感染症診療の原則

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まさにCryptoな・・

2011-01-09 | 青木語録
先日の印象的な症例検討会から・・

60歳男性、2ヶ月続く発熱・全身倦怠・食欲不振で受診。「肺に穴が開いている・・」と某医療機関で指摘された。喀痰抗酸菌検査および細胞診検査を繰り返したが陰性。

「2週後に外来受診するように勧められた!!」

「このままでは死ぬ」と思い当院を受診・・。体温 39℃,血圧 143/98mmHg, 脈拍 88/min, 呼吸数 18/min, SpO2 97%(室内気)

まあ、これからも話は続くのですが、大事なコメントを2ケ。


#1:「2週後に外来受診するように・・」(今も39℃!!)
コレ、時々見られる風景です。何となく手詰まり感から「様子を見ましょう」「2週間後に外来再受診」・・。

編集長のコメント:様子を見るにしてもあるていど鑑別診断を挙げて、これとあれなら時間とともに改善するだろう、安全に臨床像を明らかにできるだろう・・という整理が必要。「何だか分からないから」という理由で様子を見るのは問題の先送りです。肺に穴が開いており、2ヶ月も熱が続いているのですから様子を見てはまずい鑑別診断があるはずです。


#2:39℃で脈拍88/分は「比較的徐脈」

編集長のコメント:いつもですと「ブルセラずれ落ち脈拍下がる」で細胞内寄生の微生物を挙げるのですが、このほかにβ遮断剤、薬物アレルギー、悪性リンパ腫なども忘れられません。更に、何らかの頭蓋内圧を亢進させる病態。

正解はCryptococcusの肺炎、髄膜炎でした。脳圧は噴水が上がるように高かった・・。因みに呼吸器症状も髄膜刺激症状もありませんでした。
本当にCryptococcusはCryptic・・

(写真は編集長が経験した○○ペネムとバンコマイシンとミカファンギンが効かないCryptococcusの蜂窩織炎)
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