一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

はじめての愛(後編)

2017-07-23 00:16:41 | LPSA麹町サロンin DIS

第3図以下の指し手。▲6一銀△6五歩▲5二銀成△同金▲8一飛△5一桂▲3五飛△4八銀▲5三歩△同金▲4七金△5七銀打▲4八金△同銀成▲6二銀△4二銀(第4図)

第3図では▲7四銀と逃げる手があるが、△4四金▲5六歩△3四金とされ、勝負が長引くと思った。また▲5四歩は△6五歩▲5三歩成△同飛でおもしろくないと思った。
▲6一銀は決着をつけにいった手で、時間制限がなかったら、もう少し逡巡したと思う。
渡部愛女流初段は△6五歩と銀を取ったが、ここ△6二飛は▲5四歩△6五歩▲5三歩成△6一飛▲5二銀△3一玉▲6一銀不成(参考1図)で下手有利。

部屋は冷房が効きすぎて、渡部女流初段はカーディガンの袖を通してしまった。ノースリーブの全貌を拝みたかったが、これで可能性はなくなった。
本譜に戻り、私は飛車を取って▲8一飛の王手。当然△5一歩と思いきや、渡部女流初段は少考して△5一桂と受けた。5筋の歩は攻めに使いたいようだ。
渡部女流初段は△4八銀から反撃する。数手後の△5七銀打に私は▲4八金だが、ここではだいぶ盛り返されたと思った。

第4図以下の指し手。▲7七角△8八歩▲5三銀成△同銀▲6三金△4四角▲9五角△6二銀打▲5三金(途中2図)

△5三同角▲5五飛(第5図)

ここで指す手がまったく分からなかった。現在角が眠っているので▲9六歩を考えたが、いかにも悠長だ。
それで▲7七角とし次の▲8六角を狙ったが、△8八歩と打たれ、手が止まってしまった。△8八歩は文字通りノータイム。プロ的にこうした手は一目なのだろう。
私は▲5三銀成から▲6三金と張り付いたが、▲6三金では▲9五角とノゾく手があった。
もっとも△4四角に▲9五角が実現したが、形勢判断はまったく分からなかった。
本譜を進んで△6二銀打に▲2二銀と捨てようとしたが、△同金でタダだ。
「駒が離れてないから大丈夫です」
と渡部女流初段。私は半分待ったをし、▲5三金(途中2図)とすべらせる。この手が詰めろかどうかなど、ほとんど読んでいない。△3五角と飛車を取られたら下手は相当寒いが、そうなったらそうなったでしょうがないと思った。
渡部女流初段は△5三同角と取り、私は▲5五飛。

第5図以下の指し手。△8九歩成▲5三飛成△5八金▲同竜△同成銀▲同玉△2八飛▲6七玉△6六歩▲7七玉△6五桂▲8六玉△7八飛成(第6図)

このあたりでSug旦那の将棋が終わった。Sug旦那は終始積極的に指し、快勝。渡部女流初段に褒められた。Sug旦那はLPSA駒込サロン時代から女流棋士に指導を受けているが、齢を重ねてからの棋力向上は見事で、不断の努力が実ったわけだ。
渡部女流初段は△8九歩成。ここは△5二歩と受けられると思ったから意外だった。もっとも時間が迫っているので、渡部女流初段も勝負をつけにきているのだ。
渡部女流初段は△5八金から飛車を入手し、△2八飛。この手が厳しく、負けにしたかと思った。
私は▲6七玉と上がり、「あと3分くらいしか(指導の時間が)ありませんよ」と告げる。
たしか麹町サロンは終了5分前から感想戦に入ったと思う。まだ2局残っているし、暗に指し掛けを申し出たつもりだった。
が、対局はそのまま続く。

第6図以下の指し手。▲6四角△8五歩▲9六玉△7六竜▲8六銀(投了図)
まで、109手で一公の勝ち。

下手玉は△7六竜▲同玉△7五金までの詰めろ。私は▲6四角と詰めろ逃れの詰めろで応じたが、「▲8六玉」と「▲6四角」を2手続けて指した気がして、「あああっ!!!」と叫んでしまった。
「私が何かやりました!?」
と渡部女流初段も驚く。私の粗相で、たいへん失礼しました。
対局を再開し、△7六竜に▲8六銀。まだ最後の一山があるのかと思いきや、ここで渡部女流初段が投了してしまった。

「(途中2図からの)△5三同角がおかしかった。△8九歩成でしたか?」
渡部女流初段が開口一番、発する。
調べてみると、△8九歩成以下▲5一飛成△同銀▲同角成△3一玉▲4二銀△2二玉▲3三歩成(参考2図)で、以下清算してから▲4二角で上手玉が詰むようだった。

といって△8九歩成で△3五角も、▲6二角成で下手玉が詰まず、わずかに下手がいいようだ。
また第3図以降の△5七銀打に対して私は▲4八金と銀を取ったが、
「ここで▲5八歩(参考3図)と受けられたらどう指していいか分かりませんでした」

と渡部女流初段。そうかそうか、こう打てば上手の攻めは切れていたか。完全なエアポケットに入っていた。
もっと感想戦をやっていたいが、時間がない。渡部女流初段はほかの指導対局に戻り、まずTak氏を投了に追い込んだ。
が、感想戦の最中に次のお客さんが来てしまった。
Tod戦も、Tod氏が投了。ここでまた一人、次の客が来た。さすがに渡部女流初段も感想戦を終わらせたが、1時間半で4局すべての将棋を完了させた。さすがにうまくまとめるもんだと感心した次第。
今回、渡部女流初段には初めて麹町サロンで教わったが、渡部女流初段の魅力全開で、濃密な1時間半を過ごすことができた。また機会があったらよろしくお願いします。

帰りにTod氏と軽くお茶をする。しかし、お互い自由人でチョンガーなので、話す内容はさえない。
しかもTod氏とはこれからも麹町サロンで顔を合わせそうな気がするのが恐い。

   ◇

渡部女流初段は22日のマイナビ女子オープンで、初戦敗退してしまった。今はどんよりと落ち込んでいるだろうが、戦いはまだこれからも続く。腐らずに頑張ってください。
コメント
この記事をはてなブックマークに追加

はじめての愛(前編)

2017-07-22 00:13:45 | LPSA麹町サロンin DIS
6月29日(木)のLPSA麹町サロンin DISは渡部愛女流初段の担当だったが、前日までに1部と2部に1席ずつ空きがあり、私は1部に申し込んだ。これで6月は大野教室6回、麹町サロン2回、さらに社団戦にも参加した。働き盛りの男性が仕事もせずに将棋三昧とはバカ丸出しで、自己嫌悪に陥るばかりである。
当日は松戸でマトモトキヨシの株主総会があり、初めて参加した。進行はなかなかおもしろく、こんなことならもっと早くに参加するのだった。

家に戻り、午後2時に再び家を出て四ッ谷に着いたあと、駅前の小諸そばで二枚もりを手繰った。
左で食べていた女性はめんつゆがなくなってしまったようで、お代わりを所望していた。そばを食べていて、こんなことってありますかね?
ここで時間を取ってしまったので、麹町へは最短距離を行くしかない。かつての我が会社の前を通った。この会社での6年半は我が半生の黒歴史で、一切思い出したくない。
幸い昔の連中には遭わず、麹町サロンへ無事到着。部屋に入ると、渡部女流初段にSug旦那氏、Tod氏、Tak氏がいた。何だ、いつものメンバーだが、Tak氏はまたこの将棋のために上京したのだろうか。
「いやあ大沢さん、残り1席は大沢じゃないかって話してたんですよ」
とTod氏。どうも、すべて見破られていたようだ。
私は渡部女流初段に挨拶。渡部女流初段には6月10日に大野教室で教わったばかりだが、麹町では初めてである。13,000円を渡した。今回の指導料4,000円(ファンクラブ料金)に、「勝手にマッカラン勝負」の3勝分9,000円を足したものだ。これにて今年のマッカラン勝負は完了したが、来年は行えるかどうか。
もう3時を過ぎているので、すぐに駒を並べた。

初手からの指し手。▲7六歩△8四歩▲6八銀△3四歩▲7七銀△6二銀▲2六歩△8五歩▲7八金△7四歩(途中1図)

▲5六歩△7三銀▲4八銀△6四銀▲6六銀△8六歩▲同歩△同飛▲8七歩△8二飛▲5七銀上△3二金▲5八金△4二銀▲2五歩△3三銀▲6九玉△4一玉▲3六歩△4四銀▲4六銀△5四歩(第1図)

渡部女流初段は人気があるので3コマ体制。それに伴い指導時間も1時間半に短縮されている。それでいて料金は4,000円で変わらないから、やや不満は残る。
もっともそれも、渡部女流初段の笑顔を見れば雲散霧消してしまうのだが。
「恐れながら平手でよろしいでしょうか」
と私。渡部女流初段は笑って応じる。
Tod氏は、
「一公さんにはいつも二枚落ちで指してもらってるんですが、今日は飛車落ちで…」
と言い、渡部女流初段が苦笑した。
Tak氏は飛車落ち。Sug旦那も飛車落ちで、中飛車を指していた。つまり先日の堀彩乃女流2級戦のときと同じ戦法で、とすると先日の手合いも飛車落ちだったに違いない。Sag旦那、数年間お会いしないうちに、腕をあげたということだ。
渡部女流初段は黒のノースリーブ。しかし残念、上にカーディガンを羽織っている。クーラーが効いているからこうなってしまうのだ。
「(渡部女流初段のカーディガンを脱がすには)北風と太陽だね」
とTod氏に言ったら、「何それ?」と返された。
「オレもよく知らないけど、太陽の熱さで脱がす話だよ」
ホントにバカな会話だと思う。
私の▲7六歩に、渡部女流初段△8四歩。私は▲6八銀とし矢倉を目指したが、渡部女流初段は△8五歩を決めて△7四歩(途中図)と、早くも攻勢の図だ。昨今は後手の急戦矢倉が主流で、「相矢倉」が死語になりつつある。
渡部女流初段は右銀を繰りだし、私は▲6六銀と対抗する。以前植山悦行七段に同じ手を指され▲6六歩としたら、「ここは▲6六銀としなきゃあ(ダメ)!」と怒られたことがある。私も学習しているのだ。
右側の銀も同じ動きになり、四枚の銀が中央で対峙した。

第1図以下の指し手。▲2四歩△同歩▲同飛△2三歩▲2五飛△7三桂▲3五歩△5五歩▲同歩△3五歩▲3四歩△6五銀▲同銀△同桂▲5六銀△5七歩▲4八金△6四銀▲6六歩(第2図)

△2三歩に▲2五飛。▲2八飛でもいいが、手詰まり解消の意味も含めて、ちょっと攻め味を出してみた。
渡部女流初段△7三桂と、後手番ながら攻勢を取る。右金は△6一金だが、中央に薄い分、飛車打ちには強い。
私が▲3五歩と先攻すると、渡部女流初段は△5五歩▲同歩を入れて△3五歩。私の▲3四歩はやや気が利かないが、ほかの手が分からなかった。
渡部女流初段は△6五銀。先日のKaz氏のような攻めだ。次に△7六銀があるので私は▲同銀と取るよりないが△同桂で、上手はこの桂が活躍すれば勝ち、私がこの桂を取りきれれば勝ち、の構図になった。
ここで▲6六銀は△5六歩があるので、私は▲5六銀と据える。これは▲6六歩の桂取りも見ている。
グズグズできない渡部女流初段は△5七歩を利かし、△6四銀。
私は待望の▲6六歩。しかし第2図で恐れていた手があった。

第2図以下の指し手。△5五銀右▲6五銀△4六銀▲同歩△5二飛▲5四歩△6二金▲5七金△6四歩▲5三桂△同銀▲同歩成△同金(第3図)

渡部女流初段は一手指すごとに局面を移るので、こちらはその分じっくり考えられる。ただし指導時間は1時間半だから、ややタイトである。
第2図で渡部女流初段は△5五銀右としたが、私は「左」で来られるほうがイヤだった。
こちらのほうが角交換になる変化があり、そうなれば△5七歩の拠点が残っている下手が忙しい。
本譜は▲6五銀と桂得し、この岐れは下手悪くない。以下△4六銀▲同歩で下手には△3六角(王手飛車)のスキができたが、まだ角は持たれないだろう。
渡部女流初段△6二金。ここ△6四歩なら▲同銀△5四飛▲6五銀で下手が指せると思った。私は▲5七金とイヤミな歩を払って一安心。
本譜に戻り△6四歩に▲同銀は△5四飛でゲームセットだが、▲5三桂が狙っていた手で、△5三同金まで下手が銀得となっては、さすがに有利を自覚した。
さて第3図でどう攻撃を続行するか。

(つづく)
コメント
この記事をはてなブックマークに追加

第7期女流王座戦二次予選勝敗予想の答え合わせ

2017-07-21 00:05:12 | 勝敗予想
昨日20日、第7期女流王座戦の本戦トーナメントが開幕した。
当ブログでは6月13日に、二次予選12局(実際は11局)の勝敗予想を行ったので、今日はその答え合わせをする。

1枠
○室田伊緒女流二段VS●水町みゆ奨励会7級…正解

2枠
○室谷由紀女流二段VS●山口絵美菜女流1級…正解

3枠
●貞升南女流初段VS○山口恵梨子女流二段…正解

4枠
●中澤沙耶女流初段VS○鈴木環那女流二段…正解

5枠
●長谷川優貴女流二段VS○塚田恵梨花女流2級…間違い

6枠
○里見咲紀女流初段VS●磯谷祐維アマ…正解

7枠
●中井広恵女流六段VS○中村真梨花女流三段(予想せず)

8枠
○甲斐智美女流五段VS●野田澤彩乃女流1級…正解

9枠
○カロリーナ・ステチェンスカ女流1級VS●和田あき女流初段…間違い

10枠
●渡部愛女流初段VS○上田初美女流三段…間違い

11枠
○清水市代女流六段VS●北尾まどか女流二段…正解

12枠
●宮沢紗希アマVS○千葉涼子女流四段…正解

11局予想して8勝3敗は、こんなものだろう。

本戦トーナメントの組み合わせは以下の通り。

西山朋佳奨励会三段―千葉涼子女流四段
●塚田恵梨花女流1級―○鈴木環那女流二段
カロリーナ・ステチェンスカ女流1級―室谷由紀女流二段
●里見咲紀女流初段―○香川愛生女流三段

伊藤沙恵女流二段―中村真理花女流三段
山口恵梨子女流二段―室田伊緒女流二段
上田初美女流三段―清水市代女流六段
甲斐智美女流五段―加藤桃子女王

すでに2局を終了したが、上(左)の山からは西山奨励会三段、下(右)の山からは伊藤女流二段と加藤女王の勝者が上がってくると思う。
しかしこの予想が外れたりするのだ。
コメント (2)
この記事をはてなブックマークに追加

羽生三冠―村山七段戦の雑感

2017-07-20 00:22:30 | 将棋雑記
やや旧聞になるが、14日(金)は竜王戦本戦トーナメント・羽生善治三冠VS村山慈明七段の一戦が行われた。
本戦では藤井聡太四段がすでに負けている。それはワールドカップやオリンピックで日本が敗退したかのごとくで、巷では「残りの対局は興味なし」の雰囲気すら漂っていた。それを解消するためにも、もうひとりのスター・羽生三冠はこの対局に勝たねばならなかった。
羽生―村山戦はここまで非公式戦を含めて5局あり、羽生三冠の全勝。羽生三冠は通算勝率7割越えだから誰に対しても戦績はいいのだが、それにしたって全勝とは極端である。
羽生―村山戦で印象的なのは6年前の第52期王位戦で、2人は白組リーグの最終局で顔を合わせた。ここで村山五段(当時)が勝てば5戦全勝で挑戦者決定戦進出。だが村山五段は羽生名人(当時)に敗れ、プレーオフに持ち込まれてしまう。
当時も羽生名人は多忙で、プレーオフが3日後の土曜日、すなわち5月28日に組まれた。
実はこの日は、東京・将棋会館4階で、将棋ペンクラブの関東交流会が予定されていた。まさか壁一枚を隔ててそんな重要対局が組まれるとは思わないから、私たちは大わらわである。
当日はとりあえず受付を反対側に移したが、その程度ではすべてが解決しない。この後を静粛にせねばならないのだ。チッ、この部屋はだいぶ前からペンクラブが押さえていたんだし、そっちは「ひゃっこみ」じゃねえか、とみなが思ったかどうかは知らないが、私たちもなるべく私語は慎み、対局を行った。
が、4時から懇親会があり、これが面倒だった。懇親会はどうしたっておしゃべりする。最初は小声でやるのだが、話していくうち、声が大きくなってくる。そのたびに幹事氏が「静かに騒いでください」と禅問答のような注意をするが、これとて一時しのぎだ。
誰かがジョークを言えば、笑わずにはいられない。また幹事が注意をする。懇親会はその繰り返しだった。
プレーオフは羽生名人が勝ったらしい。後日、関係者が羽生名人に当日の様子を聞いたところ、「とくに問題はなかった」とのことだった。
ちなみに羽生名人は挑戦者決定戦で藤井猛九段を降し、七番勝負では広瀬章人王位を4勝3敗で破り、王位に返り咲いたのだった。

ともかくそんなわけで、村山七段にとって羽生三冠は目の上のタンコブ、一度は叩いておきたい相手であった。
村山七段の後手番になった本局、村山七段はさして時間を使わず、新手を披露した。明らかに研究手順である。「序盤は村山に聞け」は、「終盤は村山(聖)に聞け」の対比として、将棋界で有名なフレーズである。現在は将棋ソフトがあり、村山七段がそれをどの程度取り入れているかは分からぬが、本局の進行は村山七段の面目躍如となった。
対して羽生三冠はどんどん時間を使う。羽生三冠だってふだんから研究はしているが、他者が「羽生ひとり」にターゲットを絞っているのに対して、羽生三冠はライバル全般が相手だから、とても研究が及ばない。大山康晴十五世名人は相手の研究にハマるのを嫌い、微妙に定跡形を外していたが、第一人者にはそうした苦労がつきまとう。
もっとも羽生三冠はまた別格で、相手の研究によろこんで飛び込み、実戦で解決してしまう貪欲さがある。本局もまたそんな進行だった。
中盤になり、ネットを見れば、まだ村山七段が自信を持って指しているように見えた。が問題は、村山七段が序盤のリードをどこまで維持できるかだ。そもそも村山七段が終盤まで隙のない棋風だったら、「序盤は村山に聞け」のフレーズは生まれていない。
しかし終盤に入り、素人目には、まだ村山七段が互角以上に渡り合っているように見えた。
というところで、66手目村山七段は△5七歩。これが詰めろだから、羽生三冠は攻防の手をひねり出さなければならない。
将棋ソフトの推奨は▲3五飛である。受けては数手後の△3六飛成を消し、攻めては▲3二飛成以下の詰みを見る。いわゆる詰めろ逃れの詰めろだ。
最近のネット中継で変わったことといえば、ソフトの推奨手に全幅の信頼が置かれ、対局者以外が「正着?」をすでに知っている、ということにある。そして対局者がそれを指すかどうか、私たちが一段高いところからそれを見守っている、という構図になっていることだ。
そんな中、羽生三冠の▲5四角が指された。これも▲3五飛と同様の意味だが、後手玉は詰めろになっていない。どうも▲3五飛がベターに見えるがそこはそれ、▲5四角はちょっと曲線的で、羽生三冠好みの手にも思える。羽生三冠に▲3五飛が見えなかったわけがないから、将棋ソフトが軽視した筋を察知したのかもしれなかった。
本譜はここで村山七段が長考し、△5八歩成。最大2時間以上あった考慮時間の差が、ここで一気になくなった。
ということは、流れは羽生三冠である。この難しい局面で、村山七段が正着を続けることは考えにくいからだ。
ともあれ先手は▲7七玉の一手。ここで将棋ソフトは△6四金を推奨していた。しかしここ、プロでもアマでも、敵玉に1路でも近い△7五に金を打ちたくなるのが人情であろう。
ところがそれでは後手が負けらしい。将棋ソフトの強さに舌を巻くとともに、この難解な将棋を盤面に表現する2人に、私は拍手を送ったのである。
果たして村山七段は△7五金と打った。だが、それで村山七段を咎める将棋ファンは誰もいない。
以後は羽生三冠の勝ちとなったようである。ネット中継のコメントでは、89手目▲3二金と王手して、後は平易な詰みだった。
が、羽生三冠は▲1二飛から入った。これでも詰むのだろうか。
詰んだ。後手玉は2四まで逃げたが、そこで▲3五金!!~▲1五金!!が羽生三冠の剛力を示す力強い捨て駒。最後は▲4二馬と活用して詰みで、ここで村山七段が投了した。
いやはやそれにしても、羽生三冠の強さよ。戦前の予想通り、羽生三冠は作戦負けをものともせず、終盤でひっくり返した。そして最後の訳の分からない詰まし方。あの▲5四角も、終わってみればひとつの勝ち方に見えた。
巷では羽生三冠の衰えを危惧する声もあるが、どうしてどうして。現在の若手棋士が羽生三冠を叩くのは、まだまだ大変である。
コメント (2)
この記事をはてなブックマークに追加

第29回将棋ペンクラブ大賞発表

2017-07-19 00:12:43 | 将棋ペンクラブ
さる15日(土)に第29回将棋ペンクラブ大賞の最終選考会が行われ、当局から各賞が発表された。では転載してお知らせする。
最終選考委員:木村晋介(将棋ペンクラブ会長・弁護士・作家)、西上心太(文芸評論家)、所司和晴(棋士七段)

【観戦記部門】

◎大賞
内田晶 第41期棋王戦五番勝負第4局 渡辺明―佐藤天彦 共同通信

◎優秀賞
先崎学 第65期王座戦2次予選 三浦弘行―先崎学 日本経済新聞

【文芸部門】

◎大賞
後藤元気「将棋観戦記コレクション」(筑摩書房)

◎優秀賞
該当作なし

【技術部門】

◎大賞
神谷広志「禁断のオッサン流振り飛車破り」(マイナビ出版)

◎優秀賞
石川陽生「将棋戦型別名局集4 三間飛車名局集」(マイナビ出版)

【特別賞】

羽海野チカ「3月のライオン」


観戦記部門は二次選考の採点において優劣つけがたく、最終選考に残った5作は、どれが大賞になってもおかしくなかった。ただ私が二次選考を終えたあと、当ブログに「いや1作だけ、大賞候補と思えるものがあった」と加筆したのが、大賞受賞の内田晶氏の観戦記だった。
本局(第41期棋王戦五番勝負第4局)は2015年度の名局賞。指し将棋とダブル受賞で、これは史上初の快挙かもしれない。
優秀賞の先崎九段は、前年度の叡王戦決勝三番勝負第2局の観戦記に続いて、連続受賞。力のある人は、何度でも受賞してしまうのだ。
今年の観戦記は「身を削って」書いているようで、一読の価値がある。

文芸部門の大賞は後藤元気氏。この本は3月の将棋イベントで駅前に行った時、出展していた藤田麻衣子さんに強引に買わされた?ので、すでに読んでいた。
こちらの採点は当初「優」だったのだが、採点表の投函当日に「良」に変えた。編集の比重が大きく、大賞に適さないのではと思い直したからだが、別の二次選考委員は、解説の文章だけでも十分おもしろい、と評価していた。

技術部門大賞は神谷八段が受賞。最近は「28連勝男」としてよく藤井聡太四段の引き合いに出されたので、妙に知名度が上がってしまった。将棋ペンクラブ大賞贈呈式では、どんなコメントをかましてくれるか、いまから楽しみである。
優秀賞の石川七段の本は、昨年鈴木大介九段が「四間飛車名局集」で大賞を受賞した際、「石川先生の三間飛車名局集が受賞しないのはおかしい。私のよりはるかにおもしろい」と述べていた。「三間飛車―」は、発行日の関係で今年度にズレたようである。

なお今年は、羽海野チカ氏「3月のライオン」に特別賞を贈呈することになった。2007年からの連載による功績を讃えるもの、とのことである。

受賞の皆様、おめでとうございます。

なお将棋ペンクラブ大賞贈呈式は、9月15日(金)に、「レストランアラスカ パレスサイド店」で行われる。東京メトロ東西線・竹橋駅直結の、パレスサイドビル9階である。今年は四ッ谷の「スクワール麹町」ではないので、要注意だ。
開場は例年と同じ18時、開演は18時30分。会費は男性8,000円、女性6,000円。非会員でも参加可、である。
私ももちろん参加したいのだが、当日私がどんな職業に就いているのかまったく分からず、予定が立てられない。
もし当日参加できなければ、私は新たな職場で忙しくしている。参加できるようなら、まだプー太郎、ということだ。
コメント (2)
この記事をはてなブックマークに追加