「アメリカ同時多発テロ事件」から5年という節目を迎えた今年、
事件を描いた2本の作品が製作された。
1本目は、世界貿易センタービルに突入した
アメリカン航空11便、ユナイテッド航空175便の2機と、
ペンタゴンに突入したアメリカン航空77便とは別に、
テロリストの目的を達成することなくピッツバーグ郊外に墜落した
ユナイテッド93便の機内で起きていた出来事を
膨大な取材に基づいて描いた「ユナイテッド93」。
2本目が、崩れ落ちた世界貿易センターの瓦礫の下から
奇跡的に生還した2人の救助隊員を描いた「ワールドトレードセンター」である。
どちらも同じ「アメリカ同時多発テロ事件」をテーマにしているが、
「ユナイテッド93」は、大きな悲劇の陰に埋もれた「悲劇」を、
「ワールドトレードセンター」は、
大きな悲劇の中で輝く小さな「希望」を描いている。
ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン
ユナイテッド93
「ユナイテッド93」を観ている間、私はずっと自問し続けていた。
劇中で描かれる悲劇は、実際に機内からかかってきた電話を受けた
遺族への取材や、わずかに残された記録等から作られているだけあり、
乗客達の緊張や絶望、未曾有の事件に見舞われ、
コントロール能力を失った航空局職員の慌ただしさ等を、
可能な限り私情を挟まず、ありのままを描こうと努力していた。
ハイジャックを仕掛けた実行メンバーも登場するが、
彼等に対してですら、決行するまでに躊躇したり、
狼狽えたりする人間らしい部分もきちんと描いている。
想像で補完している部分もあるとはいえ、
作りは完全にドキュメンタリー映画のそれと同じだ。
機内の乗客達がハイジャック犯と対決する決意をしようが、
爆弾が偽物であったことを突き止めようが、
「結果」はもう出ているわけで、劇中の彼等が奮闘すればするほど
「乗客全員死亡」という最悪の結末が頭をかすめ、
その様を「鑑賞」している自分に、ある種の悪趣味さを感じ
自己嫌悪に陥ったりもしていた。
決してつまらないわけではなく、見ておく価値もあるかと思うが
「面白かったよ」とも「良かった」とも言い難い。
そんな作品だ。
パラマウント・ホーム・エンタテインメント・ジャパン
ワールド・トレード・センター スペシャル・コレクターズ・エディション
一方、「ワールドトレードセンター」はというと、
「プラトーン」「7月4日に生まれて」のオリバー・ストーン監督、
「コレリ大尉のマンドリン」「ウインドトーカーズ」の
ニコラス・ケイジ主演というだけあり、脚本も演出も芝居も、
「ユナイテッド93」に比べて遥かに商業映画然としている。
実行犯が登場しながらも一方的な悪者としては描かず、
観客が何を感じるかに委ねていた「ユナイテッド93」と違い、
「ワールドトレードセンター」では
テロリストは一人も登場しないにも関わらず、
はっきりと「許されざる巨悪」とされている。
分かり易いメッセージと、竹を割ったような善悪感、大団円の結末。
一般ウケするのは間違いなくこちらであろう。
個人的には、商業映画として気軽に観られた分、粗も気になった。
最も気になったのは、2時間持つ題材ではないということ。
奇跡的に助かったことについては素直に喜べるのだが、
映画として観た場合、残念ながら2時間は長過ぎる。
開始すぐにWTCが崩壊し、主演の二人共が生き埋めにされるため
場面に変化がつけられず、瓦礫の下敷きになっているので動きも出せない。
結局、身動きのとれない二人が
薄暗い中で埃に塗れながら励まし合う場面が延々と続く。
さすがにこれでは持たないと思ったのか、
家族や周辺にも話が振られるが、残念ながら水増しにしかなっていない。
救出までの時間は大変だったのだろうし、
想像を絶する恐怖だったとは思うのだが、映画としては退屈だ。
これぐらいなら、9月11日にTBSで放送された
「NYテロ 5年目の真実」の方がドキュメンタリーとドラマの融合として
ずっと上手く作られていたと思う。
鳴り物入りで公開されながら、全米初登場3位に終わったのも頷ける。
「アルマゲドン」や「パールハーバー」を
デートムービーに組み込むような方ならお勧めだが、
事件のことを記憶に刻みたいなら
「ユナイテッド93」にしておいた方が賢明だ。
●TBS「NYテロ 5年目の真実」公式HP
■Book:「9・11テロ捏造
日本と世界を騙し続ける独裁国家アメリカ」ベンジャミン フルフォード
■Book:「「9.11」の謎?世界はだまされた!?」成澤宗男
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
タイトル:ワールドトレードセンター
配給:UIP
公開日:2006年10月7日
監督:オリバー・ストーン
出演:ニコラス・ケイジ、マイケル・ペーニャ、他
公式サイト:http://www.wtc-movie.jp/top.html
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
事件を描いた2本の作品が製作された。
1本目は、世界貿易センタービルに突入した
アメリカン航空11便、ユナイテッド航空175便の2機と、
ペンタゴンに突入したアメリカン航空77便とは別に、
テロリストの目的を達成することなくピッツバーグ郊外に墜落した
ユナイテッド93便の機内で起きていた出来事を
膨大な取材に基づいて描いた「ユナイテッド93」。
2本目が、崩れ落ちた世界貿易センターの瓦礫の下から
奇跡的に生還した2人の救助隊員を描いた「ワールドトレードセンター」である。
どちらも同じ「アメリカ同時多発テロ事件」をテーマにしているが、
「ユナイテッド93」は、大きな悲劇の陰に埋もれた「悲劇」を、
「ワールドトレードセンター」は、
大きな悲劇の中で輝く小さな「希望」を描いている。
ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン
ユナイテッド93
「ユナイテッド93」を観ている間、私はずっと自問し続けていた。
劇中で描かれる悲劇は、実際に機内からかかってきた電話を受けた
遺族への取材や、わずかに残された記録等から作られているだけあり、
乗客達の緊張や絶望、未曾有の事件に見舞われ、
コントロール能力を失った航空局職員の慌ただしさ等を、
可能な限り私情を挟まず、ありのままを描こうと努力していた。
ハイジャックを仕掛けた実行メンバーも登場するが、
彼等に対してですら、決行するまでに躊躇したり、
狼狽えたりする人間らしい部分もきちんと描いている。
想像で補完している部分もあるとはいえ、
作りは完全にドキュメンタリー映画のそれと同じだ。
機内の乗客達がハイジャック犯と対決する決意をしようが、
爆弾が偽物であったことを突き止めようが、
「結果」はもう出ているわけで、劇中の彼等が奮闘すればするほど
「乗客全員死亡」という最悪の結末が頭をかすめ、
その様を「鑑賞」している自分に、ある種の悪趣味さを感じ
自己嫌悪に陥ったりもしていた。
決してつまらないわけではなく、見ておく価値もあるかと思うが
「面白かったよ」とも「良かった」とも言い難い。
そんな作品だ。
パラマウント・ホーム・エンタテインメント・ジャパン
ワールド・トレード・センター スペシャル・コレクターズ・エディション
一方、「ワールドトレードセンター」はというと、
「プラトーン」「7月4日に生まれて」のオリバー・ストーン監督、
「コレリ大尉のマンドリン」「ウインドトーカーズ」の
ニコラス・ケイジ主演というだけあり、脚本も演出も芝居も、
「ユナイテッド93」に比べて遥かに商業映画然としている。
実行犯が登場しながらも一方的な悪者としては描かず、
観客が何を感じるかに委ねていた「ユナイテッド93」と違い、
「ワールドトレードセンター」では
テロリストは一人も登場しないにも関わらず、
はっきりと「許されざる巨悪」とされている。
分かり易いメッセージと、竹を割ったような善悪感、大団円の結末。
一般ウケするのは間違いなくこちらであろう。
個人的には、商業映画として気軽に観られた分、粗も気になった。
最も気になったのは、2時間持つ題材ではないということ。
奇跡的に助かったことについては素直に喜べるのだが、
映画として観た場合、残念ながら2時間は長過ぎる。
開始すぐにWTCが崩壊し、主演の二人共が生き埋めにされるため
場面に変化がつけられず、瓦礫の下敷きになっているので動きも出せない。
結局、身動きのとれない二人が
薄暗い中で埃に塗れながら励まし合う場面が延々と続く。
さすがにこれでは持たないと思ったのか、
家族や周辺にも話が振られるが、残念ながら水増しにしかなっていない。
救出までの時間は大変だったのだろうし、
想像を絶する恐怖だったとは思うのだが、映画としては退屈だ。
これぐらいなら、9月11日にTBSで放送された
「NYテロ 5年目の真実」の方がドキュメンタリーとドラマの融合として
ずっと上手く作られていたと思う。
鳴り物入りで公開されながら、全米初登場3位に終わったのも頷ける。
「アルマゲドン」や「パールハーバー」を
デートムービーに組み込むような方ならお勧めだが、
事件のことを記憶に刻みたいなら
「ユナイテッド93」にしておいた方が賢明だ。
●TBS「NYテロ 5年目の真実」公式HP
■Book:「9・11テロ捏造
日本と世界を騙し続ける独裁国家アメリカ」ベンジャミン フルフォード
■Book:「「9.11」の謎?世界はだまされた!?」成澤宗男
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
タイトル:ワールドトレードセンター
配給:UIP
公開日:2006年10月7日
監督:オリバー・ストーン
出演:ニコラス・ケイジ、マイケル・ペーニャ、他
公式サイト:http://www.wtc-movie.jp/top.html
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
忍さんが言うように、
楽しいとか、おもしろいとか、そういう映画ではないけど、
見る価値はある、見ておくべき映画でした
見ている側としては結末を知っている心境の複雑さはあるものの、
それでもあわよくば助かって欲しいと思わせる臨場感は凄いと思いました。
乗客が各々家族に告げる最後の言葉が、皆一緒だったシーンも印象的でした。
このような感想にはならないですよね。
言い難いもどかしさ。
今回の記事でよく伝わってきました。
総さんのいう、あわよくば…に至る思いは自分にもあり、
痛く不思議な感覚でした。
そして自分が、一観客でしかない事を、
今更ながら強く思うのです。
うむ、「面白いから観て下さい」ではなく、
「知っておいて欲しい」といった感じなのだな。
>ふりば殿
この手の映画を観ると、
「金を払って人の不幸を観る自分」にいつもぶち当たるのだが
今回はいつも以上にキツかった。
「WTC」はそうでもなかった、というか、
何でもなかったのが不思議なぐらいだ。