感染症診療の原則

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どんどんずれていく新型インフル議論

2009-08-20 | 毎日いんふぇくしょん(編集部)
厚生労働省が重症化した症例の情報を医療機関に配布するそうです。

何冊くれるのか知りませんが、この配布というのはとても怪しく、たいてい院内のどこかでとまってしまいます。現場で対応しているスタッフも複数いるのですから、CDCのMMWRのように、editorialの解説をつけてWebで公開をしないと末端の人は読めませんね。印刷物よりお金もかからなくていいとおもうんですが。

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新型インフルエンザに感染して12~18日の間に入院した患者数は全国で計86人。うち重症化のリスクが高いぜんそくなど基礎疾患を持つ患者は19日までに死亡した3人を含め36人いた。同省は患者が重症化したケースをまとめた症例集を全国の医療機関に配布する予定だ。
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20090820AT1G1902L19082009.html
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メディアもあまり学んでいないのか、もっと早く検査していれば的な記事がいくつかありました。
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20090820k0000m040136000c.html

これまでの海外・国内の疫学調査から、簡易検査の結果はあまりあてにならないという結論になっており、医師は臨床症状や周囲の状況含めたヒストリーでいつものように診断治療をしていくということになっています。
(WHOもCDCも今後この検査を重視しない方向になっています)

治療をするかどうかは個別の検討なので、まるでうたがい症例全例にタミフルがいくべき的なことまで言ったり書いたりするのも問題です。

感染症の勉強をしていない人たちは「検査をしてその治療薬を投与すれば助かる・よくなるはずだ」という誤解を前提に話をしているんだなーということがよくわかる記事が増えています。
医師や医療を悪くいいたいような悪意を感じるような記事もちらほらみかけます。

行政はますます混乱しているようで、今後も学級閉鎖や学校閉鎖を軸に対応するようです。
地域でまんえんするフェーズに入ったらさらにその有効性はあやしくなるのですが、一番の問題は効果がないというよりも、常に誰か感染している状態が続いていくので、学校はいつまでも再開できないような状況がおこりうることです。
(今回の騒ぎを契機に、e-learningの強化などをして、通信コース/併用で卒業ができる選択肢が増えたらいいなと別のことも考えていたりします)。

体調が悪い人が自宅療養が先なのですが、体調の悪い人が休めていない現実があるなら先にそこに介入すべきでしょうね。無理していかなくていはいけない「空気」が自分たちのコミュニティにないのか?と。
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