感染症診療の原則

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Exit Strategy  

2015-04-19 | 毎日いんふぇくしょん(編集部)
感染症のアウトブレイクがおきたとき(おきそうなとき)、ICTのメンバーはその案件(自施設)に最適なプランを考えます。

「これこれこのようにやりたいのだが」と幹部や事務長に言うわけですが、「まかせるよ」「よきにはからえ」と言われる場合と、「えー」「そこまでやるの?」「本当に必要?」「他の病院どうしているの?」なる疑義が寄せられることもあります。

この時点で専門家の頭にあるのは、初期対応、中間でやること、アウトブレイク対応の終わらせ方の、アウトブレイクのアクションリストです。(後で○○に連絡して○○確認して・・・)


西アフリカのエボラでも、燃え盛っていた8ー10月頃の、現場での事故予防や現場スタッフのリクルートをしながらも、治療センターを建てるタイムラグその他、後半戦の戦い方を考えるロジやオペレーション担当者がいました。
疫学者や現地の責任者と共同して現況評価をしつつ、そのような第二ステージのプランを考え、関心の低下とともに資金がや人が途絶えてしまわないように動いたりと、様々な努力が行われています。

世界銀行 4月17日 Ebola: World Bank Group Provides New Financing to Help Guinea, Liberia and Sierra Leone Recover from Ebola Emergency



最終的に「流行がおわりましたよ」という潜伏期間×2の間に症例がないことの確認をするか、それが難しい場合でも一定の対策のもとで、線をひくことは行われます。

エボラのExit Plan, Exit Strategyはすでに始まっており、例えば、新規感染が押さえ込めた地域では、「安全に治療センターを壊す」という計画も進んでいます。

壊してしまうの?他のことに使えないの?と思わないでもないですが、現地の人には「発熱したらあそこに運ばれてしまう。怖い」という記憶の残る建物であったり、臨時に作ったので、元々の地元の医療に最適とはかぎらないとか、労働衛生や感染対策としては最適ではない、あるいは治療センターを建てる際に地主には短期の契約をしていたりといった事情もあります。

シエラレオネでも8カ月ぶりに子どもたちが学校に行けるようになりました。
リカバリー期の支援が必要ですが、それだけでなく、米国CDCがAfrican Unionと共同でCDCを設立することになった、という「一歩先」の計画も正式にアナウンスがありました。



日本は症例定義が途中で代わり、患者接触歴がなくても、発熱等の症状で第一種感染症指定医療機関等に隔離されることになりました。
発熱しそうな(インフルエンザのような)感染症の流行の時期はすぎました。
今後どのように対策が変わって行くのでしょうか。

各地で受け入れをする予定の病院で、「もうおわったっぽい」という空気はありませんか?。
緊張のあとのゆるみには事故リスクがつきものです。

今日、もし対応の打診があったら誰が初期対応?
京都の学会に出かけて医師が不在(少ない)施設はどのような準備をしていたでしょうか。

連絡が入るのが西アフリカ帰りではなく中東帰りの呼吸器症状だったら?


昨年の騒動の中で、それぞれの施設の特性にあわせたEmergency Preparednessは進んだでしょうか。

幸い、1例も日本では発生していませんが。リアルな対応を経験なかった国や施設の第2ステージをどうするか,という検証や確認の課題は続いています。

Public Complacency under Repeated Emergency Threats: Some Empirical Evidence
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