感染症診療の原則

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耐性菌報道から考える その1

2010-09-05 | 毎日いんふぇくしょん(編集部)
医学生や研修医の参考のために解説をしたいとおもいます。

まず、感染症対策は医療機関が責任を持ってとりくむ事項のひとつで、医療法改正のあとには診療所、歯科、助産院含めて適切な対策をとらなければいけないことになっています。

コメディカル等含めて職員を対象とした研修を年2回開催(年2回受講)といった努力目標があります。

院内にはいくつか感染対策の組織があります。
一番上にあるのは「感染症対策委員会」院長や事務局長、検査部長など各部門がならんでいます。
最終的な責任はここにありますが、必ずしも詳しい人ばかりではありません。
マネジメントのしっかりしている医療機関はこの組織に最初から外部コンサルタントとして、近隣の感染症専門医を加えたりしています。

これは定期的に会議をしています。議事録を残し、日々取り組んでいるという証拠を残しておくことが大切ですし、●月●日の時点で「その問題を把握して対策を話し合っていたか」の証拠のひとつとして重要。

その下に「感染症対策チーム」ICT(Infection Control Team)がいます。
病院の感染対策の実際を担っているのはここになります。

実は、病院の本気度はここでわかります。

ここにどんなメンバーがいて、何人いて、その人たちに与えられている時間・権限、アウトプットとして出ている情報の精度をみるとわかります。

今年の診療報酬改定で、一定の条件を満たしたうえで、6か月以上の研修を受けた専従の医師・看護師等をおくと、入院時に100点加算できるようになりました。
これだけで専従の人をひとり配置できる規模の医療機関では積極的にスタッフを配備するようになったところもあります。

そもそも寄せ集め的なスタッフで構成されていたらその病院はアウトブレイク防止対応、アウトブレイク発生後の対応ができません。

たとえば、感染管理のナースをふだんは外来や病棟で働かせ、1日1-2時間を感染管理業務をやんなさい、とさせているような病院はひとたび問題が起きて外部から批判を受けた時に「適切に対応をしていました」というような説明ができるわけがありません。

毎日のモニタリングを行い、検査室からのデータをいち早く察知し、院内感染上のボヤを消して回ることもこのチームの役割です。

海外ではここにHospital Epidemiologistがいて、Evidenceをしっかりつかんでいます。
職種は医師だったり看護師だったりいろいろです。

日本にはEpidemiologistという概念がなく、6か月以上の専門的な訓練を受けているのは主に看護師(「感染管理」の認定看護師のいる病院も増えています)。

(4月のオリエンテーションで研修医に手洗いや感染曝露事故対応について指導をしてくれたのはこのICNだったのでは?)

実際に各病棟での手洗いをはじめとする感染対策を浸透させるために、感染対策委員がおかれています(おいていないと、不備があった、不足があったと絶対に言われますよ)。

病院によっては「リンクナース」という呼び名があり、たくさんいる看護師の感染予防手技や物品使用の標準化のための役割を担っています。

同じレベルの感染予防策を実施できないと、施設としての対策につながらないからですね。

どんな対策をしても感染症や院内感染の問題はゼロにはなりませんが、予防策をはっていたか、迅速対応の仕組みがあったか、それは機能していたのか、責任者はいつ知っていたのか、ということが問われます。

写真:旭中央病院 研修医オリエンテーション
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