感染症診療の原則

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マスクのリスク・有効性・優先順位

2009-05-21 | 毎日いんふぇくしょん(編集部)
今日は築地界隈を歩いていたら、報道が大勢いたので、「新型インフル患者騒ぎかしら?」と思ったら聖路加国際病院の小児科を訪問される美智子皇后とそのご一行でした。

窓を開け気さくに手を振り、車からおりたった美智子さまは、マスクはしていませんし、お迎えの日野原先生・福井先生・細谷先生、SPの皆さん、周囲のボランティアやメディアもマスクはしていませんでした。

生徒がA/H1N1陽性とわかった学校の校長先生&インタビューするメディアがことごとくマスクをつけているのはナンデダローとあらためておもいました。


本題ですが。他の国は一般の人にマスク推奨をしていません。

オーストラリア「リスクをさげる5つの方法」ポスターにもマスクはありません。
http://www.pandemic.tas.gov.au/__data/assets/pdf_file/0015/62340/Protect_yourself_from_the_flu_Poster_1.pdf

政府や自治体、テレビのアナウンサーは「なんとなく」手洗い・うがい・マスクを三種の神器のようにならべますが、ちょっと無責任ではないかと感じます。


「冷静に」「正確な情報に基づいて行動してください」の逆をいっています。
冷静な行動につながっていませんし、マスクについての正確な情報がセットになっていませんので。
つまり、言っていることとやっていることがちがうわけですね。
マスクにもいろいろあり、外国の説明文書には「ここでいいうマスクはサージカルマスクのこと」と断りをいれています。(N95などはレスピレーターとして別扱いです)

マスクとその他の予防方法について、日本は国立感染症研究所にWHOの翻訳が掲載されています。これを元に検討すればいいのではないかとおもいます。
http://idsc.nih.go.jp/disease/swine_influenza/2009who/09who36.html

外国では優先順位を考えましょう、とアナウンスをされています。
(市民を愚かにしてはいけません)

一番大事なのは「病気の人のが自宅安静(隔離)」「病気の人とは距離を置く」「咳やクシャミをするときは口と鼻を覆う」「顔や鼻・口等を触ったら必ず手を洗う」。

もしもマスクが感染予防に必要で、不可欠なものならばアウトブレイクしている間・シーズンの間ずっとつけておくことになります。そんなことは不可能ですし在庫もありません。
今回は弱毒で感染力もかわらないとわかったのですから、「次のパンデミック騒ぎに備える」というモッタイナイの精神も大切です。

〔マスクが有効とされる最優先カテゴリー〕
■咳症状のある患者さんにはマスク。これが最優先です。
このスライドの18と19などが参考になります↓
http://www.kaisernetwork.org/health_cast/uploaded_files/S06_5_MEHTAR_SHAHEEN.pdf

■体調のわるい人と濃密接触をする医療者。マスクをつける感染予防になることが知られています。

■自宅で看病をする人

※有効なのは「サージカルマスク」です。
※この人たちのマスクが足りなくなるようでは困りますね。

〔意味があるかもといわれているカテゴリー〕
■不特定多数の人と近距離で接するような人
(コンビニ店員、交通機関、病院窓口など)

“職場でつけましょう”という一般化はできません。
そんなことをすると市販のマスクの在庫がなくなり、妊婦さんや慢性の病気をもったど弱い立場の人たちが困ることになります。

〔有効性は確認されていないカテゴリー〕
■上記にあてはまらないハイリスクでもない一般の人

報道で見る屈強な、他人を押しのけてマスクわしづかみの主婦とか、お元気そうでマスク不要そう。どうぞ妊婦さんにゆずってあげてくださいね♪

妊婦にマスク配布(大阪)
http://mainichi.jp/area/osaka/news/20090520ddlk27040335000c.html

「マスクのリスク」という記載もけっこうあり、『取替え時がわからない』、『時々はずしてそこらに放置する』、『顔の他の部分(あごや首)と接触する』、『マスクをしているから、と手洗いをサボる』『捨てた後に手を洗わない』などが指摘されています。
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