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新型フルワク意見交換会  学会のご意見 その1

2009-08-27 | 毎日いんふぇくしょん(編集部)
今日は17時~19時に意見交換会の2回目が開かれ、傍聴してきました。

会場は九段会館(厚生労働省の会議室より涼しくて快適♪)。
傍聴は20名というアナウンスでしたが、実際には100席くらい用意されていました。

出席者は、局長2名(健康局長・医薬食品局長:19時までいました)、新型インフル対策推進室長、結核感染症課情報管理室長、新型インフル対策推進本部事務局長、大臣官房審議官(健康担当、医薬担当)、技術総括審議官、審査管理課長、血液対策課長、厚生科学課長。

政府の諮問委員、自治医の尾身先生、感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター長の田代先生。そして15の学会代表者(下記)、全国薬害被害者団体連絡協議会の代表、それから、現在東京都健康長寿医療センターの稲松先生(以前、ワクチンの健康被害の審査をしていた立場?)。

まず、各参加者に「ひとり3分」発言機会が与えられました。

順番に話がはじまり(途中、睡魔に襲われている人複数・・・・・)、全員が話し終わった時点で時計をみたら、97分経過。残りがいい足りないことの補足と質疑でした。

前回の会議では費用負担のことがよくわからないという問題があったようで、配付資料に一覧表がついていました。これは数日のうちに「WAMネット」にPDFで掲載されると思いますので欲しい人はチェックをするとよいとおもいます。

「費用負担がよくわからない」、というのはそもそもワクチンに皆が詳しいわけではなく、特に現場のドクターは臨床的な意味や問題は詳しいかもしれませんが、日本のお役所の制度がどうなっているかまで詳しくないわけですね。
(実際、この一覧表をみて初めて気づいたこともあります)

今回の議論の情報をフォローするためのポイントとしては、まず「予防接種法」に定められている定期接種・臨時接種と、任意接種の違いを理解する必要があります。費用負担、健康被害が生じたときの補償システムが異なりますので。

以下は、15の学会とその主張のサマリーです(なぜこれらの学会なのかは説明がありませんでしたが)。

配布資料の準備レベル、資料とともにどれくらいの対象患者がいるかという疫学的なデータを出せる学会とそうでない学会の違い、個人的な意見なのか、学会の中に専門委員会を持ちそこでまとめた意見なのかわからないこともあったり。
いずれにしても興味深かったです。

どの学会も患者をケアする医療者・介護者は優先、また、有効性や安全性のデータ重視という一般論は共通していました。以下は、それぞれの学会が自分たちのケアする患者さんに関連して整理したコメントです。

【日本臨床腫瘍学会】
ワクチン接種対象を4つに分類:「優先接種患者」「望ましい患者・家族」「優先接種を必要としない患者」「ワクチン接種を必要としない患者」の4つ。
優先接種にすべき患者は
1)造血幹細胞移植予定者あるいは移植後半年以降の患者 
2)治療終了後5年未満の白血病、悪性リンパ腫などの造血器腫瘍患者
3)免疫抑制を伴う抗がん治療薬を受けているもしくは受ける予定の患者

・・とのことです。対象がどれくらいいるかの数は説明されませんでした。

【日本神経学会】
免疫異常性の神経疾患(多発性硬化症、重症筋無力症、多発筋炎など)の優先順位は高い。一律この疾患というよりは、状態を検討する方がよい。

【日本老年医学会】
高齢者のケアをする医療者・介護者を優先。以下のグループは優先順位が高い:
1)以下の基礎疾患があり社会活動を維持している65歳以上の高齢者
(喘息を含む慢性呼吸器疾患、慢性心・血管疾患<高血圧を含まない>、腎疾患、肝疾患、血液疾患、糖尿病、免疫低下宿主(免疫抑制剤投与を含む)
2)85歳以上のすべての人々
3)65歳以上のすべての人々

【日本感染症学会】
新型ワクチンのデータが不十分。季節性フルワクチンも予防ではなく重症化軽減が目的であることを重視。
喘息・COPDなどの慢性呼吸器疾患、人工透析を要する慢性腎不全等の腎疾患、心欠陥障害、糖尿病などの代謝疾患、免疫不全症あるいはステロイドや化学療法などによる免疫不全状態などを有する場合、積極的な接種が推奨される。その他として救急搬送、社会機能維持に関わる人。

【日本肝臓学会】
日本には肝臓疾患とインフルエンザについての関連性の論文は無し。米国とイタリアのデータを参照していえることとして、「肝硬変患者では新型インフルワクチン接種が望ましい」、「進行した肝硬変では抗体産生は75-85%と健常者と比較すると低いが反応した場合は抗体価は十分高く副作用はなかった」→進行した肝硬変患者に接種しても問題ない。

【日本透析医学会】
すでに透析患者で死亡例が報告されている。日本で透析が必要な人は約28万人。
高齢化が進んでおり、透析導入の平均年齢は65歳、70代、80代で導入される例もありリスクが高い。週に3回の外出通院が必要。
透析クリニックは通常1メートル間隔である。
この透析医療従事者は8500人。この人たちの接種は重要。透析施設の稼働率が下がるということは他の患者にも大きく影響する。
スタッフの接種は患者のためであり個人費用負担軽減措置が必要。接種率を高めるためには任意ではなく定期接種が集団防衛上望ましい。

【日本小児感染症学会】
当学会・日本小児科学会予防接種・感染対策委員会の理事・委員等90名を対象に緊急アンケートを実施。ハイリスク児把握のための緊急調査を実施。その結果、、、
最優先の接種対象者は、
1)基礎疾患を有する小児患者。合計すると70-80万人。大目に見て100万人。
2)1歳から6歳までの就学前の接種希望のこども 約700万人(350万人分)
※脳症など重症化への懸念
3)0歳児の保護者 約200万人
※小中高生への接種はワクチン供給が限られる現状では推薦順位は高くなかった。
以上、合計して約650万人が対象。
任意ではなく定期接種2類(高齢者の季節性インフルと同じ扱い)、または臨時接種ワクで。自治体の経済格差がでないようにしてほしい。
海外ワクチンは安全性・有効性の確認を行った上で使用していただきたい。

【日本医師会】※配付資料無し
医療従事者、妊婦、小児。健康な成人はどうするのか?高齢者より優先されるのか? 経済格差が生じないようにする必要がある。

【日本産科婦人科学会】
「妊婦(110万人)ならびに産後6ヶ月以内の婦人(55万人)」が優先的な接種対象。
海外の調査でも死亡例重症例に妊婦が一定の割合でいる。米国では妊婦は人口の1%だが、専門誌で報告された妊婦死亡症例は全体の13%。
タミフル処方が遅れるとリスク。すぐに処方して欲しい。
8月25日に発表した一般の人向けのQ&A集では、他の妊婦への曝露を避けるため、感染発症が疑われる妊婦は一般医療機関を受診することを推奨。
米国における通常のインフルワクチンは、妊娠のどの期であっても接種してかまわないことになっている。

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