・・ 日本の裏支配者の正体を教えよう」

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カスタマーレビュー)から

救いがあるとすれば著者・若杉冽氏の次の言葉だ。

  「まだまだ驚くべき事実はたくさんあるのです。

  こうした情報が国民に届けば、きっと世論のうねりが起きる。

  私が役所に残り続け、素性を明かさないのは、情報をとり続けるためです。

  さらに第二、第三の『若杉冽』を世に送り出すためにも」(毎日新聞 10月22日)

読み終わって私は、このままでは本書の予言どおり原発事故は再び起こる可能性が高い、と思った。

そして、表紙とびらに引用されたカール・マルクスの次の言葉が本書の内容を言い尽くしていると気づく。

  「歴史は繰りかえす、一度目は悲劇として、しかし二度目は喜劇として」。

この国の統治のあり方を根本的に変えなければ「二度目は喜劇」を防くことができない、と私は考える。

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★過去紹介した記事>>【原発ホワイトアウト】終章 爆弾低気圧 ※下の方に1回~16回までのリンク一覧あり

★過去紹介した記事>>【原発ホワイトアウト】第4章 落選議員回り ※下の方に17回~21回までのリンク一覧あり

【原発ホワイトアウト】第13章 日本電力連盟広報部  ※25回目の紹介

-『原発ホワイトアウト』著者:若杉冽 「第13章 日本電力連盟広報部」 を紹介

【登場人物】
 小島 厳 日本電力連盟常務理事 関東電力総務部長を経て日本電力連盟に出向

前回の話【原発ホワイトアウト】第13章日本電力連盟広報部※24回目の紹介

 テレビのニュース番組やワイドショーのプロデューサー・クラスには、広報部の5名と副部長が手分けして当たり、新聞各紙の編集局長には、広報部長と小島が手分けをして当たった。

 各誌の編集局長は、「朝経新聞」を除き、年度は違えども、全員、日本電力連盟が費用丸抱えで参加させた海外電力事情調査団で、一週間ともに欧州を旅行した仲だ。気安く電話ができる。今回の一連の報道が直接、電力会社に対するものでないことも好都合だ。

 時候の挨拶、フクシマ事故の反省、最近連絡を取っていないことの侘びを一通り述べたところで、小島は「ちょっと小耳に挟んだ話ですけどね」と、用件を切り出した。

 「うわさで聞いたんですけどね。ここ数日の「朝経新聞」さんの原子力規制庁の報道の話、どうやら世紀の大誤報のようですよ。旧国鉄から林野庁、環境省と転籍して、原子力規制庁に在籍している左翼のアンチ原発一派の自作自演の狂言に現場の記者が嵌められたようで。

 BPOと朝経グループに、原子力規制庁から猛烈に講義をしています。官邸も事を重大視しているようです。たぶん放送論理検証委員会で大問題になりますなぁ」

 まったく根拠のない出鱈目のデマであるが、同時に複数のルートから話が駆け巡ると、その瞬間はもっともらしく聞こえる。内部告発では告発者の保護が必要なので、デマを流された場合にタイムりーに反論して打ち消すことは難しい。

 各社が「朝経新聞」の報道を追いかける気運は一気にしぼんだ。ワイドショーでも取り上げられず、三日間の「朝経新聞」の長官と「テレビ朝経」のニュースが、青白い稲妻のように一瞬轟いただけで、人々の記憶の底に沈んでいった。


 フクシマの事故以降一年ほどは、地震、被災者、原発事故に関する報道は高い視聴率をとっていたが、その後、視聴率は長期低落傾向を示していた。震災後2年を経過したあとは、それが特に顕著になり、ニュースや特集番組で、こうしたトピックが取り上げられると、視聴率の数字がガクンと如実に下がるようになっていた。視聴者はわざわざチャンネルを変えているのである。

 とにかくあの辛い経験や恐怖を早く忘れたい、過去のものとしたいのだ。もはや震災やフクシマの事故を日本国民の多くは現実のものとして直視できなくなっていた。

 今回の一連の報道に対しても、国民のあいだでは、怒る気力よりも、諦めの気持ちのほうが優っているようだった。

 「原子力規制庁の情報漏洩には驚きましたが、まぁ世の中はそんなものかとも思います。もう原子力の話題にはうんざりです」(50代男性)

 「もう原発の話はこりごりです。もっと、新しくできたショッピングセンターの話とか、流行のダイエット法とか、楽しくて世の中が明るくなるような話題を紹介してください」(40代女性)

 それぞれの報道各社が設ける視聴者の「ご意見欄」に届けられた声を見ても、それは裏付けられているように見えた。

 

※「第13章 日本電力連盟広報部」の紹介は、今回で終了です。

引き続き、8/3から「第14章  エネルギー基本計画の罠」の紹介予定です。

・・・既得権益側が国会議員を使って行政に圧力をかけ・・国民に見えないところで、こうしたことが当たり前に行われている・・・


*『原発ホワイトアウト』著者:若杉冽 から、「第13章 日本電力連盟広報部」の過去紹介のリンク

【原発ホワイトアウト】第13章日本電力連盟広報部※22回目の紹介

【原発ホワイトアウト】第13章日本電力連盟広報部※23回目の紹介

【原発ホワイトアウト】第13章日本電力連盟広報部※24回目の紹介

【原発ホワイトアウト】第13章日本電力連盟広報部※25回目の紹介

 


★過去紹介した記事>>【原発ホワイトアウト】終章 爆弾低気圧 ※下の方に1回~16回までのリンク一覧あり

★過去紹介した記事>>【原発ホワイトアウト】第4章 落選議員回り ※下の方に17回~21回までのリンク一覧あり

 


【原発ホワイトアウト】第13章日本電力連盟広報部※24回目の紹介

2014-08-01 21:00:00 | 【原発ホワイトアウト】

*『原発ホワイトアウト』著者:若杉冽  から何度かに分けて紹介します。24回目の紹介  

 現役キャリア官僚のリアル告発ノベル!

 「政財官の融合体・・・ 日本の裏支配者の正体を教えよう」

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カスタマーレビュー)から

救いがあるとすれば著者・若杉冽氏の次の言葉だ。

  「まだまだ驚くべき事実はたくさんあるのです。

  こうした情報が国民に届けば、きっと世論のうねりが起きる。

  私が役所に残り続け、素性を明かさないのは、情報をとり続けるためです。

  さらに第二、第三の『若杉冽』を世に送り出すためにも」(毎日新聞 10月22日)

読み終わって私は、このままでは本書の予言どおり原発事故は再び起こる可能性が高い、と思った。

そして、表紙とびらに引用されたカール・マルクスの次の言葉が本書の内容を言い尽くしていると気づく。

  「歴史は繰りかえす、一度目は悲劇として、しかし二度目は喜劇として」。

この国の統治のあり方を根本的に変えなければ「二度目は喜劇」を防くことができない、と私は考える。

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★過去紹介した記事>>【原発ホワイトアウト】終章 爆弾低気圧 ※下の方に1回~16回までのリンク一覧あり

★過去紹介した記事>>【原発ホワイトアウト】第4章 落選議員回り ※下の方に17回~21回までのリンク一覧あり

【原発ホワイトアウト】第13章 日本電力連盟広報部  ※24回目の紹介

-『原発ホワイトアウト』著者:若杉冽 「第13章 日本電力連盟広報部」 を紹介

【登場人物】
 小島 厳 日本電力連盟常務理事 関東電力総務部長を経て日本電力連盟に出向

前回の話【原発ホワイトアウト】第13章日本電力連盟広報部※23回目の紹介

 また、事実関係に誤りがある報道には、執拗に抗議文を送り、訂正を要求した。訂正記事の出稿は、確実に、社内でチョンボとして業績評価に響くので、現場の記者もデスクも慎重にならざるを得ない。
 「こっちはプロだからな。コメンテーターはアマチュアのパートタイムだ。絶対にプロが負けちゃいかんぞ」

 「訂正記事は、それ自体に意味があるだけじゃない。訂正を執拗に要求することで、『こんなこと書いたら電力から訂正を要求されちゃうな』と、現場の記者が常に意識する癖をつけさせることが大事なんだ」

 広報部長は副部長たちを、こう叱咤激励していた。

 石の上にも3年ではないが、こうした地道な取り組みは、穏やかでやあるが確実に効果を上げ、失地を除々に回復していった。


 日本電力連盟広報部の手足として、さらに、各電力会社の広報部が存在した。

 電力会社には、もともと正社員として検針や集金をしていた余剰人員のおばちゃんやおっちゃんが、腐るほど存在する。いまは検針や集金は外部の業者に委託しているのだが、もともといた人を解雇するわけにもいかないので、社内に吹き溜まりのようになって残されている。

 各社の広報部では、世紀の広報部の別働隊として、こうした余剰人員を収容した特別な部屋をつくっていた。

 これらは本社とは別の分館の目立たない場所に設けられており、問題報道のあとには、余剰人員が一斉に、電話やネットで視聴者の声に反論の声を届ける。

 そんな暇人は他にはいないから、どうしても「視聴者の声」は電力寄りの声に埋め尽くされる。

 これに加え、各社の余剰人員は、ネット工作員としても活動していた。「2ちゃんねる」、政治家や著名人のツイッター、フェイスブック、SNS連動型テレビ番組などで、続々と電力会社の主張に沿ったコメントを書き続けるのである。

 

※「第13章 日本電力連盟広報部」の紹介は、7/30~8/2予定。

その後引き続き、8/3から「第14章  エネルギー基本計画の罠」の紹介予定です。


★過去紹介した記事>>【原発ホワイトアウト】終章 爆弾低気圧 ※下の方に1回~16回までのリンク一覧あり

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【原発ホワイトアウト】第13章日本電力連盟広報部※23回目の紹介

2014-07-31 21:00:00 | 【原発ホワイトアウト】

*『原発ホワイトアウト』著者:若杉冽  から何度かに分けて紹介します。23回目の紹介  

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救いがあるとすれば著者・若杉冽氏の次の言葉だ。

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  さらに第二、第三の『若杉冽』を世に送り出すためにも」(毎日新聞 10月22日)

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そして、表紙とびらに引用されたカール・マルクスの次の言葉が本書の内容を言い尽くしていると気づく。

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【原発ホワイトアウト】第13章 日本電力連盟広報部  ※23回目の紹介

-『原発ホワイトアウト』著者:若杉冽 「第13章 日本電力連盟広報部」 を紹介

【登場人物】
 小島 厳 日本電力連盟常務理事 関東電力総務部長を経て日本電力連盟に出向

前回の話【原発ホワイトアウト】第13章日本電力連盟広報部※22回目の紹介

(34)
 小島厳の命を受けた日本電力連盟広報部の世に知られざる仕事内容は、マスコミの言論を監視することである。

 広報部は、部長、副部長以下6名の体制。勤務時間中はひたすら、新聞、雑誌、テレビを6名で手分けをしてチェックし、原子力発電や電力会社に対して批判的は言論をチェックする。問題があればプレッシャーをかける。
 
 同じことを公権力がやれば憲法第21条第2項の検問の禁止に抵触するが、民間の会社がつくる任意団体であれば、何をやっても憲法上の問題とはならない。私人の行為だからである。

 フクシマの事故前であれば、電話一本で広報部長からクレームを入れれば、マスコミ各社とも程度の差はあれ、速やかに対応してくれた。各社にとって、電力会社は一大スポンサーだったからだ。

 地域独占が認められている電力会社は他社との競争に晒されていないので、本来テレビや新聞で宣伝をする必要がない。にもかかわらず、トヨタ自動車並みに投入される広告宣伝費は、報道機関にとっては魅力であり、毒の果実だった。

 だから、プロデューサーからの反省文、あるいは出演者本人からの謝罪を一度でもとりつければ、パブロフの犬のように、その後は反射的に、たいていは電力に対する批判的な言論を自粛するようになった。

 まれに覚えの悪い識者もいたが、二度警告を発しても改善しない者はブラックリストに載せ、マスコミ各社に番組や記事に起用しないよう執拗に働きかけた。近年、テレビや新聞で見かけなくなった反原発の著名人の多くは、そうした日本電力連盟広報部の所業の結果である。

 逆に、原発や電力会社に理解を示す識者は、いわゆる「原発文化人」として、マスコミに重用を働きかけた。そして、講演会、社内報の座談会、電力会社の研究会の委員などを積極的に依頼し、その謝金は、一時間あたり最低でも20万円、少し名の通った人であれば50万円、あるいは、100万円というのも当たり前であった。

 しかし、フクシマの事故から、状況は一変した。

 原発文化人は、自分が原発に好意的であった過去をできるだけ隠したがった。

 「今回の原発事故で人は一人も死んでいない。確率論的には原発は安全なんです」

 とフクシマの事故の直後にテレビで発言した原発文化人は、ネットで執拗に攻撃されてブログが炎上した。こうした原発文化人の多くは、もともとさしたる定見もなく、変わり身が早い。この原発文化人も自身のブログで「謝罪」と「転向」を表明し、その後は原子力問題には言及しなくなった。

 テレビ、新聞、週刊誌では、もともと誰からも相手にされず、反原発を貫いてきた研究者などが、フクシマの事故後しばらく「正義の味方」として重用されたが、彼らの過度に恐怖心を煽る極端な言論から人心が離れるのも早かった。

 日本電力連盟広報部は、こういう状況の下で、執念深くマスコミの言論の監視を続けた。「正義の味方」として興奮するあまり、脱線したり勇み足をする原発批判の論者に対して、1つ1つ丁寧に反論し、やがて、そういった「正義の味方」を、マスコミではなく、ネット界に追いやることができた。

 

※「第13章 日本電力連盟広報部」の紹介は、7/30~8/2予定。

その後引き続き、8/3から「第14章  エネルギー基本計画の罠」の紹介予定です。


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【原発ホワイトアウト】第13章日本電力連盟広報部※22回目の紹介

2014-07-30 20:55:02 | 【原発ホワイトアウト】

*『原発ホワイトアウト』著者:若杉冽  から何度かに分けて紹介します。22回目の紹介  

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救いがあるとすれば著者・若杉冽氏の次の言葉だ。

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  さらに第二、第三の『若杉冽』を世に送り出すためにも」(毎日新聞 10月22日)

読み終わって私は、このままでは本書の予言どおり原発事故は再び起こる可能性が高い、と思った。

そして、表紙とびらに引用されたカール・マルクスの次の言葉が本書の内容を言い尽くしていると気づく。

  「歴史は繰りかえす、一度目は悲劇として、しかし二度目は喜劇として」。

この国の統治のあり方を根本的に変えなければ「二度目は喜劇」を防くことができない、と私は考える。

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【原発ホワイトアウト】第13章 日本電力連盟広報部  ※22回目の紹介

-『原発ホワイトアウト』著者:若杉冽 「第13章 日本電力連盟広報部」 を紹介

【登場人物】
 小島 厳 日本電力連盟常務理事 関東電力総務部長を経て日本電力連盟に出向

(33)
 マスコミは、社会の木鐸として、社会主義のために働く職業と世の中からは認識されている。しかし実際には、社会主義を実現することよりも、他社を出し抜く、あるいは広告をとって利益をあげることが優先される場合も多い。組織の建て前と本音は一致しない。

 建て前と本音が一致しないのは、官庁や電力会社、そして政治家とて同じことである。そういう組織のなかで、本音を正しく読み取り、建て前を押し殺す人間が出世していく。建て前の追求は、あくまでも、組織の利益を害さない範囲で行われる。いわばポーズなのだ。

 「起きてしまったことは仕方ない、リカバリーショットをどう打つかだ」

 と、日本電力連盟の小島厳常務理事は広報部長に厳しい表情で告げた。

 小島自身は、野党に転落した民自党幹部との懇親会で、昨夜も帰宅が遅かった。ニュース番組の特集は見ていなかった。今朝、出勤するや否や、広報部長から、視聴率14・4パーセントという数字を知らされるとともに、番組の録画を見せられた。

 新聞にいくら書かれようと、仮にそれがステイタスのある「朝経新聞」の一面だったとしても、社会的な影響力はそれほど大きくはない。所詮、反応するのは、文字を読むインテリと反原発論者だ。

 しかし、テレビは違う。国会議員から一般大衆まで見ている。いくら批判の直接的な矛先が原子力規制庁の役人だとしても、それと道連れに、日本原発だけでなく電力会社全体が、「原子力ムラ」の癒着の構図の主役と受け止められるだろう。

 「とにかく、あとの追いかけ記事が続かないようにしてくれよ。具体的な対策を講じて、今日中に報告しろ!」

 こう、広報部長に厳命した。

 ・・・全体として、小島が参議院選挙当日の夜にしたためた「これからの課題」は、着実に解決に向かっていた。再稼動、電力システム改革の適正化、世論対策・・・少なくとも、小島が左右できる範囲では、ほぼベスト・シナリオが展開していた。

 兵糧が尽きる前に政治やマスコミを押さえ込むためにも、こんな原子力規制庁の小役人の情報漏洩ごときで世論が逆戻りしてはたまらない。とにもかくにも、関東電力には、一日も早い新崎原発の再稼動が必要なのだ。


 新崎原発の現地では、伊豆田知事の事前同意要求を無視した形で、フィルター付きベントの設置工事が、秘密裏に進んでいた。

 設置工事の全体像を末端の作業員にわからなくするために、工事は分割発注された。分割発注には、原発停止で冷え込んでいる東栄会の会員企業をできるだけ多く潤す狙いもあるが、むしろ知事を無視してフィルター付きベントの工事を進めていることを秘密にしておくためだった。

 現地で実際に施工に当たる二次下請けの作業員たちには、部分部分の工事の設計図だけが示され、それが何を目的とした工事であるかさえ秘密にされた。

 「なんだか、えれぇ、頑丈な配管だな。何が通るんだ?」

 「液体じゃなくて、気体だとは聞いているがな」

 「単なる空調じゃ、こんな丈夫は配管にはしねえだろうよ」

 こう、作業員たちは、口々に、工事現場で疑問を呈していた。

 工事の分割は徹底され、ゆえに配管の途中で、他社の施工する配管と繋ぎ合わせることが必要となった。設計図上では寸分の狂いもなくキレイにつながる長さで設計されていても、現実の工事は、規模が大きくなればなるほどズレが大きくなる。50センチメートルくらい、双方からの配管がずれることもある。

 「おい、これズレてるけど、どうやって繋ぐんだ?」

 と、作業員が他社の作業員に尋ねる。現場での混乱は、どんどん拡散していく。

 「・・・いや、ズレないはずなんだけどなあ」

 「継ぎ手でつないどくか?」

 「一応、関東電力にお伺い立てとくか?」

 「・・・でも、あいつらに聞いたら、本社に確認するとか言って、平気で一週間くらい放置されるぞ」

 「とろい奴らだかんな。にもかかわらず、俺たちよりも、よっぽどいいカネもらってるんだろ?」

 「しかも、一次下請けが中抜きしやがってんだからな」

 「設計ではおこらないはずのことが起きてんだから、適宜対処、でいいだろ?」

 「現場の作業には、関東電力も、一次下請けも、立ち会っちゃいないんだから、俺たちに任されてるってことさ、道理では」

 「関東電力さんは、急ぐ、急ぐ、って言ってたしな」

 「こんなのをいちいちお伺い立ててたら、俺たち死んじまうぜ」

 「まぁ、放射性物質が通るような重要は配管じゃないんだし、ちょこちょこっと済ませちまおうぜ」

 現場の作業員は口々に語り合う。

 まさか、いざというときに、この配管に放射性物質を含む排気が通るとは、誰も認識していなかった・・・。

 

※「第13章 日本電力連盟広報部」の紹介は、7/30~8/2予定。

その後引き続き、8/3から「第14章  エネルギー基本計画の罠」の紹介予定です。


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★過去紹介した記事>>【原発ホワイトアウト】第4章 落選議員回り ※下の方に17回~21回までのリンク一覧あり