一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

佐藤康光九段の快勝劇

2024-04-14 00:14:00 | 男性棋士
最近びっくりしたのは、10日に行われた第37期竜王戦(主催:読売新聞社、日本将棋連盟)ランキング戦1組準決勝で、54歳の佐藤康光九段が伊藤匠七段に勝ったことだ。
佐藤九段の実績は言うまでもない。元竜王、元名人で、永世棋聖の有資格保持者でもある。順位戦は第81期までA級を張っていた。だから誰に勝ってもおかしくないのだが、相手が伊藤七段とくれば、少々話が違ってくる。
伊藤七段は前期竜王戦の挑戦者で、いまも叡王に挑戦中である。藤井聡太竜王・名人がいなかったら、なにがしかのタイトルを持っていてもおかしくなかった。
そのふたりが対局したら、勢いの差で伊藤七段が勝つと誰もが思う。ところが本局は佐藤九段が勝った。これはびっくりするではないか。
その将棋は佐藤九段の先手で、金矢倉になった。かつて増田康宏八段は「矢倉は終わった」と言った。あまりにも極端な物言いだが、半分は当たっている。しっかり玉を囲って双方端攻めをする牧歌的な「相矢倉」はなくなったが、先手の矢倉自体は細々と生きているのだ。
果たして伊藤七段は、角換わりを思わせる中住まいを採った。これが令和の布陣で、十分戦えると見ているのだ。
だが昭和生まれの私からすると、矢倉城から玉が5二に出てきたように見え、これは先手が勝たなければならないと思った。
先手は一段玉で待ち、後手の居角の直射から逃れる。対して後手は二段玉で、佐藤九段が巧妙に5筋に照準を合わせた。これがハマり、先手が徐々に形勢を良くしていく。
こうなれば佐藤九段はもう逃さない。以下流れるような手順で、後手玉を網にかけ、しぼってゆく。結局、115手まで佐藤九段が勝ったというわけだった。
勝った佐藤九段は、これで決勝トーナメント進出決定。このあと1組決勝に勝てば、スーパーシードのベスト4に置かれる。
そして1組の反対の山は、久保利明九段と山崎隆之八段が勝ち上がってきている。佐藤九段は1組の優勝が2回あるが、久保九段と山崎八段はまだない。よって、誰が優勝しても、話題になる。
また余談ながら、森内俊之九段も4位決定戦で渡辺明九段に勝ち、決勝トーナメント進出まであと1勝としている。
森内九段も53歳。佐藤九段ともども、腕に歳は取らせない、という感じだが、両九段が若手のころはAIがなく、自力で手を読むしかなかった。その苦労がいまごろになって実を結んでいるのではなかろうか。
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2 コメント

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色々と楽しみです。 (将子)
2024-04-17 22:44:34
佐藤康光先生、1組の決勝トーナメント進出、すごいですね。先日の名人戦の解説といい(藤井ファンですが)「佐藤先生、カッコイー」と思いました。

ところで、棋聖戦の決勝トーナメント。昨日は山崎先生、今日は佐藤天彦先生が勝利し、どちらかが藤井先生に挑戦することになり面白くなってきましたね。

それから、竜王戦6組の藤本先生も着実に勝ち進んでいます。山下三段も勝ち進んでいるので、お二人が対戦することにならないかなーと、密かに楽しみにしています。
話題が尽きない (一公)
2024-04-18 17:28:10
>将子さん
佐藤先生は、竜王戦勝利の翌日に名人戦の解説だったのですが、気分がよかったでしょうね。
棋聖戦は、どちらが勝っても面白い戦いになりますね。
竜王戦は、藤本先生もそうですが、奨励会の山下三段に注目です。彼がもし6組で優勝すると、次点2回で四段昇段となります。
将棋界は新年度に入っても、いろいろ話題が尽きません。

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