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感染症診療の原則

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感染症と優先順位設定(Priotiry Setting)

2010-12-20 | 毎日いんふぇくしょん(編集部)
HPVワクチンの公費補助対象が高校1年までであることについて、成人女性から不満や批判が出ているそうです。(「私も無料にしてほしい!」)

ワクチンは無料なのではなく、限られた税金での予算の中での工面・優先順位の話であり、
現在も財源を確保するために自治体はとても苦労をしています。
無料にしてよという気持ちはわかりますが、そもそも国の予防接種プログラムは、その有効性と限界をふまえ、費用対効果を検討のうえに決まるものです。

ワクチン以外でも議論があります。
科学と、倫理と、政治と。医療の現場以外のところで感染症の話題も増えています。

『HIV・エイズ対策優先か、他の援助とのバランスをとるか、それが問題だ』

元ナイジェリア米国大使のプリンストン・N・ライマン氏、外交問題評議会の研究員であるスティーブン・B・ウィテルズ氏らの指摘です。

現在、途上国に抗HIV薬(ARV)アクセスを改善するための努力があるのですが、感染者の増加に援助のお金がおいついていません。
それでもHIV感染症は他の感染症より予算的に優遇されているという批判があります。

先進国の経済がクラッシュして、当初の勢いで予算を出し続けられないという背景もあり、
2005年にG8がたてた目標は妥当だったのかという疑念がもちあがっています。

「ユニバーサルアクセス」(必要な人全員に抗HIV薬を)がスローガンです。

それが現実的ではない、ということ以外に指摘されている問題は、HIV/AIDSにお金や関心を注ぐ分、他が手薄になっているということです。

つまり『エイズ緊急救済計画が、他の保健医療ニーズを犠牲にしてエイズ対策に重点を置きすぎているという批判』です。
オバマ政権は2011年度予算ではグローバル基金での増額をしないと決めています。

アフリカ諸国は医療以外にもインフラ整備、農業開発、貿易の促進、そして環境保護などの問題を抱えており、『経済開発関係者』『対外援助関係者』の既得権もからんで穏やかではない状況があります。

ドナー国だけではなく、レシピエント国内でも、昔の同情や支援モードから、「どうしてHIVだけが手厚くて、貧困・失業・教育、HIV以前の医療問題は手薄なのか」という不満や批判も出ています。

米国の予算動向が、グローバル基金全体の流れに影響する中、米国はどこまで途上国のHIV治療薬のお金を出し続けるつもりなのか、続けられるのか。

国内では予算カットの影響で、無料のHIV治療薬を待っている間にHIV陽性患者が死亡するような事例も出ており(ADAP)、海外だけでない政治の問題となっています。

詳細はフォーリン・アフェアーズ・リポート2010年9月号
http://www.asahi.com/international/fa/TKY201009090228.html?ref=reca

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