*『原発ホワイトアウト』著者:若杉冽 から何度かに分けて紹介します。23回目の紹介
現役キャリア官僚のリアル告発ノベル!
「政財官の融合体・・・ 日本の裏支配者の正体を教えよう」
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(カスタマーレビュー)から
救いがあるとすれば著者・若杉冽氏の次の言葉だ。
「まだまだ驚くべき事実はたくさんあるのです。
こうした情報が国民に届けば、きっと世論のうねりが起きる。
私が役所に残り続け、素性を明かさないのは、情報をとり続けるためです。
さらに第二、第三の『若杉冽』を世に送り出すためにも」(毎日新聞 10月22日)
読み終わって私は、このままでは本書の予言どおり原発事故は再び起こる可能性が高い、と思った。
そして、表紙とびらに引用されたカール・マルクスの次の言葉が本書の内容を言い尽くしていると気づく。
「歴史は繰りかえす、一度目は悲劇として、しかし二度目は喜劇として」。
この国の統治のあり方を根本的に変えなければ「二度目は喜劇」を防くことができない、と私は考える。
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★過去紹介した記事>>【原発ホワイトアウト】終章 爆弾低気圧 ※下の方に1回~16回までのリンク一覧あり
★過去紹介した記事>>【原発ホワイトアウト】第4章 落選議員回り ※下の方に17回~21回までのリンク一覧あり
【原発ホワイトアウト】第13章 日本電力連盟広報部 ※23回目の紹介
-『原発ホワイトアウト』著者:若杉冽 「第13章 日本電力連盟広報部」 を紹介-
【登場人物】
小島 厳 日本電力連盟常務理事 関東電力総務部長を経て日本電力連盟に出向
前回の話:【原発ホワイトアウト】第13章日本電力連盟広報部※22回目の紹介
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小島厳の命を受けた日本電力連盟広報部の世に知られざる仕事内容は、マスコミの言論を監視することである。
広報部は、部長、副部長以下6名の体制。勤務時間中はひたすら、新聞、雑誌、テレビを6名で手分けをしてチェックし、原子力発電や電力会社に対して批判的は言論をチェックする。問題があればプレッシャーをかける。
同じことを公権力がやれば憲法第21条第2項の検問の禁止に抵触するが、民間の会社がつくる任意団体であれば、何をやっても憲法上の問題とはならない。私人の行為だからである。
フクシマの事故前であれば、電話一本で広報部長からクレームを入れれば、マスコミ各社とも程度の差はあれ、速やかに対応してくれた。各社にとって、電力会社は一大スポンサーだったからだ。
地域独占が認められている電力会社は他社との競争に晒されていないので、本来テレビや新聞で宣伝をする必要がない。にもかかわらず、トヨタ自動車並みに投入される広告宣伝費は、報道機関にとっては魅力であり、毒の果実だった。
だから、プロデューサーからの反省文、あるいは出演者本人からの謝罪を一度でもとりつければ、パブロフの犬のように、その後は反射的に、たいていは電力に対する批判的な言論を自粛するようになった。
まれに覚えの悪い識者もいたが、二度警告を発しても改善しない者はブラックリストに載せ、マスコミ各社に番組や記事に起用しないよう執拗に働きかけた。近年、テレビや新聞で見かけなくなった反原発の著名人の多くは、そうした日本電力連盟広報部の所業の結果である。
逆に、原発や電力会社に理解を示す識者は、いわゆる「原発文化人」として、マスコミに重用を働きかけた。そして、講演会、社内報の座談会、電力会社の研究会の委員などを積極的に依頼し、その謝金は、一時間あたり最低でも20万円、少し名の通った人であれば50万円、あるいは、100万円というのも当たり前であった。
しかし、フクシマの事故から、状況は一変した。
原発文化人は、自分が原発に好意的であった過去をできるだけ隠したがった。
「今回の原発事故で人は一人も死んでいない。確率論的には原発は安全なんです」
とフクシマの事故の直後にテレビで発言した原発文化人は、ネットで執拗に攻撃されてブログが炎上した。こうした原発文化人の多くは、もともとさしたる定見もなく、変わり身が早い。この原発文化人も自身のブログで「謝罪」と「転向」を表明し、その後は原子力問題には言及しなくなった。
テレビ、新聞、週刊誌では、もともと誰からも相手にされず、反原発を貫いてきた研究者などが、フクシマの事故後しばらく「正義の味方」として重用されたが、彼らの過度に恐怖心を煽る極端な言論から人心が離れるのも早かった。
日本電力連盟広報部は、こういう状況の下で、執念深くマスコミの言論の監視を続けた。「正義の味方」として興奮するあまり、脱線したり勇み足をする原発批判の論者に対して、1つ1つ丁寧に反論し、やがて、そういった「正義の味方」を、マスコミではなく、ネット界に追いやることができた。
※「第13章 日本電力連盟広報部」の紹介は、7/30~8/2予定。
その後引き続き、8/3から「第14章 エネルギー基本計画の罠」の紹介予定です。
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