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緊急避妊にアクセスするまでの時間 in Japan

2009-08-12 | 毎日いんふぇくしょん(編集部)
新型インフルのピーク時とおなじくらいブログのアクセス数が上がっており、これはナゼ?なのですが。
夏なので、あんなこと、こんなことがあったりして「緊急避妊」を検索した人がいるのかもしれないと推測しております。なので補足をUpしておきます。

お盆の時期はお休みになる開業医さんもいるそうなので、夜間・救急外来で緊急避妊の相談が増えるとおもいます。研修医の皆さんも「なにそれ初耳」などといわず救援をよろしくおねがいします。
(日本はOTCになっていませんので・・)

緊急避妊は最も効果があるのはIUD(リング)の装着なのですが、日本の場合妊娠経験がないと医師が二の足を踏みます(途上国では入れちゃうらしいですが)。
感染症のモンダイもあるからかもしれませんが。
値段が高いですけれども効果はほぼ100%ですし、その後数年IUDで避妊ができますので中絶や出産経験がある場合は選択肢になります。5日以内なら大丈夫です。
でもなれた婦人科のドクターでないと難しいですね。

若くて妊娠経験もなくて、、、という人では内服で緊急避妊するしかありませんが、モンダイがいくつかあります。

1)そばに(産)婦人科がない(つぶれた)→何科の医師でも処方は可能
2)医師が緊急避妊を知らない→詳しいページをプリントアウトして持参
3)近くに薬局がない
4)値段

医師なら誰でも処方可能です。

内服の緊急避妊は服用は早いほどよいとされており、72時間以内に服用を開始します。120時間までのトライアルもありますが、早く服用した人に比べて効果が激減します。それでもいいからくださいという涙目の患者さんは多いですが。

日本はなぜか(またしても?)WHO推奨の女性にフレンドリーな緊急避妊薬がありませんので、古いヤツペ法を試みることになります。
プラノバールを4錠処方するだけです。すぐに2錠、12時間あけて2錠内服します。最も多い副作用は吐き気。頻度は二人に一人。
しかし、絶対に妊娠したくない人は『吐き気はやだなあ』などといわず服用します。

お値段は病院の自由であり、数年前に調査をした人の話では全国平均が5000円。しかし病院によっては「薬だけ出す」から「卵巣や子宮内膜を確認」したりしてもう少し高額になるところもあります。
(新宿には35000円の、目黒には40000円のところがあるそうで)

仕入れ価格は非常に安いので、緊急時の女性にはお気の毒な話です。

処方後のモンダイは
5)飲んだあとどのように判断すればよいのかわからない
6)学習機会がないとその後もアヤシイ避妊でのリスキーなセックスが続く

コンドームを使えていない人も多いので、性感染症の話などもしていただくとよりベター(ただしパニック状態の人もいるので後日でも可)

3週間以内に出血がくればよく、それを過ぎてもこない場合は妊娠検査をします、と伝えます。
緊急避妊が必要になる、あるいは中絶をするということは、それまでの・そのときの避妊ではまずいということです。ワンランク上の避妊へと指導をよろしくおねがいします。
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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
お世話になっております。茅ヶ崎のGです。 (茅ヶ崎の事務担当)
2009-08-12 12:19:03
陰ながらいつも楽しく読ませていただいております。

アクセスアップの件ですが、先日の記事「緊急避妊とコーラ」が、人気のあるエントリーとして紹介されており、その影響かと思います。

最近の人気エントリー - 科学・学問
http://b.hatena.ne.jp/hotentry/knowledge
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IUD (ないか)
2009-08-12 19:47:18
IUDは外妊のハイリスクファクターの一つになっていたように思いますが・・・・
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緊急避妊でなければ賛成 (Haj)
2009-08-12 23:36:30
IUDも入れられる家庭医Hajです。

緊急避妊としてのIUDの効果が高いというのは分かりますが、妊娠だけではなくSTIの可能性を考えるとどうしても緊急避妊としてのIUDは避けたくなります。やはり一旦内服でしのいで、感染(GとかCとか)を除外して、頚ガン検診もしてからIUDを入れるようにしています。

ちなみに未経産婦でもIUD抜去後の妊よう率に変わりがないというエビデンスはあり、最近は割と前向きに未経妊でも使用するようにしています。

いずれにしてもしっかりとした性教育/避妊指導ありきですね。コンドーム/今度生む
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情報ありがとうございます (編集部)
2009-08-13 08:36:50
人気エントリーというのがあるのをはじめてしりました。感染症ブログとしては意外なところで注目をしていただいて光栄です。

昨日の青木編集長宅のPartyで、これから米国の家庭医のコースに留学をされる先生とお話をする機会があり、日本にはそのようなドクターが何人いるのかという話をしたところでした。Haj先生のようにIUDも扱える家庭医の先生がいらしゃることはとてもありがたいです。
今後困った人の相談先として、市民の方にもぜひ知っていただきたいですね。

IUDでのデメリットをどれくらい診察室で説明されているのかは詳しくはないのですが、今度関係者に聞いてみようとおもいます。
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