感染症診療の原則

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新しいN-peniaのガイドライン

2011-01-25 | 青木語録
1997年そして2002年以来、久しぶりの好中球減少症(N-penia)のガイドラインが出ました。長い間、この業界に居た人間としては昔からある話題、全く新しい話など色々です。

自分がPGY1の頃、発熱性好中球減少症にはPIPC+GM/TOBが標準的でした。βラクタム剤のmonotherapyの出現など思いもよりませんでした。これは緑膿菌に有効な初めてのセファロスポリン:Ceftazidimeが出現した80年代後半からの話題です。

その他目に付いたものには・・・。好中球減少症に発熱前から抗菌薬、Aspergillus予防にアゾール系抗真菌薬、真菌感染症に対する「血清学」的検査のStatus向上、Low risk群に対する外来での経口抗菌薬使用などなど・・

Stephen C Shimpff先生に自分が80年代の後半、University of Marylandで教えて頂いていた頃は、発熱性好中球減少症の予防には腸管から吸収されない抗菌薬などが用いられていましたが効果はイマイチ・・というか無しでした。有ったのは耐性菌の出現のみ。

発熱性好中球減少症における予防投与の世界に多少インパクトを感じさせるようになったのがバクタなど腸管から吸収され全身に行き渡る薬剤が用いられるようになってからでした。その後、骨髄にきついサルファ剤に代わってフルオロキノロン(FQ)が登場します。

感染症の専門家は、CD4が200以下のHIV感染者におけるPCPの予防投与でも、BMTのフルコナゾールによるカンジダ感染症予防投与でも、どちらかというと予防投与にアンチの姿勢が強かったのですが、前者は呼吸器科の先生がた、後者は血液・腫瘍学の先生がたの努力・熱意により素晴らしい成果を挙げて来ました。

今回のガイドラインではHigh Riskと呼ばれるGroupには、発熱前に好中球減少症に対してFQ(具体的にはLevofloxacinやCiprofloxacin)が推奨されているようです。どういった効果を生むか自分には不明ですが、一過性の発熱、菌血症の予防などには効果が認められるでしょう。最終的な生存率に良い効果があれば文句なしですが、どこかで誰かが耐性菌出現に備えて見張っている必要はありますね。

先日のT京大学病院のAcineto事件も結局、このような高度医療の副次的な風景でした。


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