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感染症アウトブレイクと警察

2011-05-06 | 毎日いんふぇくしょん(編集部)
昨年の多剤耐性菌の事例のときも、警察が介入していましたが、今回の病原性大腸菌のアウトブレイク事例でも警察が介入するようです。

新聞記事にあるのは「業務上過失致死」という見方ですが、実際に警察が卸の倉庫や調理場を見ても、何が問題なのか、基準は何で、どうすべきなのかはわかりません。専門家と一緒に調査するのかもしれませんが。 

2つの県で合同捜査本部ができ、強制捜査に乗り出すというニュースです。
調査に協力しているなかで(せざるをえない)強制、って深い意図があるのでしょうか。

「過失」は、知っていなくてはいけないのにいその努力を怠っていた、やるべきことをやっていなかった、で問題になります。法律や厚生労働省の通知(指示)、業界のガイドラインなどが基準になります。

知らなかった(情報収集不足・勉強不足)
知らせなかった(スタッフに教えてない)
知っていたのに現場がやらなかった(管理不足) 手洗いや器具の扱いなど
知っていたのに現場にやらせなかった(意図的) 

そもそも肉はどのようにして販売ルートにあったのか。
結果として、「健康問題がおきるかもしれないというリスクを知っていたのに売った/メニューで提供した」のかどうか、スタッフにはどのような説明があったのかという話が今後出てくるのかもしれません。

たまたま今回このチェーン店でおきましたが、構造の問題がわかってくれば、他の地域やお店でも潜在的なリスクがあったのではないか。今からできることは何かという改善につながることを期待しましょう。


知識や情報をどう生かしていくか、複数の人が関わるときは管理の問題も大きいですね。

話は変わりますが、、、、

感染管理の分野でも、現場で対応不可能な「理想的マニュアル」をつくると、遵守不可能になり、現場の創意工夫が始まってしまうということがよくあります。

よくある原因は、どこかの病院のコピーのようなマニュアルを作る場合です。
自分たちの病院でそれは妥当なのか実行可能なのか(そもそも病院の性質やスタッフ数が違えば変わってくることがあるんですが)

なので、マニュアルをつくるときはドラフトの段階で各領域に一度下ろして、問題指摘をしてもらってから最終版をつくるというのがプロセスとして重要です。

これをしないと、あらたに実際の作業マニュアル=「裏マニュアル」ができる場合もあります。

どうしてその面倒な下準備やプロセスが重要かをよく教育しないと、大きな事故につながるという例は
失敗知識データーベースにたくさんの事例があります。

 「JCOウラン加工工場での臨界事故」
「1999年9月30日茨城県の原子力施設が集中する地域で、高濃度ウラン燃料の加工をしていた工場で臨界事故が発生した。作業員3名が重度の被曝をし、内2名が死亡した。周辺住民なども多数被曝した。事故発生原因は国に提出し認められたマニュアルを勝手に改ざんしたマニュアルを、さらに発災前日に変えた」
この事例では現場に、危険についての説明が不十分だったようです。

あとは「空気」でしょうか。

それ、まずいんじゃない?と誰かが注意喚起をするチャンスやタイミングを封じるような空気があると「本当はまずいと思っていたんだけど・・」という話になります。

健康や安全に関わる仕事に関わる場合、「念のため」と気づいた時点で言語化していくことは大事だなと思う事故が続いています。
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