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任意接種で30%前後

2009-12-20 | 毎日いんふぇくしょん(編集部)
2008年8月にひろがりはじめたムンプスのアウトブレイクは、ニューヨーク、ニュージャージー、コネチカット、ケベックで拡大中。ニューヨーク市だけで600例の確定・うたがい症例をかぞえています。

今回は2009年6月に英国で開かれたユダヤ教のサマーキャンプからもどった11歳の少年が発症したのが発端です。当時英国には4000例のムンプスのアウトブレイクが報告されていました。
この少年から24名が感染し、さらに地域で広がり、症例の年齢中間値は14歳。
CDCによると、Jewish Orthodoxコミュニティでのワクチン接種率は83%。

感受性者の多いコミュニティに一度広がると規模が大きくなることがよくわかります。

米国では1989年からムンプスを含むMMRワクチンを12-15ヶ月と、就学前(4-6歳)で接種することになっています。 当時年間5700例ほどあった症例報告は5年後の2003年には年間231人と激減。しかし、2006年に再びアウトブレイクがおきました。
http://www.myfoxny.com/dpp/health/091218-brooklyn-mumps-outbreak-continues

現在わかっていることは、2回のMMR定期予防接種をしてる集団でも、集団発生が起こりうることです。潜伏期は通常14-18日で、感染しても2-3割の人は症状の出ない不顕性感染となります。
麻疹や風疹のように曝露後投与としてのワクチン接種の効果は期待できません。

現在、日本では流行性耳下腺炎のワクチンは任意接種で、接種率は30%前後と推定されています。
「流行性耳下腺炎は一般的に予後良好であるが、 無菌性髄膜炎合併率の高さ、 高度難聴合併例を考えると、 ワクチンによる予防が早急に必要な疾患である。」と国立感染症研究所/厚生労働省が発行するIASRのレポートに記載があります。
http://idsc.nih.go.jp/iasr/24/279/tpc279-j.html

「ちゃんと書いてあるわよね!」
・・・気づいていながら手をうたなかったといわれます。

最近まとめられたサマリー
母子保健情報2009年5月号 「ムンプス」 
http://www.aiiku.or.jp/aiiku/jigyo/contents/kaisetsu/ks0912/ks0912_3.pdf
ラジオニッケイ病薬アワー 2008年
難聴のリスクは1000人に1人という数字もわかってきているそうです。
http://medical.radionikkei.jp/Jshp/final/pdf/080114.pdf

検索をすると、あちこちの保育園・地域でブレイクしていることがわかります。
国内の発生トレンドは、小児科定点から報告されている数字で見ています。

(Kナース撮影 新宿南口サザンテラス)
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1 コメント

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質問があります ()
2009-12-21 10:51:46
「2回のMMR定期予防接種をしてる集団でも、集団発生が起こりうることです」
とのことですが、この意味は、予防接種を受けていても感染するという意味でしょうか?
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